転職したい!
旅立ちから3ヶ月が過ぎ、多くのゴーストタウンを巡り、ある程度レベルも高くなった頃、俺は人類最後のあの街に向かう事にした。
今更あの限界集落には行きたく無い。
しかし、行かねばなるまい。
なぜなら俺はレベル30を既に超えているにも関わらず、ジョブがファイター(戦士)のままだった。
一番最初のジョブだ。
ネットで調べたらレベル12からジョブチェンジできるらしい。
正直このゲームを舐めていた!
このゲームではソロプレイなんてあり得ないのである。
なにせひとりで世界に飛び出すと、本気で誰にも会わない。
街に入っても誰もいない。
誰もいない以上、回復施設も使えず、ギルドでクエストを受ける事も出来ず、ジョブチェンジに必要な神殿も使えず、街に入る意味がまるで無い。
あの街を出ると言う事は社会的なPKを受けるという事だったようだ。
そう気が付いても俺はあの街には戻らなかった。
せめてレベルだけでも奴らと対等になるまでは帰らない!
おめおめと戻り、奴らに泣きつくのは癪だった。
死んでも嫌だった。
既に社会的に死んでるけどね、と自分で突っ込み悲しくなる。
ああ、苦行!
旅の空でひとり、虚空に何度叫んだだろう。
武器、防具、回復アイテムは全てモンスターのドロップに期待するしかない。
しかしそれはそうそういつもいつも落とすとは限らないのだ。
ってか、使えるアイテムなんてほとんど落としやしねえ。
しけてんな。
これも何度つぶやいた科白だろうか。
しょぼい武器、防具のまま、満足に回復アイテムも持たずに世界に飛び出した俺は何度も死んだ。
ホームタウンの登録だけは街に誰もいなくても自分自身で設定できるので、あの街を出て以来、着く街着く街でホームタウンを変えていったので、あの街に戻される事はなかった。
しかし、死ねば最後に立ち寄った誰もいない街にレベルダウンして戻される事になる。
レベルをひとつ上げては、ひとつ落とし、何時間も掛けて武器を変え、防具を整え、地道にコツコツと賽の河原で石を積み、ようやくレベルが30を超えた時点で悟った。
もう無理だ!
せめてジョブだけでも変えさせてくれい!