ゴブリン王の伝説
長い間バラバラに集落を作り、卑しい山賊と変わらないような生活をゴブリン達は続けていた。
そこにひとりの王が現れた。
王は次々と集落を周り、ゴブリン達をまとめ上げた。
やがてそれは国となり、ゴブリン族にとってかつてない繁栄を築き上げた。
ゴブリンは弱く、多くの種族にとってさけずむべき存在だった。
しかし王が現れ、奪わなくても良い生活を送れるようになると、皆誇りを持って生きるようになった。
誇りを持ち、文武を磨き、王に忠誠を捧げる騎士が現れるようになると、他のモンスターの種族の見る目も変わり、卑しき者、さけずむべき者と呼ばれる事は無くなった。
その繁栄は永劫に続くかと思われた。
しかしある時、王はいなくなってしまった。
寿命を感じ取り死ぬ前に消えたとも、あるいはゴブリン達を見捨てたのだとも言われた。
王が不在になると、国は荒れ、やがて国を出て行く者達が大勢現れ始めた。
騎士達は王を捜すべく国を出た。
騎士のいなくなった国はついには崩壊し、今では墓標のように廃城が残っている。
その騎士のひとりが彼らしい。
そして長旅の果てについに俺を見つけたらしい。
「どうして俺が?俺はゴブリンではありませんよ」
ないよな。
手のひらを見る。
肌色だ。
これは間違いなく人間の手だろう。
王よ、どうか私にそのような言葉使いなどしないでくださいませんか。
そう前置きしてから彼は話す。
「先代の王も我らと種を同じくするお方ではありませんでした。あのお方は種族の別など関係なく、我らに繁栄と安らぎをもたらしてくださったのです。そして貴方様から感じる輝きは間違いなくあのお方と同じ輝きでございます」
彼の目はあくまでも真摯だ。
勘違いじゃない?
とは冗談でも言える雰囲気じゃない。
結局分かったのは、このゲームの中に来ちゃった現象は何も解明されていないって事だった。