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あなたの×××を吸いたい!  作者: ブーカン
第五章 欲は重なりいつか消える
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第四十話 身内に暴かれる黒歴史のダメージは他人のソレの十倍はある

 さて、今回は本筋の流れにはほとんど関係ありませんが、せっかく姉ちゃんの心の声も聴こえるこの状態、過去にも戻ってるということで、姉ちゃんの恥ずかしデートの裏側を見てみましょう。

 章立てでいうと前章のデートですね!

 けっして姉ちゃんの弱みを握っとこうとかそんなつもりはないです。これは役得やくとくです、役得。


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「う~……う~……」


 姉ちゃんは自分の部屋、鏡の前でかれこれ一時間以上うなっています。

 その横には上下の服が二セット、並べられています。


――いつもどおりの服? ……いや、父さんが勝手に買ってきたっきりで全然着てなかった、アタシの趣味じゃないこの服? ……そりゃあ、可愛いカンジだけど……。いや、でも強に変に思われるかも……。


 どうやら、強兄さんとのデートで着ていく服で悩んでいるようですね。我が姉ながら乙女チックな性分しょうぶんですね。


「う~……」


ドン、ドン


「詩織ちゃん! どうした? なんだか小声だけど父さんにはちゃんと聴こえたぞ! 悩んでいるのか?! 父さんに話してみろ!」


 ウチの残念な父が部屋の前にいるようです。

 この音量のうなり声が聴こえるとか、姉ちゃんの部屋に盗聴器でも仕掛けてるのでしょうか、この父は。


「うっさい! 父さん、あっち行ってて!」

「な、なんだと?! 詩織ちゃん! それは父さんが……父さんのことが嫌いになったということか?!」

「父さんのことは好きだから! あっち行っててよ!」

「うん、わかった!」


 チョロいな、ウチの父。


――父さんなんかには、好きって言えるんだけど……ね。


 ひゃー!

 聞いてるこっちが照れてしまいます。姉ちゃんには心の声を聴いてる弟の身にもなってほしいものですね。


「よし、決めたっ!」


 そう言って立ち上がると、姉ちゃんは織り込みレースのブラウスとレッドスカートのセットをかかげました。

 姉ちゃんにしては思い切ったチョイス。こんな服着た姉ちゃん、見たことない。


「いってきまーす。母さん、お昼はいらないからー!」

「はーい。気を付けていってらっしゃーい」


------------------------------------------------


 十分じゅっぷんほど強兄さんのアパートの前を行ったり来たりしたあと、姉ちゃんは意を決して階段を上がっていきました。


「よ、強」

「あ、うん。なんか詩織、いつもと違うね」


 姉ちゃんは片手をあげ、出迎えてくれた強兄さんに挨拶あいさつをします。


――落ち着け、アタシ。何もない。今日は何もない。いつものアタシ、二人でご飯、食べるだけ……。ご飯食べるだけ……。


「ああ……うん。どう?」

「どうって……服装?可愛いよ」


――ひゃああああァッ! カワイイって! カワイイってさ! ひゃああッ!


 落ち着け、姉ちゃん。


「……そっか。じゃ、じゃあ、いこっか……って、ソフィーちゃん!」


 姉ちゃんは強兄さんの向こうで、自分を見る三人を見つけます。強兄さんのお母さんの愛さん、すいさん、ソフィーさんの三人です。三人の表情は三様さんよう

 愛さんはニマニマ、すいさんはフグみたいにほっぺをふくらませています。ソフィーさんは今にも姉ちゃんに飛びかかりそうな、ニラみ顔。


「なんでいるの?!」

「あらら~。詩織ちゃん、可愛い格好してるわね~」

「しおりん! ノー可愛い! ノーライフ!」

「この女狐めぎつねがっ」


――ソフィーちゃんまでいたらぜったい邪魔されちゃう! せっかくのデートなのに!


 あらら。さっき自分でご飯食べるだけ、とか言い聞かせておいて、やっぱりデートという認識でしたね。


 姉ちゃんはビッと人差し指を立てて、三人(特にすいさんとソフィーさん)に向けて言い放ちます。


「いい? 今日はホントについてくるのナシだからね!」

「なんかあったらどうすんのさ~」

「……はい、コレ」


 姉ちゃんはすいさんに自分のスマホを投げ渡しました。


「なんかあったら強の携帯から連絡するから! あ、アタシのスマホ、いじくりまわすのもナシね!」

「うぅ……」

「こんのヒョウロクダマが……」


――なんとでも言いなさい! 私はちゃんとテスト勝負で勝ったんだから、これはちゃんとした権利!


 姉ちゃん、ちょっとあくどいな。心の中では。


「うふふ。詩織ちゃん、安心してデートしてきなさいな。ふたりはおばさんに任せといて」

「で、でで、デートなんかじゃないですよ!」


 ブンブンと手をふって否定する姉ちゃんですが、ぼくは知っています。この人はさっき、自分でデートだと思っていました。確信犯です。


「ほら、つよぽんも。行ってらっしゃい」

「うん。それじゃあ、行こうか」

「……うん!」


------------------------------------------------


「食事ってもココだとは、ね」

「懐かしいでしょ」


 姉ちゃんたちは「みむら食堂」の前に立っています。

 一家で常連ですから、ぼくもよくここに来ます。好きなのはニラレバ炒め定食です。


――よ~し。強、三穂田みほたさんの試験の件でちょっと悩んでるみたいだし、懐かしの場所でなごんでもらって気分転換してもらおう。


 我が姉ながらいじらしいですね。何だこの天使。

 この人、ぼくのことよく殴るんですよ、家では。


「あら、可愛い(めんこい)子が来たとおもったら詩織ちゃんじゃないの」

「えへへ……どうも~」


――おばちゃん、もっとめて、褒めて!


