ホルダ
ひとまずは街に向かう事にした。
いつまでも大草原のど真ん中に、ゴブリンさんと突っ立っていても仕方ない。
ここがゲームの中と同じ世界なら街がどっちかは分かる。
剣を1本は既に背中に差していたので渡された王の剣はそのまま手に持って歩いていた。
「失礼ながら、剣をホルダに仕舞われた方がよろしいのでは無いかと存じます」
ホルダ?
なんだろう、耳慣れない言葉だ。
仕舞う?
仕舞うってことは、もしかしてアイテムホルダー?
自身の体を見下ろして、腰に革袋を下げている事に気が付いた。
「もしかしてこれ?」
腰に下げている革袋に手を伸ばす。
「うぉっ!?」
触れた瞬間、革袋からなにかハリネズミみたいなのが飛び出してきた!?
おそるおそるハリネズミを観察してみると、それはまるでペーパーナイフのようなミニチュアの剣や鎧、回復薬っぽい瓶、エトセトラ、エトセトラが飛び出してきていた。
ややあって気が付いた。
つまりこれは自分が今までゲームで集めてきたアイテムだ。
どうやら革袋が4次元的な仕組みになっているらしい。
これならゲームでのあの有り得ない量のアイテムを持ち歩いている状態も分かる。
いや、質量保存の法則があるから大きさ変わっても重さは変わらないよね、なんて野暮な突っ込みはしない。
試しに1本の剣をつまんで引っ張ってみた。
「おぉー!」
剣は引き出していくにつれてどんどん大きくなっていく。
途中何度か持ち替えつつ完全に抜き出すと、それは自分の身長と変わらない両手剣になった。
まさしく4次元的な、いつかテレビで見た光景だ。
重さの変化は感じなかった。
と言うよりも、完全に抜き出しても重さを全然感じないのだ。
レベル58のパワーは伊達じゃないって事だろうか。
今度は逆に革袋に今抜き出した両手剣を突っ込むと、今度はさっきとは逆にどんどん縮んでいき、全長の3分の2ほどが入るとそのままするっと革袋の中に剣は吸い込まれていった。
林檎マークのPCでウィンドウしまう時ってこんな感じだよね。
と、妙な感動があった。
せっかくなので背中の剣をホルダに仕舞い、渡された王の剣を背負う事にした。