アップグレード
6ゴブを呼び集める。
昨夜、宿屋でアイテム整理をして、6ゴブに渡すアイテムを見繕っておいたのだ。
もしかしたらアルフレッドも武器のグレードアップは考えていたかもしれない。
しかし俺はせっかくアルフレッドがお金を管理しているのだから、もっと集落自体を良くする方向にお金は使って欲しいと思っていた。
最初に全員の武器を渡していたので、何となく6ゴブの武器を揃えるのは自分の役割のようにも感じていたし、お金も、使う事の無いアイテムにも余裕はあった。
頑張っている6ゴブにご褒美を上げても罰は当たらないだろう。
まずはウォーリアーになった剣ゴブに武器を渡す。
一番筋肉質でマッチョなゴブリンだ。
彼にはバトルアクスを渡した。
彼は常々、剣では軽すぎると言い、途中からハンマーに替えていた。
渡したバトルアクスは例のオークの物だ。
結局、ギルドには取りに現れなかった。
そんなものだろうと思っていたので、有効活用する事にした。
ひざまずき、両手で斧を受け取る。
こういう礼も様になってきていた。
正直、俺が街に帰った後にアルフレッドが夜、どんな凄まじい調教、もとい指導を行っているのか知らないが、それにしても大したものである。
受け取った斧を何度か振り回す。
その姿は緑色の肌のドワーフと言った風情だ。
どうやら問題は無いらしい。
一通り振り回すと、斧を脇に礼をする。
うむ。これからは斧ゴブとして励むように。
ショートソードを使っていたグラディエイターのゴブリンにはグラディウスを渡した。
斧ゴブと同じように受け取る。
彼も剣を抜き放ち、一度だけ大きく振るった。
鞘に納め、礼をする。
君は今まで通り剣ゴブだね。
サーベルを使っていた同じくグラディエイターのゴブリンにはタルワールを渡した。
他のゴブリン以上に深く頭を下げた。
彼は寡黙なゴブリンだ。
しかし悪い子ではない。
こんな事を考えているとなんか、学校の先生みたいだな。
片刃を使うから、君は刀ゴブだ。
スピアを使っていたランサーのゴブリンにはグレイブを。
ちょっと長過ぎるようだが、槍ゴブは前のスピアも勝手に柄を切って使っていたようなので問題ないだろう。
シーフのナゴブにはククリを渡した。
こういう湾曲したナイフをゴブリンが持つと、人の首を落として飾ったりしてそうなイメージになるな。
いや、ククリを抜くと血を求めるってのは俗説らしいけど。
しかし、妙に似合っている。
アーチャーの弓ゴブにはアマゾネスの弓を。
ショートボウに比べると、何気にこれは良い弓だ。
弓なんて持ってても使わないんだから良いかと思って渡す事にした。
とりあえずはみんな気に入ってくれたようではある。
それでも一応言っておく。
「俺に渡された物だからと言って、無理して使う必要は無い。使いにくいと思ったら遠慮なく言うんだ」
6ゴブは一斉に礼をする。
「王の仰せの通りに」
うーん。調教、もとい指導がされているなあ。
6ゴブを解散させると、どこかに行っていたアリアとアルフレッドが来た。
「新しい武器を渡されたのですな」
どうやら見ていたようだ。
「ジョブも変わったし、まあ、そのお祝いもかねてね」
「さすがでございます」
アルフレッドは朗らかに笑う。
いやいや、と謙遜すると、アリアが声を出す。
「頼みたい事があるんだけど」
なんだろう。
射抜くような視線に緊張する。
「練石ってこの辺で取れない?」
練石。
なんだっけ。
素材だよな。
ホルダをたたき、持ってる素材から探してみる。
これだっけ?
「これの事?」
取り出した石を渡す。
「そう、これ。出来れば大量に欲しいんだけど」
そんなに大量に持っている訳では無い。
何せ製作職とは今まで無縁だったのだ。
せっせと集めたって使い道が無かった。
そんな物を集めてはいない。
石を返してもらい、見つめ、考える。
これはどうしたんだったか。
この辺でどこかに取れる所なかったっけ?
ギルドで聞いた方が早いか?
と考えて思い出した。
アコルディオン大峡谷。
リディア川の上流にある急峻な地形のエリアだ。
「アコルディオン大峡谷が一番近いかな」
街にも素材を売る店は少ない。
あるにはある。しかし扱っているのは高価な素材だ。
練石は欲しければ自分で取ってこなければならない。
アコルディオン大峡谷は遠い。
ゲームだったらひたすらに走って行き、獲得したらそのままとんぼ返りで良かったけれども、現実として考えるなら一泊しなければキツいだろう。
「ついにこの集落にも鍛冶の火が灯る訳だ」
「なんか工房に使えそうな空き家があったからね。ちょうど良いからそこを使わせてもらうよ」
空き家。
それは恐らく初日の騒動で死んだゴブリンの家なんだろうなあ。
人の流出が無い集落に空き家なんて普通は無いだろう。
過ぎた事だ。考えても仕方無い。
「既に採集してあったコモドドラゴンの革も、鎧として使えるように加工するべく、そのための工房も準備させております」
とはアルフレッドだ。
なるほど。
それで売らなかったのか。
アリアが来る事が分かっていたのなら確かにその方が良い。
さすがアルフレッド。
万事において先まで見通している。
「それじゃあ悪いんだけど案内してくれる?」
「あれ?工房の準備は?アリアが抜けて良いの?」
アリアを案内するとは思わなかった。
「工房の完成は今すぐという訳には参りませんので。私はいささか頼りない柵の改修を行わねばなりません」
アルフレッドは残るようだ。
どうやらこれを機に、集落の環境整備にも乗り出すらしい。
おお、何だか色々動き出している。
しかし、アリアとふたりでというのはちょっと気が引けるな。
アリアをちらりと見る。
怒ってないよね?
普通に話していても怒られている気になる。
俺がギャル系の子を苦手にしてるせいか?
なぜだ。
結局、アリア、斧ゴブ、刀ゴブ、ナゴブ、俺の5人でアコルディオンに向かう事になった。
特に何も無さそうではあったが、6ゴブにも居残り組を作り万が一に備える。
おいでよゴブ村。集落に発展の兆し。




