むかしばなし サクラ姫
むかしむかし森の中に
それはそれは利発で可愛らしい女の子がおりました
その子は名をサクラといい
サクラの住む村のはずれにはそれはそれは恐ろしい男が住み皆を怖がらせていました
ある日サクラは親の言いつけを破り村はずれに住む男を訪ねました
男はサクラを睨みつけると一言帰れと言い
サクラはまた明日くると言って家に戻りました
サクラは家に戻ると親にあの男は何をしているの?と聞き
親はサクラが男の元を訪れた事を叱らず、あの人は主人様を守る一族最後の一人、迷惑をかけてはいけないからもう会いに行ってはいけないよと言って聞かせたのです
ですがサクラは次の日もその次の日も男の元を辿れ聞きました
一人で寂しくないのと
男は寂しいなどと言う言葉はとうに忘れたと睨むばかり
サクラはふーんと答えそれから毎日を男の元で過ごし
毎日の様に寂しくないのと声を掛け続けました
そんな事が十年も続いたある日
悪い王様が村におふれを出しました
村一番の美人を差し出せと
村のみんなは大変困りました
皆が困る姿を見たサクラは自分が王様の元へ向かうと言い、王様の家来に連れられお城へ向かいました
それを知らない村はずれの男はサクラが現れない事を不思議に思い村を訪れると村人からサクラが王様の元へ向かった事を聞いて驚き駆け出したのです
それはそれは風のように早く瞬く間にお城へついたのです
そこで男はサクラを連れた王様を指差しこう言いました
お前は誰だ!
私は王様だ無礼者と相手が返事をすると男は王様を睨みつけこう言いました
その女をどうする気だと
王様は妃にするのだと答えこの男を捕らえろと兵隊を呼びます
男は王様にもう一度聞きました
その女を王の妃にするのだなと
男は集まった兵隊を見回すと呆れたように言いました
お前達は王の顔も忘れたのか
首をひねる兵隊達に男は言葉を続けます
我が名はワンワン
主人様の拳にしてお前達の王だ
兵隊達は驚き王様は腰を抜かしました
ずっと昔にいなくなってしまった本当の王様が帰ってきたのです
ワンワンは偽物の王様から王冠を取り上げると自分の頭に乗せ
玉座に座りその男を追い出せと兵隊達に命じ驚くサクラを睨みつけるとこう言いました
お前は王の妃になるそうだ
サクラ驚いてあなたは一体?と聞くとワンワンはこう答えました
我が名はワンワン
お前達の王だ
そしてお前はたった今から王の妃だ
驚いたサクラは笑い出し
それを見たワンワンは何がおかしいとサクラを睨みます
だからサクラは答えました
そんなに寂しかったの?と
ワンワンはつまらなそうに答えます
寂しいなどはお前がいるから忘れたと
それからサクラはワンワンとお城で幸せに暮らします
そんなサクラも年をとってしまいました
お婆さんになったサクラはワンワンに最後のお願いをしました
あなたが寂しくならないようにお城の周りに咲き乱れる花にサクラと名付けて下さい
私はお花になってずっとあなたと一緒にいます
ワンワンはわかったと答え
お城の周りの花をサクラと名付け
ずっとずっとお城でサクラと暮らしましたとさ