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最後の課題

旅立ちに向けて、最後の準備が始まった。

その準備は10日にも渡った。


アルフレッドは村の運営について、アリアは工房での技術についてを伝えていく。


6人のゴブリンを集め、俺が最初にしたのは武器を渡す事だった。

手持ちの武器の中から彼らが持つに相応しい最上の武器を渡す。


ナゴブにはカタールを渡した。

5つのナイフが放射状に付いた手甲だ。

殴るように突けるので、高い威力が出る。

だからと言って、コカトリスの時のような無茶はして欲しく無い。


弓ゴブには破魔矢を。

アマゾネスの弓と組み合わせれば高い威力が出る。

帰ってきた時にはアリアにも負けない弓の使い手になっていて欲しい。


槍ゴブには薙刀を。

いつも状況を的確に判断して、戦闘の流れを作っていたのは君だ。

前に出ず、冷静に敵を見る目にはこれからも磨きをかけていって欲しい。


剣ゴブにはカッツバルゲルを。

盾で最前線に立つ君の背中には仲間の命を背負っているような重みがあると思う。

その重みを力に変える意味を知った君は強い。


刀ゴブには名刀ヨシツネを。

普段は誰よりも静かなのに、敵の弱点を冷酷なまでに正確に突く君には、個人的に一番注目していた。

仲間のために、誰よりも熱い意志を燃やしていたね。


斧ゴブにはバルディッシュを。

柄が長いのは鍛冶ゴブに言えば調整してくれるだろう。

仲間を信じて、自分を信じるんだ。

命の使い時を決して間違えてはならない。


武器を渡すと、3日間、カーヴァルウシュタを狩りに出た。

新しい武器の調整のためだ。

そして巨体を誇る魔獣に対する術を教えた。


次の2日間は講義と演習をした。

習性、特技、弱点。

どういう時にどういう事を考えるべきか。


次の2日間はアコルディオンに向かった。

実際の戦いを見せ、どう戦うべきなのかを考えさせた。


そして1日休んだ。

ちょうどその時に、アリアから石化無効を付けた鎧を渡された。


9日目、アコルディオンに向かった。

コカトリス。

この周辺で最も凶悪な魔獣を倒すために。






巨大な鶏が天高く鳴き声を響かせる。


岩山が連なる中で、最も足場の良い場所の中央にコカトリスがいる。

最も足の速いナゴブがこの場所まで引っ張ってきたのだ。

今回はいつもと違う戦い方だ。

まず、ナゴブが前に出、その次に槍ゴブが続いた。


弓ゴブがひとり離れ、高所から矢を放つ。

動きを牽制し、着実に急所を狙っていく。


鶏の胸が膨らむ寸前にブレスを誘い出したナゴブが離脱し、槍ゴブもブレスのぎりぎりの間合いを保つ。

ブレスを無効にしていても、あえてそれをかわし、間合いの外に出る。


それはブレスが無効化されると分かった鶏が肉弾戦を選ばないようにするためだ。

鶏のその巨体は、大きく重い、それだけでゴブリンにとっては驚異となる。


ブレスが切れる瞬間に接近し、槍ゴブと刀ゴブで足に斬りつける。

剣ゴブと斧ゴブは鶏が体当たりやクチバシ、蹴爪での攻撃を選んだ時に槍ゴブと刀ゴブのふたりとスイッチして押さえ込む。


大きなダメージは与えられなかった。

強力な武器に替えたにも関わらず、鶏から出る血の量はわずかだ。

弱点のはずの弓の攻撃が一番血を流させていたが、体力を奪うには遠い。

それでもゴブリン達はあきらめない。

少しずつ削り、体力を奪っていく。


鶏の動きは鈍らない。

しかし、単調さが見え始めていた。

ことごとく間合いの外へと逃げられていたブレスよりも、体当たりが増えていく。


それはゴブリン達にとって苦しい時間だった。

体力の面では向こうが上だ。

用意していた回復薬を使いながら、それでも集中力を切らさず立ち向かう。


鶏の足への度重なる攻撃が少しずつ機動力を奪っていく。

体に刺さった数十本の矢が体の動きを鈍らせる。

機動力が落ちれば回り込み、6ゴブの有利な位置からの攻撃が増えていく。


剣ゴブの頭をついばむように鶏が頭を突き出す。

そこに絶妙なタイミングで斧ゴブが前に出た。

斧ゴブの斬撃が綺麗な円弧を描く。


その一撃は鶏の首に届くと、ざっくりと大きな傷をつくった。

血が勢いよく吹き出す。


そこに刀ゴブがさらなる斬撃を加えようと前に出た時だった。


鶏が血をまき散らしながら首を持ち上げる。

胸が膨らむ。

ペトロブレスだ。


しかし、5人のゴブリンは後退しない。

それを見た鶏が思ったのは勝利だったのだろうか。


鶏が真っ白な吐息を吹き散らす。

それは5人のゴブリンの姿を隠した。


その瞬間だった。

甲高い悲鳴のような鳴き声が響き渡った。


ブレスが掻き消える。


鶏は倒れ、ばたばたと暴れていた。


首には槍が突き刺さっていた。

それは刺し貫かれ、反対側に刃が飛び出ている。


そしてその胸には1本の刀が刺さっていた。

それは少しずつ削り、血が流れ出していた胸の傷を正確に捉えていた。


斧ゴブと剣ゴブが近づき、槍の刺さった首にとどめの一撃を放つと、やがて鶏はおとなしくなった。


槍ゴブが拳を出す。

それにぶつけるように斧ゴブが、剣ゴブが、刀ゴブが、ナゴブが拳を突き出す。

そして弓ゴブを、俺を見た。


弓ゴブも俺も近づき、拳を出す。


全員の拳がぶつかる。


その瞬間、誰も彼もが歓喜の叫びを上げた!

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