0 月夜に鳴くもの
プロローグ的な何かの話です。
ここは、ユエイブワル帝国の辺境。魔物がひしめく、『魔の森』との境。
そこら一帯に、巨大な結界が張られ、中では、赤い目を光らせた様々な魔物が、血で血を洗う殺し合いを繰り広げている。
何年もの争いが繰り返され、魔物もどんどん強力になっていく。
何年も、殺し合いと食い合いが続けられ、魔物の数が、両手の指で数えられるくらいの数になった時だった。
不意に、その一つの命が散った。
その魔物の影から、いきなり白い何かが飛び出し、頭を切り飛ばしたのだ。更に、頭がなくなった事により、動きを止めた魔物の核を、闇が綺麗に切り取っていった。
また、一つ。命が散った。
今度は、台風を圧縮したような、風のミキサーでいきなり切り刻まれたのだ。
また、一つ。地面から生えた金属の槍が、命を摘み取った。
また、一つ。物凄いスピードで生えた植物に、飲み込まれた。
また、一つ。急に湧いた積乱雲から、落ちた強力な雷で、焼き殺された。
今までとは、比にならない速度で、命が散っていく。
何万という戦いを経験し、ただでは死なない筈の強大で強力な魔物が、あっさりといなくなっていくのだ。
最後の魔物が、大きな闇に飲み込まれ、痕跡すら食われて消えてしまった。
代わりに、その闇から出てくるものがいた。
それは、真夜中の夜のような、真っ黒な体毛を持つ、巨大な鳥。
嘴には鋭利な牙が生えそろい、翼には、鱗の付いた指と、鋭い爪が生えていた。
長い三つの尾羽が、月光を滑らかなに反射する。
その瞳には、丁度、夜空に浮かぶ満月のような、金色の瞳があった。
その生き物は、足を畳むと、疲れたように、ぐったりと地面に伏せた。
その生き物が空を仰ぎ見ると、丁度その空には、沢山の星と、まん丸な満月。
その生き物は、目を細めると、力無く鳴いた。
やっと終わった。
まるで、そう言っているかのように。
どうも、「異世界に落ちた種」でショックを受けたというのに懲りずに投稿した、白灰黒色です。
今度は、パソコン本体にも保存しているので、きっとデータが破損するなんて事はない…筈。
今回の「蠱毒の精霊」は、ステータスみたいな、ゲームっぽい奴は出てきません。
まぁ、趣味で投稿しているので、あまり期待せずに、暇つぶし程度に読んでください。