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王家は案外、こちら側でした

いやもう、まだ行きませんね。

本当すみません。

オズはノアの下へ行きヒルダは今、侍女のダニアに紅茶を淹れてもらっていた。


(さて、マトリカリアへ行くのは一ヶ月後…。そ

れまでに対処法を考えておかないと)


手元の資料に目を通す。一枚目は王族の名前が書かれていた。

第二十一代目国王フェリックス=マトリカリアが第一子、並びに次期国王フィリップ=マトリカリア。

今年からヒルダと同じ学園に入学するらしく、この人物が一番手強いと思っていたのだが。


(王家はそれほど否定的じゃないのね)


先代以前は常に中立派だったが、フェリックス国王が即位した時からこちら側に傾いてきたのだ。

しかしマトリカリア現国王の名前、ヒルダはどこか聞き覚えがあるような。


「フェリックス?う〜ん、どこかで会ったことあるのかしら」


余談だが、魔族は大変長命である。その中でも王族はとりわけ寿命が長く、何千年もの間若く美しい姿を保っているのだ。

ヒルダも見た目は十六の少女だが、生まれてから既に百年以上経っている。具体的な年齢は女性なので察してほしい。

ともかく会ったことがあるとすれば、フェリックス国王が子供の頃なのだ。

…おいそこ、ババァとか言わない。


「姫様、ひとまず紅茶を飲まれてからお考えになられたらいかがですか?落ち着いて頭が冴えますよ」


ダニアが柔和に微笑みながらカップを置いた。

褐色の肌が麗しい彼女はダニエラ=ヤグルマギク。

オズと同期で、やはりヒルダに長年仕えてくれているダークエルフだ。

ヒルダは眉を解して、微笑み返した。


「そうね、ありがとうダニア」


ダニアの淹れた紅茶は美味しい。芳醇ないつもの茶葉の香りが


「香りが違う…?」


カップを手に持ち首を傾げる。

フルーティーなのは同じだが、いつもより酸味が強い気がする。上品でこれはかなり高級品では。


「しばらくはあちらで過ごすからと、陛下が仕入れてくださったものですよ」


「お兄様が…」


兄はいつも政務で忙しくヒルダの趣味など知らないと思っていた。


(これはおそらく、王族でも手に入れるのが難しい茶葉)


なんだかんだで妹には甘い兄である。

兄は王に向いていない訳ではない。必要であれば、冷酷に切り捨てることも厭わないよう教育されてきた。

しかし先代が善政だったからか、兄はその面を辺りに見せず即位してしまった。


だから周囲は兄に対して無知だ。


隠しているのではなく、ただ機会がなかっただけ。

そして今回、その機会が来た。

血の繋がった妹を執事一人だけ付けて、敵国に放り込む。臣下や他国はその非道さに恐れおののくだろう。

ヒルダは別に酷いとは思わない。

国王とてたとえ家族であろうとも利用しなければならない時はあるし、これはヒルダなら成し遂げられるという信頼の証だ。

成功すれば兄の評価は上がり、立派な君主として認められる。怖いのは


(私が失敗した時よね)


まず、ヒルダ自身が無事であるはずがない。

兄の評判は地に落ち、戦争になる。

王族であっても厳しい公務。むしろ命に関わるため、王族には向かないともいえる。

だが兄はヒルダにあえて務めを与えた。

これを逃せば腐った貴族たちによって自国が瓦解する。


(でも罪悪感を覚えるあたり、お兄様もまだまだだわ)


最高級の茶葉を妹一人のために仕入れるあたりが。だからヒルダは香りを楽しみ、ゆっくり味わう。

兄の優しさはやっぱり嬉しいから。


「姫様、お気をつけてくださいまし。私は悔しい!本当に悔しい!ことについていけませんから」


「え、ええ。でも思ったより難しくなさそうよ。王家はこちら側に傾いてきているらしいから」


「では、どの派閥が?」


紙の上の名前を指差す。


「教会よ」


宗教とは恐ろしいものである。

人を簡単に操れるし、どんな残酷なことも正義にしてしまえる。

過去には宗教が原因で一つの国が滅びたこともあった。

マトリカリアの教会は魔族を悪魔の一族と信じている様である。


「教会ですか…。厄介ですね」


「ええ、本当よ。根強く染み付いているから、そう簡単には取れないだろうし」


唯一の救いは王家が好意的なことか。

しかし、教会は王家に対抗できる数少ない勢力。

ああもう、なんてものをやらせるんだあの兄は。


「教皇あたり、なにか不正働いてないかしら」


「それが一番手っ取り早いですが、姫様…」


呆れた様子で見られてしまった。解せぬ。


もう少し…!もう少しお待ちください!あちらの王子視点とか、こちらの前王妃視点とか、ノア陛下視点とかやりたいんです!

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