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あなたの×××を吸いたい!  作者: ブーカン
第四章 誰のために僕は強くなれるだろう
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第二十七話 千代行路

「ワタシたちはどこに向かってるでしょ~か?」

千代せんだい……」

「何のためでしょ~か?」

「……みぽりんから聞いた『ダイチ』の情報を確かめに、です」

「ブッブー! デートに決まっておろうが!」


 ヤバい。隣の席に座るすいのテンションが高い。


 僕たちは「ダイチ」調査のため、千代行きの高速バスに乗っている。もちろん、詩織もソフィーも一緒だ。

 なんだか忘れがちになってきてるけど、僕の高校生活は、ワワフポの「ダイチ」の記事を発端ほったんにして、闇の仕事を生業なりわいとするような襲撃者たちに狙われる、という非日常に一変いっぺんしたのだ。

 僕は記事の内容の真偽しんぎ、自分の父が本当にその「ダイチ」なのか確かめるためにこの調査を始めた。ほとんど僕自身のエゴみたいな調査なんだけど、なんだかんだでいまや、そのパーティは四人にまで増えている。


「ちょっとすいさん、席代わってくださいよ。私も強くんの隣に座りたい」


 前の座席からのぞき込むようにしてソフィーが言う。


「やだね。ヨッシーの隣はワタシの指定席なのよん!」


 うん、ナイス。ソフィ―の隣では僕の心身が持つ気がしないので、これはすい、ナイス。


「すい、ちょっと静かに……。他のお客さんもいるから」

「チャック?!」

「うん、そうして……」


 彼女は、口元をチャックで閉める素振りをする。


「それにしてもすいちゃん、今日可愛い格好してるよね~」


 すいは僕が選んだしまくらセットを今日、着ている。というか、服に無頓着むとんちゃくなので、いまだにそれしか普段着を持っていないようなのだ。


「むむんむむむ~」

「え? なに?」

「すい、小さい声ならしゃべってもいいんだから……」

「ジー」


 毎度、閉めてもすぐ開くのね、そのチャック。


「あのねぇ、ヨッシーが選んでくれたんだよ。コレ」

「へえ。強がね~……こんな可愛いのをね~」


 意味ありげな目を座席越しに寄越す詩織。


「ま、ワタシゃ素材がグンバツだからね。ワタシがデルモなら何でもパーリナイよ!」

「黙れちんちくりん。強くん……今日はどのような予定なんですか?」


 えげつないな、ソフィー。


「うん、ダイチが目撃されたっていう『マリア』ってバーを探す。とりあえず、二軒は目星めぼしがあって」

「……ちんちくりん……」

「ひとつは千代駅前で、ひとつは少し離れた、和泉いずみってとこにあるらしいから、そこには電車で向かうかな」

「……ちんちくりんって言われた……」


 「ちんちくりん」のダメージでかそうだな。

 ソフィーに噛みつかないところをみると、すいは自分の体型に思ったよりコンプレックスを持ってるみたい……。


「そう、そうそう! すいちゃん、千代といえば牛タンね。知ってる?」


 詩織が、すいの気を取り直させようとする。


「ちんちく……ぎゅうたん?」

「あ、興味ある~?」

「ぎゅうたん!」


 すいは目を輝かせて前の座席にかじりつく。

 ああ……。まずは語感ごかんが気に入ってるな、この感じ。


「ぎゅうたんって何? 面白いもの?」

「面白いというか、美味しいもの」

「食いもんか!」

「そう。牛の…」


 ペロ、と舌を出す詩織。舌を出すな。


「げぇ、牛のベロ?! おいしいの~? 無難にお肉でよくな~い?」

「うっふっふっ。あとでづらかくわよ……。ね? 強」

「うん、そうだね。どっちにしろ、今日は一日中千代だろうからね。牛タンどこかで食べよっか」

「よっしゃあ! 牛タン初体験!」

何気なにげに僕も初めてだけどね」

「なぬ? じゃあ、ヨッシーと初体験だ!」

「私も食べたことないわ」

「金パツは初体験させん!」


『まことに申し訳ありませんが、車内では他のお客さんの御迷惑になりますので、お静かに願います』


 車内アナウンスにビクリとする僕たち。マジすんません。

 僕たちはお互いに、肩をすくめてバツの悪い顔を見せ合った。


 ……おいこら、すい。あちゃペロしてるだろ、ソレ。舌を出すな。


------------------------------------------------


「と、とと、都会やで~!」


 千代に到着。駅前だ。

 水無もそこそこ栄えているけど、さすがこの地方の中核都市。比じゃない。高い建物ばっかり。


「お昼にはまだ時間あるね~。どうする?」


 今の時刻は十時半の少し前。


「先に一軒目、行ってみよう。このバス降り場からそう遠くないはず」


 僕たちはスマホのナビアプリを頼りに一軒目を目指すことした。


「今日、晴れてよかったね~」

「そうだなぁ、雨とか最悪だしな~」

