にょきにょきさんに会ったよ!
霜月透子事務局長、鈴木りん副館長が運営される「ひだまり童話館」の、「にょきにょきな話」参加作品です。
ちゃおっす!
おれ、可愛い仔猫の源九郎!
初夏だねえ。
初夏という言葉をこないだ知ったのは内緒だよ?
風がさわさわ~て気持ち良くって、おれはお散歩に出かけたんだ。
公園に行ったら、ベンチにへんてこりんが座ってた。
へんてこりんだけど、お父上みたいにスーツを着てるんだ。
でもね?
目も鼻お口もなくって、頭のところがにょきにょきにょき!て三本に分かれて伸びてるんだ。
おれぇ、びっくりしたよ~。
びっくりして。
「ちゃおっす、おれ、源九郎!」
って、ごあいさつしたんだ!
そうしたら向こうのへんてこりんも。
「どうも。にょきにょきです」
って、ごあいさつを返してくれたよ!
お口がないのにどこから声が出たんだろうね~。
そしておれは大事なことに気がついて、にょきにょきさんに言ったんだ。
「にょきにょきさん。おれ、お腹空いてるよ!」
「……そうかね」
「ひもじいよ!」
「……そうかね」
おれ、もう少しでぐずり始めるところだったけど。
にょきにょきさんが、持ってたカバンから、おむすびを三つ出して、おれにくれたんだ。
おれは、おむすびを、「いただきます!」して、「ごちそうさま!」して、にょきにょきさんは、とってもいいへんてこりんさんだなっ、て思ったよ。
にょきにょきさんは、お茶もくれたんだ。
それから、頭の、枝分かれしてるとこにおれを座らせてくれて、走ってくれた!
ぶうーーーん
ぶうーーーん
「にゃはははははは!!」
おれは、遊んでるうちにとろとろ~て眠くなってきちゃった。
「源、源。寝るならおうちで寝なよ」
「あれ?アル。にょきにょきさんは?」
目が覚めるとおれは、一人で公園のベンチに寝ていた。
アルがおれをのぞきこんでる。
「にょ…誰?」
「いいへんてこりんさんだよ!」
「うん。帰ろうか」
「はあい。またね、にょきにょきさん!」
おれは、アルが来てきっと照れて隠れているにょきにょきさんに、手を振ってお礼を言ったんだ。
それからおヒゲについてたご飯粒を、ぺろり、となめて飲みこんだ。
ああ、楽しかった。