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プロローグ
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シガテラの毒に私は犯された。
指先から凍るように冷めていく。
死に至ることのない中毒症状が、まるで真綿で首を締められるような怖気さを、じわりじわりと伝えてくる。
心臓は動いていた。
なのに私は死んだと錯覚していた。
シガテラ……
よくある毒素であればまだ生き残れただろうに……
私はシガテラと呼ばれる外道の手によって、この世の生を閉ざされたのだ。
(し、ねない…)
閉ざされた生にしがみつく。
忌々しいまでの陽射しを降らす太陽を睨みつけ、私は震える手を天に伸ばす。
(死にたく、ない……)
死に焦がれたはずだった。
死を切望していたはずだった。
なのにどうして?
私は何を思って、未練に思って、この手を空へ伸ばしている?
……死に、たく、ない…………!!
「しが、てら……」
感覚の失われた指先は、拳を握ったはずなのに。
痛覚は意識とともに0へと至る。
まぶたの落ちた世界は闇に閉ざされることもなく、
三原色の鮮やかさが揺れる揺蕩いのまどろみでしかなかった……。