 あくどいな、姉ちゃん。


「この子は? カレシ?」

「違いますっ! 強ですよ、強。ホラ、昔よく来てたでしょ。アタシたちと一緒に」


――カレシに……彼……カレシ……。


 思考停止してるな、姉ちゃん。


「じゃあ、今日はデートなわけだ。いひひ」


――はい、デートです! うぉぉッ! デートでぇすッ!


 もう清々(すがすが)しいよ、姉ちゃん。


 注文を終えると、話の途切れを見計らって姉ちゃんが強兄さんに話しかけます。


「強、煮詰まってんでしょ」

「ん?」

「三穂田さんの試験」

「あ、うん……ああ」


――なんか、アタシも力になれればいいんだけどね……。


「ありがとね。心配してくれてたんでしょ」


 強兄さんがニッコリと、姉ちゃんに微笑ほほえみかけます。


――ひゃぁぁッ! 強、笑ってるよー! 笑ってくれてますよー!


 落ち着け、姉ちゃん。


「……また、いつかみたいに余計なお節介せっかいだ、アタシは要らないって思ってなきゃいいけど……」


 姉ちゃんは照れ隠しでちょっとイジワルなことを言います。


「ちょっとソレを言われると……僕は、弱っちゃうな」


 姉ちゃんはこれにもイジワルそうに、ニヤリと笑います。


「ほう……強の弱みというわけね。じゃあ、今度から事あるごとに持ち出してやる」


――ごめん、強、マジゴメン! でも、あらがえない! アタシ、なんだか抗えない力に動かされてる気がする!


 姉ちゃん……。それは、恋の駆け引きなどと呼ばれるものかと、ぼくは思います。大したことなさそうですけど。


「やめろよ。からかわないでよ」

「……だってさ、強、ドンドン強くなるんだもの」

「僕が……? そういや、前にもそんなこと言ってたよね。でも『鳴らし山』に入れないくらいだし、みぽりんの試験もふるわないし、強くなってるって言えるのかな~」

「……ううん」


 姉ちゃんは首を振りました。これは……本心からの否定のようです。


「強くなってるって、そういう強さじゃなくて、頼りになるっていうか、オドオドしなくなったっていうか……。すいちゃんの、おかげかな……」


 これはちょっとやっかみが入ってますね。いいぞ、あくどくなれ! あくどくあね


「すいの?」

「うん。彼女が強のそばに飛び込んできてから、強はずっと楽しそうで、ずっと強くなってってる……。アタシは……なんだか見てられないくらい」


――アタシ、ホント今日どうしたんだろ。すいちゃんのこともアタシは大好きなんだけど、なんでこんなイジワルなことを……それも、わざわざ強に向かって。


「うーん……」


 強兄さんが困ったようにうなっています。


「詩織が何を心配しているんだかよくわかんないけどさ」

「……鈍感バカつよし……」

「このお店、見てみてよ」

「……ここ?」

「そう。あ、アレ、あのカウンター懐かしい。一度あそこのかどで僕、頭ぶつけたんだよね。泣いた僕を、詩織が頭を撫でてくれた。あの漫画棚も。詩織と取り合いしたっけな。ちっちゃい拳一なんかギャンギャン泣いててさ。ふたりであやしたりもしてたよね」

「……うん……うん」


――強が、覚えてくれている。アタシの思い出は、強の思い出でもあるんだ。


「ね。僕には、詩織と過ごした時間がいっぱいある。今、僕が強くなってるっていうなら、それはいつもそばにいてくれた詩織のおかげが大きいと思うな」

「……うん」

「だから、あんまり気にすんなよ。詩織らしくない」


――強……アタシの幼馴染おさななじみ。自分に自信がなくて、いっつもオドオドしていた、アタシの幼馴染。でもアタシは覚えてる。幼稚園の頃、男の子からからかわれていたアタシをかばってくれたのは、喋ったこともない強だった。その頃からアタシは知ってる。強は本当は、とっても強いってこと。こんなふうにサラリとアタシの心をでていく、かっこいい男の子だってことを。


「私らしく……ない、か」

「そう」


 姉ちゃんは、少し目元がうるんできました。


――いけない。泣いてちゃダメだ。


「よく言うわ!」


 涙をこらえ、ニカリ、と笑う姉ちゃん。


――泣くのなんていつでもできる。今は、強との新しい思い出を笑って過ごそう。


------------------------------------------------


 この後、姉ちゃんとの会話の中で何かひらめいた強兄さんは、無事、三穂田さんの試験を突破することになるのでした。


 次回はまた本編の流れに戻ります。

 いつかきっと、その想いを強兄さんに伝えてね。姉ちゃん。

ご感想、ご罵倒、ご叱責、お待ちしております!

もちろん大好物は褒めコメです!

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