表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/141

6 規格外な精霊

2話連続投稿です。

コドク視点スタート。

 何だか悲しい雰囲気になったから、慰めようとしたら「似合わない」と笑われた。

 むう、俺だって、これでも必死に考えたというのに。酷い奴らである。

 ……まあ、その分、俺達の間にあった緊張感のようなものが無くなったから、それでいいとするか。

 そもそも、人を慰めた経験の無い俺が、誰かを慰めようとする事自体、無理な話だったのだ。ここは仕方ないと諦めよう。

 俺がカナンの影の中に戻り、溜息を吐いていると、不意に、カナンが笑顔で俺に話しかけてきた。


「さっき、羽、ふわふわだった。抜いて、布団にしていい?」

『急に恐ろしい事を、笑顔でさらっと言うな、お前。いや、抜いたとしてもすぐに生えてくるけどさ。

 で、何枚必要なんだ?』

「……とりあえず、10枚?」


 俺達がそんなやり取りをしていると、ユーナが影の中にいる俺を、半眼になって見ながら、溜息を吐いた。


「……恐ろしいとか言っておきながら、結局あげるのね。痛くないの?」

『羽を抜くくらい、俺にとっては痛いの範疇には入らないよ。それに、できる事はしてやるって言った手前もあるしな。

 まあ、さすがに、腕を切り飛ばされれば痛いけど。』

「当たり前よ、それは痛いに決まっているわ!」


 ユーナが、呆れたように叫ぶが、俺にとっては、腹を抉られたり、腕に穴を空けられたりする事くらい日常茶飯事だったから、「羽根が欲しい」というかわいいお願いで羽を抜くなんて事、別に平気なのだ。

 それにしても、カナンの口数が増えてくれたのは嬉しい。

 なんでも、さっきまでは俺が怖くて、口数が少なくなっていたみたいなのだが、あの俺の不器用な慰めで、恐怖がどこかに行ってしまったらしい。おかげで、遠慮も無くなったが。

 偽りの無い笑顔を向けられるのが、こんなに嬉しい気分になるとは、俺も知らなかった。

 怠さと疲れで、自分を偽る気力すら湧かなかったのだが、それが良かったのだろうか?

 どちらにせよ、前世のように、仮面を被るのはもうやめよう。面倒だし、疲れるし、何よりもう必要ないしな。

 俺が、ユーナの言葉に苦笑していると、カナンが首を傾げながら言った。


「…翼は、いらないよ?」

「いくらコドクでも、自分の腕を切り飛ばしたりなんて、さすがにしないわよ!

 ……しないわよね?」

『しないよ。』


 ユーナが心配そうに聞いてきたが、さすがにそれはしない。

 俺が普通ではない事は自覚しているが、そこまで異常では無いと思うんだ。だから、何故聞いたのかな、ユーナ?そこまで俺って、普通では無いのか?

 ……うん、よくよく考えれば、腕に穴を空けられるのが日常茶飯事って時点で、普通では無いな。十分異常だった。

 まあ、仕方がない。これは、あの殺し合いの日々のせいだ。だから、あれを仕組んだ奴を見つけたら、腹いせに殺すとしよう。うん。だって、俺がこうなったのもそいつのせいだしね、仕方がないよね。

 と、そんな話をしている間に、魔物の気配が近寄ってきた。


「カナン、気を付けて。魔物の気配がするわ。」

「分かった、ユーナ。」


 うむ、ちゃんと二人も分かっているようだ。にしても、この気配の持ち主の魔物、弱っ!

 え、本当に何これ?「力」の質も量も無いし、何より遅いんだけど。

 そんな事を考えていると、ユーナが俺に問いかけた。


「ねえ、コドク。あなたは、何の精霊なの?私は、火の精霊だけど……」


 うん?なんだそれは。

 あれか、小説なんかでよくある、魔法の属性みたいな?


『う~ん、どうだろう?

 今、俺が魔術で操れるのは、大地や大気に属するものや、あとは闇に関するものって所か。』

「ええっ!?そ、それじゃあ、土に風、それに闇、あと、木?どれだけの種類の属性を操れるのよ?

 普通の精霊だったら、一種類、良くて二種類よ!?

 薄々察してはいたけど、コドクって本当に規格外ね……。」


 疲れたように溜息を吐くユーナ。

 俺が規格外なのは、あの蠱毒での殺し合いの日々のせいだからいいとして、なんでユーナがそんな事を聞いてきたのかが分からない。


『なあ、なんでそんな事を聞いてきたんだ?俺の使える魔術が、何か関係あるのか?』

「あるわよ。精霊と契約した人間は、精霊が使える魔術を使えるようになるのよ。

 逆に、精霊と契約していない人間は、魔術を使う事ができないわ。できて、魔力を操って、身体能力を強化する程度ね。」


 ほう。なら、カナンは俺の使う魔術を扱う事ができるようになっている訳だ。


『なら、俺がどんな魔術を扱えるか、見ておいた方がいいか。

 どうする、カナン?』

「……ん。見る。」


 カナンがそう言うと、丁度魔物がやって来たようだ。

 影から顔を出して見てみると、その魔物は、狼のような魔物だった。目が一つしか無いのが狼と違う所だが、まあ同じようなものだ。


「闇…は、扱いづらいだろうから、まず土からいってみようか。」


 俺はそう言うと、大地に少量の「力」を流し、土を固めて檻を作ってから、それを魔物の周りに飛び出すようにして地面から作り出した。

 魔物の周りに、土でできた檻ができる。

 魔物が吠えながら、檻に体当たりするが、土でできているとはいえ、俺の作った魔術を破るなど、そう簡単にはできない。


「さて、教材(生贄)もできた事だしね。授業を始めようか。」


 俺は影から体を出し、呆然として見ているユーナと、目をキラキラさせて見ているカナンを見ながら、そう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