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ノル・ブリンカに

青地に黒の紋様が刻まれた鎧に身を包んだ自分を改めて確認する。


見覚えのある鎧だ。

右手にはコントローラーではなく、一振りの両手剣を握っていた。

ディスプレイで最後に見たシーンに登場したあの剣だろう。


手にしていた剣に自分の顔を映し出すと、そこに映っていたのは間違いなくゲームのキャラクター、ノル・ブリンカだった。


間違っても上原和馬ではない。


イケメンだな。


こんな顔に生まれたかった。

いや、今はこの顔が俺なのか。


そういえば視点も少し高くなっている気がする。

イケメンな上に高身長か。


まごう事なきイケメンだな。


改めてひざまずいたままのゴブリンを見る。


おじいちゃん顔だな。

ディスプレイで見るよりは醜いとか、モンスター的な恐ろしい顔ではない。

愛くるしいとは口が裂けても言えないが、これはこれで愛着が持てそうだ。


「えぇっと」


なんて声をかけていいのか分からずもごもごしてしまう。


「なんなりとお申し付けください。王よ」

「王?」


誰が?


「御身に他なりません。ノル・ブリンカ様がお持ちの剣は我らが王たる印であります」


剣を受け取った結果、俺はどうやら王様になったらしい。


ゲームの中で剣を受け取っただけだ。

そんな簡単に王様ってなれるの?

いや、こうしてゴブリンと話が出来る事、つまりゴブリン語が分かるから王になったとか?


いやいや、問題はそこじゃない。

問題は、ここはどこですか?って事だ。


いや待て。

どこかは分かる。ゲームの中だ。


パラレルワールドとか異世界とかファンタジーとか色々言い方はあるだろうけど、日本でない事は分かる。


日本が存在しない世界なのは分かる。


つまり聞くならこうか。

未だひざまずき、真摯にこちらを見つめている黒鎧のゴブリンに話しかける。


「俺はどうなったんですか?」

「王におかれましては何の変化もございません。ただ、我らゴブリン族一同が王に忠誠を誓い、御身を守り抜くだけにございます。そしてその事に王が一切のご配慮を頂く事は必要ございません」


えーっと、つまりそれは、俺が王様になるとどうなるかって事だよね。


自分がPCディスプレイの前から雄大な大自然のただ中にすっ飛ばされて、ゴブリンさんとお話をしている説明ではない。


つまり彼ではないと?

彼がこの現象を起こした訳ではないのだろうか。


混乱の極みではあったが、それでも思考は解決の糸口を探して回り続ける。

壮大なドッキリなんて話が有る訳が無い。


目の前のゴブリンはロボットでもCGでもないだろう。

彼は呼吸している。

まばたきをし、その目は意志を宿している。


その彼を観察して、そうか、とひとつ考えつく。


「あなたはどうして俺が王だと思ったんですか?いや、あなたは今までどうされてきたんですか?」


間違いなく彼はゲームのモンスターとして存在していた。


つまりそれはこちらとあちらがどうにかなった瞬間にも立ち会ったという事だ。

まずは彼の話を聞く事が糸口ではないだろうか。


「おお、これは失礼をいたしました。私は王の事を知っておりますが、私めのような小さき者の事を王が知らぬのは道理。お話いたしまするのが正しき道筋でした」


彼の話は要約すると、こんな話だった。

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