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ヒカリ  作者: 悠香
第1章~夏果編~
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第4話

気づくとわたしは古い小屋の中で天井に向かって手を伸ばしていた。

「あれ?」

わたしはさっきまで何かを掴もうとしていた。確か、さっきまで夢を見ていて、それで…。

とにかくここは一体どこなのだろう。わたしは今の状況をよく確認することにした。

わたしは今ベッドの上にいる。さっきまで寝ていて、起きた時なぜか天井に手を伸ばしていた。この古びた小屋はベッド以外何もない小さな木造の建物だ。

ここから出るべきか、それともしばらくここに残って様子を見るか。わたしは外の様子を見てみたかった。

わたしはベッドから降り、ゆっくりと目の前にあるドアに近づいた。

ドアにはドアノブのようなものが全く見当たらなかった。どうやって開ければいいのだろうか。

わたしは試しに軽くドアを押してみた。するとドアは簡単に外れ、大きな音を立てて倒れた。

恐る恐る外に出てみると、外は木々で生い茂っていた。遠くでは鳥のさえずりが聞こえる。

ここは一体どこだろう。今まで見たことのない場所だ。

わたしは勇気を出して探索することにした。とにかくここがどこなのかを突き止めたかった。

しかし、どうやって探索すればいいのだろう。目の前にはまるでわたしを導くかのような光の道があった。この光を信じて進んでみよう。

ヒカリの道はとても温かく、わたしは安心してその道を進んだ。

それにしても、わたしは一体どうなってしまうのだろう。それまで記憶は全く無く、ここがどこなのかも全く分からなかった。

光の道をしばらく進んでいくと小川が見えてきた。それを見るとわたしはふと喉が渇いていたことを思い出した。わたしは小川まで駆け込み、手で水をすくって飲んだ。

突然背後で何か物音がした。わたしは驚いて背後を振り返った。何もいない。気のせいだったのだろうか。

しかし何かの気配は消えない。わたしは少し不安に感じた。背後に何かがいる。

逃げよう。わたしは必死に小川を渡って何かから逃げた。小川は膝下までの深さになってきた。何かがわたしを追って来ているのを感じた。

背後に気を取られてしまい、わたしは足元に注意を向けられなかった。わたしは小石に足元を取られて転んでしまった。

「痛い…、足が…」

どうやら転んだ時に足を挫いてしまったようだ。わたしはあまりの痛さに顔が歪んだ。

その時、わたしは信じられないものをみた。

わたしの目の前に化け物がいた。四足歩行の顔無し人間のような化け物がわたしのことを見ていた。化け物は後ろ足で立ち上がり、右手を大きく上げた。鋭く長い爪が目に入った。

「きゃあ!」

わたしは咄嗟に両手で顔を覆った。同時に左腕に強い痛みを感じた。

ああ、ここでわたしは死ぬんだ。わたしはぼんやりそんなことを考えていた。でも、怖い。誰か…。

化け物は突然何かに気づいたように動きを止めた。そして何かを叫びながら後ずさりをし始めた。

何が起きたのだろう。わたしはゆっくり手を下げた。

その時、後ろから大きな足音がものすごい勢いで近づいてきた。足音の主はそのままわたしの頭上を飛び越え、化け物に襲い掛かった。

こげ茶色のローブを身にまとい、短髪の後ろ姿は明らかに人間だった。その人は素早く化け物の首を掴み、地面に押さえつけた。そして右手に持っていたナイフで怪物の心臓に突き刺した。

怪物は大きな叫び声をあげながら暴れていたが、しばらくすると静かになり動かなくなった。

人間はゆっくりと革の手袋を外し、両手を化け物の顔の上にかざした。すると化け物は大きな炎に包まれた。そして化け物は炎と共に消えていった。




わたしは目の前で起きていたことをなかなか受け入れることが出来なかった。突然化け物に襲われ、誰かに救われた。たった数分の出来事だった。

それでもわたしは怖くて仕方なかった。殺されるところだった。その恐怖が頭から離れず、体の震えが止まらなかった。

化け物を倒した人はゆっくりと立ち上がり、こちらを振り返った。

わたしを救ってくれた人の容姿を見てわたしは驚いてしまった。

端正な顔立ちの美青年だった。しかし、わたしが驚いたのは彼の瞳だった。

彼の瞳は七色もあったのだ。赤、青、黄、緑、金、銀、黒。その人間離れした左目には切り傷の痕が残されていた。

青年はわたしと目が合うと少し目を細めた。わたしは思わず目をそらした。

「立てるか?」

青年の声は少し高く、まるで女性の声だった。

「え?」

「怪我しているのか」

青年はそう言うとわたしの側にしゃがみ、わたしの左腕をそっと持ち上げた。

わたしの左腕は化け物に引っ搔かれ、血が出ていた。

青年はゆっくり目を閉じ、そして目を開いた。すると彼の瞳は金一色になった。青年は右手で左腕に触れた。

「いたっ」

「動くな」

青年の右手が突然光に包まれた。その光はとても優しく、温かかった。

光が消え、青年はそっと右手を上げた。わたしの左腕は黒い傷痕が残っていたが、出血は止まっていた。

「すごい…」

「悪いがここまでしか治せない」

青年はそう言って私の手を掴んで立たせてくれた。

よく見ると青年の瞳は七色に戻っていた。どうなっているのだろう。

青年は何も言わずに川を渡った。彼はわたしを置いていくつもりなのだろうか。

「ま、待って」

わたしは必死に青年を追いかけた。

「ここはどこなの?それにさっきの怪物は何?」

青年は足を止め、じっとわたしを見た。

「この世界の住人なら分かるだろう、今すぐに…」

「知らないよ。わたし気づいたら小屋みたいなところにいて、どうしてあそこにいたのか分からないの。それまでの記憶も無くて」

わたしは何故か話しているうちに涙を流していた。

「よく分からないまま歩いてたら怪物に襲われるし、あなたはその怪物を殺すし、腕に変な痕が残るし、一体何が起きてるのか分からないよ」

「…そうか。それならオレについてこい」

青年はそう言ってローブを脱いだ。ローブで気づいていなかったが青年の体はとても細く、右腕は包帯が巻かれていて痛々しかった。

青年は何も言わずにローブをわたしにかけた。

「これ…」

「お前の服は目立つからそれを着てろ。それに濡れているから風邪を引く」

青年はまた歩き始めた。

あの青年はわたしを助けるつもりなのだろうか。いまいち彼の考えていることが分からなかった。

しかし、今は彼に頼るしかない。わたしは彼のあとについて歩き始めた。




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