「ワタシ、雨好きだよ」

「えぇ、なんで?」

「なんかわかんないけどワクワクする……」

「子供みたいね。さすが……」

「ちんちくりんって言う気か! このパツキンが! パツキンのくせして貧乳のくせに!」

「ニェプ、私のは誇りある貧乳よ。ちんちくりんとは違います」

「言った、ちんちくりんを言いやがったよ……。なんだよ? 貧乳の誇りって。ワタシも知りてーよ……教えてくれよ……」


 元気だな、コイツら。僕はちょっと緊張してるってのに。

 あと、往来おうらいでそんな話、やめてくれ。


 そうこうしてるうちに一軒目の雑居ビルにたどり着いた。


「ここの三階だな」

「うーん……」


 詩織がビル入り口にある各階案内をながめてうなっている。入居店舗の一覧に「マリア」、あるいはそれを含むような店舗名は見当たらない。


「はずれかもね……」

「十五年も前の話だから、もとから雲をつかむようではあるんだけどね……」

「とりあえず様子、見てきましょうよ」


 三階まで行って確認したがやはり、該当しそうな店舗はなかった。ダメ元で昼食営業の準備をしていた別のダイニングバーの人にたずねてみたものの、「十五年も前のこのビルの状況は知らない」とのことだった。

 だが代わりに、ビルのオーナー、そして、仲介不動産屋の連絡先を教えてもらえた。


 早速、電話をしてみる。


『あ~……四、五年前までだったかな、「マリア」ってお店はあったよ』

「本当ですか! あの……お店の関係者だった方の連絡先とか、教えてもらえたりしませんか?」

『……なに、キミ。それ聞いてどうするつもり?』


 う。まずい。不信感を持たれてしまう。

 声もまだ子供っぽい自覚あるからな。客観的にみたら、バーのこと訊ねる子どもとか怪しすぎるよね。


「あの……実は、父が行方不明でして、その……そのお店のことだけが手がかりで……」


 この、アドリブ力のなさ。ほとんど事実そのまんま言っちゃった。


『そ、そうかぁ……それは、キミ、うん。わかった。調べとくから、分かったら連絡するから、うん、つらいだろうけどな、頑張れよ。世間は冷たくなんかないからな……負けるなよ。おじさん、こんなことくらいしかしてやれないけど、助けてくれる人はきっといるからな』


 いいひとだな、オイ。


 ひとまずは僕のケータイ番号を教えて、電話を切る。


「どうだったの? ヨッシー」


 電話中、おとなしく見守ってくれてたすいが僕に訊く。


「とりあえず、ハズレかどうかは保留かな……」

「そっか。繋がってる、繋がってるね!」


 詩織がパァンッと背中を叩いてくる。

 詩織の勘ではハズレだと思っているんだろう。顔に出てる。励ましてるつもりらしい。


「返事待ちなんでしょ。次も行っとこうよ!」


 あらためて思うけど、詩織のドンドン行く性格、ホント頼りになるよ。


「え~その前にお腹を満たそうよ~。お腹ぺこりんだよ、こちとらよぉ」

「そうね。せっかくだからショッピングもしたいわ」


 コイツらはこうだもの。まあ、でもいい時間だな。


「はぁ~……じゃ、ご飯にしよっか」

「ぎゅうたん!」

「いぇす! 牛タン!」


 ソフィーも楽しみにしてたんじゃん。


------------------------------------------------


「おぉ~」


 それぞれの目の前に並ぶ、牛タン炭火焼き、麦めし、テールスープ。


「ひゃ~……。ジュルリ」


 すい、よだれ出てんぞ。


「いただきまーす」

「……んん! こりゃあうまい!」

「うっふっふっ……。吠え面かいたな、すいちゃんよぉ……」

「わお、わおーん! 犬が吠えては牛を食う、ベロが上手いと牛を食う……。下剋上じゃぁ!」

「私は、このスープ好きだわ。兄さんに骨、持って帰ってあげよっと」


 骨て。お土産、骨て。

 ソフィーあにの悲惨な家庭環境がはかれるよ……。


「ごちそうさまでした~。余は満足じゃ!」

「……結局、ごはんの間は連絡なかったね」

「そうだな。しばらく食休めしたら二軒目、行こう」

「え~ショッピングは? いきたいです~」


 腕をダルンダルンと振りながら駄々をこねるソフィー。

 すいだけでもアレなのに、ソフィーまで……本気でやめてほしい。


「ゴメン。たぶん今日はムリ。二軒目の場所、電車でもそれなりにかかるらしいから……」

「え~……」

「今度、地元で行こう、な?」

「二人きりならいいですよ。私にも服、選んでくださいよ」

「え~……。みんなでならオーケー!」


 口を突き出して不満をあらわにするソフィー。

 ソフィーの厄介やっかいさにどんどんみがきがかかる……。ホント、怖ろしい子。


 さて、僕たちはお店を出て一路いちろ、和泉行きの地下鉄に乗った。

ご感想、ご罵倒、ご叱責、お待ちしております!

もちろん大好物は褒めコメです!

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