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ゴブリン
ふらふらと街の外に出る。
やはり誰もいない。
そうか俺はひとりなのか。
コントローラーから手を離し、ぼんやりとディスプレイを眺めていると、1体のシルエットが目に入った。
ゴブリンだ。
人ではない。
しかし、人型ではある。
もしかして、話し出したりしないかな、コイツ。
もはや自分で自分が錯乱しているとしか思えない。
構うものか。
どうせここには俺しかいない。
ゴブリンに向かって話しかける。
「こんにちは!」
返事が無い。
ただのゴブリンのようだ。
ですよね。
分かっていたさ。
ゴブリンはしばらくこちらをじっと見ていたが、レベルが違うのが分かったのか、不意に振り返り、そのまま立ち去っていった。
「さようなら」
意味なんて無いのは分かっている。
それでも俺は別れの挨拶を言わずにはいられなかった。