表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/141

121 世界の管理者

 穏やか過ぎる、不気味なヌレバから逃げてきたパラとシャウランが自宅に帰ると、疲れ切った表情のユーナが机に突っ伏していた。

 そのユーナを見たシャウランが、ユーナに声をかけた。


「あ、精霊界から帰ってきたんだね、ユーナお姉ちゃん。」

「ええ……ようやく帰ってこれたわ……」


 ユーナは顔を上げると、不満気な表情で愚痴をこぼした。


「まったく、私は女王なんかじゃないって、何回も言っているのに、あの子達ときたら……

 それも、神界が滅びるとか、皆そんな事ばっかり言って騒ぎ出すし。勘弁してほしいわ……」


 疲れ切ったような声でそう言うユーナに、パラは頷いて言った。


「そうだな。何処かの創造神(ニート)が神界を放っておいているせいで、神界は近い内に滅びるだろう。」

「……え?それ、本当?」

「ああ。」


 パラのその言葉に、ユーナは頬に手を当て、溜息を吐いた。


「そうなのね……どうにかならないのかしら。

 あの子達にとって、神様はいなくてはならない存在らしいのだけれど。」


 ユーナは、唇を尖らせた。


「そもそも、その神様がいないせいで、私が女王なんてものをやらなくてはいけなくなっているのよ。

 まったく、そのニートって奴、迷惑な奴ね!」

「そうだろう。あいつはろくに仕事もできない、どうしようもない馬鹿だからな。

 私と同等、もしくは私以上に価値も意味もない奴だ。いつか壊す。いや、今すぐにでも……」


 声に憎しみを宿し、ぶつぶつと呟き始めたパラに、ユーナが困ったような顔をシャウランに向けた。


「えっと、仲が悪いのね……?」

「うーん、どうなんだろう?悪くはないけど、良くもない、かな?

 因縁はあるみたいだけど、ユアーが一方的にパラを気に入っている、といったところかな。」


 苦笑いを浮かべながら、首を傾げてそう言うシャウラン。

 と、シャウランの言葉を聞いたユーナが、眉を顰めた。


「ユアー……?それって、あの、創造神と言われている、あの?」

「うん。あの創造神。」


 そう言いながら、シャウランは、あのユアーのチャラチャラした態度を思い出して、内心で苦笑した。

 あの、荘厳さも神々しさも、なんの欠片も無いユアーを見たら、きっとユーナのツッコミが止まらないだろうな、と、シャウランは思ったのだ。

 シャウランがそんな事を思っていると、呼幸が扉を開けて部屋に入ってきた。


「あ、シャウランちゃんにパラちゃん!ただいまです~。」

「うん、おかえりコサチお姉ちゃん。」


 呼幸はニコニコと笑いながら、ユーナの隣の席に腰を下ろした。

 機嫌が良さそうな呼幸に、シャウランも笑みを浮かべた。


「精霊界はどうだったの?」


 シャウランの問いに、呼幸は胸の前で両手を合わせた。


「ええ、とっても綺麗な場所でした~♪

 自然豊かで、空気も綺麗ですし、不思議と落ち着ける、いい世界でしたよ。」


 そこまで言って、呼幸はニヤリと笑い、目を光らせた。


「そうそう、精霊界でですね、いきなり結奈ちゃんが、「誰が絶壁ですってえぇぇぇ!!??」って叫んだのですよ♪

 しかも、理由が「ヌレバに絶壁って言われた気がしたのよ!」という事らしくってですねぇ。

 いくら胸にコンプレックスがあるからって、ねぇ?ちょっと自意識過剰っていいますか……」

「ちょ、呼幸っ!?」


 顔を赤くして、呼幸に掴み掛るユーナに、呼幸はニヤニヤとした笑みを浮かべた。


「だいたい、あんなに「私は女王じゃない」とか言いながら、皆に世話を焼いていたじゃないですかぁ?

 この際だから、やってみたらどうなんです?女王様?」

「は、はぁ!?だから、そもそも私はそんな性質じゃないし、女王なんてできないわよ!」


 キャーキャーと姦しく騒ぎ出す二人に、いつの間にか我に帰っていたパラが、首を傾げながら言った。


「いや、ユーナならば適任だろう。力はあるし、世界を管理する事も、お前ならば可能だ。

 ついでだから、崩壊する神界のリソースを精霊界と魔界に振り分けて、精霊界はお前が管理すればいい。

 少なくとも、あのニートに任せるよりは十分マシだ。」

「ちょっと、何勝手に世界の管理をさせようとしているのよ。私、世界の管理の仕方なんて分からないわよ。」

「いや、お前ならできる。霊脈の調整を、世界規模でやればいいだけだ。

 それ以外の事もあるが、何かあればコドクに押し付ければいい。

 どの道、あいつの居場所は人間界ではここしか無いし、それ以外の行く宛てとなったら魔界しか無い。魔界に住む事になったら、なし崩しに魔界の管理をやるだろう。お前が困る事は無い筈だ。」


 そう言いながら、何処か苦虫を噛み潰したような顔をするパラに、シャウランが首を傾げた。


「……?どうしたの、パラ?」

「いや。こうなるのも、全て予想した上で、あのクソニートはコドクに魔界の管理を押し付けた、と思うとな。

 他人事とはいえ、やっているのがあの駄神だと思うと、どうも気に入らん。」


 吐き捨てるようにそう言うパラに、ユーナが困惑したように言った。


「なんていうか……余程嫌いなのね、そいつ……」

「ここまで嫌悪感をあらわにするパラちゃんも、珍しいですね~。」


 そう言うユーナと呼幸に、パラは鼻を鳴らした。


「当たり前だ。あいつは、私と同じ、世界に存在してはならないものなのだから。」


 不機嫌そうにそう言うパラに、シャウランが眉を上げて言った。


「それならば、その内、僕も許されない存在になっちゃうね?」


 シャウランがそう言うなり、パラは、戸惑ったように身じろぎした。


「それは……いや、お前は違う。」

「だったら、認めてあげようよ。勿論、パラ自身の事もね。」


 そう言って、にっこりと笑うシャウランに、パラは、もごもごと口を動かし、やがて、唇を尖らせてそっぽを向いた。

 それでも、シャウランは、パラにニコニコとした笑みを向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