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心の王

そうと決まれば、この村でやっておかなければならない事をやっておかなくてはならない。


村のゴブリン達を全て集める。

こんな顔だったか。

村の全てのゴブリン達の顔には様々な感情が浮かんでいる。

期待、不安、疑問、信頼、戸惑い。

それは明らかに以前のゴブリン達には無かった表情だ。


今までこの場所で起きた事を思い出す。

最初は敵として。

そこで感じたのは強い怒り、そして恐れ。

それ以外の感情が見えず、最初はどのゴブリンも見分けがつかなかった。


6体のゴブリンを鍛えた。

最初はただまっすぐに敵にぶつかる事しか知らなかった彼らの行動はまるで子供のようだった。

利点を活かし、優位に立つ。

効果的な攻撃を覚える。

今では自信とたくましさがその表情に満ち満ちていた。

この“6人”が村にいれば大丈夫だろう。


工房のゴブリン達。

物は奪って手に入れる。

そんな野蛮だった彼らも、今では向学の徒だ。

次々に新たな課題を自分自身で見つけている。


街との交渉を行うゴブリン達もいる。

6ゴブに比べると、まだその表情は幼い印象だ。

どこか不安げなその表情も、すぐにみんなと同じようにたくましくなるだろう。

アルフレッドと行動を共にしてきたならきっと大丈夫。


村のゴブリン達に旅に出る事を告げる。


アルフレッドも、アリアも共に行く。

それはアコルディオンまでのようなちょっとの旅ではない。

しかしこれは別れではなく、旅だ。

帰りが明確にいつになるかは分からない。


そこまで言うと、様々な声が上がった。


行かないで欲しい。

我らを導いて欲しい。

王がいなくなった後にどうすれば良いのか。


アリアがこの声を聞いて、痛みを耐える顔になった。

アルフレッドは黙ったままだ。


どれも悲しみの声だった。

そしてそれは依存の声だ。

それも一方的な依存の声。


やっぱりそうなるのか。

彼らには自立をして欲しかった。

誰に頼るでも無く、自らで自らを導いて欲しかった。


このままでは力づくでも俺たちを外の世界へは行かせない、そんな声が出てきてもおかしく無い。


そう思った時だった。


刀を操るいつも寡黙なゴブリンが俺と、ゴブリン達の間に出た。


そしてゴブリン達の方に振り向くと言う。


私は王を送り出したいと思う。

この村にこれほどの素晴らしい方々を縛り付けてはならない。


力強く斧を振るう筋肉質なゴブリンも前に出る。


王の重荷にはなってはならない。

それではこれまで私たちのために力を尽くしてきてくれた恩を仇で返す事になる。


6人のゴブリン全てが前に出て語る。


我らは王の命に従わなくてはならない。

例え、その命令がどれほどつらく難しい命であったとしてもだ。


王は言われた、信頼するのだと。

王はいつも私たちを信じてくれた。

その私たちが王を信じなくてどうする。


王はまたこの村へと戻られる。

それまで、この村を守り、王が誇りと思う村にしなくてはならない。

そうではないか!


嘆きは静まっていた。

言葉は力になって場に響いた。


ひとつ言葉が響くたびにゴブリン達の顔に力があふれる。


ひとつ言葉が響くたびに迷い、戸惑い、不安、恐れが消えた。


今、全てのゴブリンが同じ顔をしている。


6人のゴブリンがひざまずいた。


我らは身命を賭して、この村を守り、そして王のお帰りをお待ちしております。






何があっても、この村には帰ってこないとな。


言わなくても、俺が何を思っているのか伝わったらしい。


アリアが、アルフレッドが笑顔で俺を見て、そして頷いた。


「誓おう!例え世界が炎に包まれようとも、闇に落ち光が戻らずとも、必ず俺はこの場所に戻る!」


立ち上がり、拳を振り上げ叫ぶように言葉にする。


「ひとつ、この場で命じる!俺たちが不在の間に自らで自らを導く方法を探せ!みんなには聴こえているはずだ!誰の言葉が無くても、今という瞬間にこれをしろ、と叫ぶ自らの声が!それこそが王の声に他ならない!」


かつて、俺のために命を投げ打とうとした3人のゴブリンがいた。

それは俺の命令では無かった。

それでも彼らが動いたのは、自らの内の王の声に従ったからだ。

必ずある。

王の誇りは誰の内にも声を上げ、叫び出す瞬間を待っている。


「みんなが俺やアルフレッドやアリアを誇りに思ってくれているのなら、そう思うみんなの心の中にこそ、王の誇りは存在する!誰を王と思っても良い!しかし、自らの中にも王がいるという事を忘れてはならない!」


アルフレッドがひざまずいた。

アリアもひざまずいている。


「胸を張れ!常に考え、そして行動しろ!そうしてみんなが歩み続ける先にこそ再会の時は待っている!」


しかと承りました!


そう唱和したゴブリン達は泣いていた。

しかし、その目には力があふれている。

アルフレッドにも、アリアにも負けない力が。


例え、現実世界に帰る事になったとしても、その前に必ず戻ってこよう。


この村はまるで自分の子供だ。


帰ってきた時に、どんな大人の顔を見せてくれるのか、今から楽しみになった。

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