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母は娘を案じました

お母様が出てきますね。

やっぱり美人さんです。

下調べが終わり、もう寝ようかと思ったところでコンコンッとノックが聞こえた。

ヒルダは何も言わず、ダニアに視線を送る。彼女は軽く一礼し扉へ向かった。

バカ貴族の手先だった時のためにヒルダも斧を構える。

すると、ダニアが慌てた様子で戻ってきた。


「どうしたの?」


「姫様、フリーデリンデ前王妃殿下がお越しになられております」


「お母様が?お通しして」


茶会の件は使いのものを通して欠席の旨を伝えたが、一度話した方がいいだろう。

侍女に通され、兄と同じ黒髪の美女が姿を現した。


「お久しぶりですねヒルデガルト」


「お久しぶりですお母様。本日は茶会を欠席してしまい、誠に申し訳ありませんでした」


椅子から立ち上がり、深々と頭を下げる。


「構いませんよ。ノアベルトに召喚されたのでしょう?あの子ったら女性のことをもう少し考えてほしいわ」


ふぅと少女のようにため息を吐く。娘のヒルダからしても色気が眩しい。


「ところでお母様。何か用があったのではありませんか?」


「ああ、そうだったわ。ヒルデガルト、貴女はマトリカリアに向かうのでしたね」


その言葉で母が何故ここに来たのかわかった。


「ヒルデガルト、疑いなさい」


誰をとは言わなかった。何処をとも言わなかった。


やはり兄はまだ隠している。


それはヒルダもわかっていた。むしろ敵国へ向かうものに全てを話すなど愚の骨頂だ。

母も承知しているため、はっきりとは言わなかった。

この言い方ならマトリカリアという国のことだと誤魔化すことが出来る。

母はじっとこちらを見る。その姿は前王の妃の気品を感じさせた。

しかしアメジストの瞳は娘を案じる母親のそれ。

だからヒルダは毅然として微笑む。

自分はこのゼラニウム王国の第一王女。魔王陛下の妹で国と民を護る愛国者。

自国と国民のため、立派でなくてはならない。


「承知いたしました、お母様」


ヒルダはこれから向かう場所で誰も信用などしない。




娘の元へ訪問したあと、フリーデリンデは愛しい子供たちのことを考えていた。

どこに出しても恥ずかしくない子たちだ。

兄は一人前の為政者に育ち(ちょっと情けないところはあるが)

妹は聡明な姫君に育った。(少し暴力的なところはあるが)


…とにかく育ったのだ。


フリーデリンデは誤魔化すように紅茶を飲む。

別の記憶を引っ張りだそうと頭を巡らせていると、ふと亡くなった愛する夫が浮かび上がった。


『フリーダ、私は愚王だ』


まだあの人が生きていた頃、彼が言った言葉だ。

無論、夫は愚王ではない。

人間の民も魔族の民も獣人の民もエルフの民も、皆愛し護ってきた。それ故に国民からも好かれていた。

だが、貴族からは別だった。自分に誠実であったがために側妃を娶らず、娘を妃にと望んでいた貴族達からの反発を買った。

魔族は長命であり、単純な力も強いからか傲慢になりやすかった。貴族なら尚更。

そんな輩を、大事な大事な子供たちに押し付ける結果になってしまうことをあの人は読んでいた。


その事に関しての『愚王』。


とはいえ、味方がいない訳ではない。元々反発しているのは前から野心を抱いていた連中ばかりだった。


(そうだとしても道は険しいわ。妃としても、母親としても私は失格ね)


それでも立ち止まるわけにはいかない。自分はあの人の妃であり、国母なのだから。


次回、マトリカリア向かう一日前!です。

やっとここまで来ました。

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