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03 スリーピィヘッド

翌朝、テオドーラはいつも通りに起床することができず、専属侍女のアマリアに小言を貰ってしまった。

理由は明白、昨日延々と魔法媒体のスマホを調べていたせいだ。スマホとはいえ、魔法媒体を使用するということは魔法を使っているということになる。魔法は無尽蔵に使えるわけではない。運動と同じで、使い続けていると徐々に疲弊してくるのだ。

そのことは事前にくどく言われていたというのに、テオドーラは思わぬスマホとの再会の喜びで、そのことをすっかり忘れていた。それをアマリアは見抜いたようで、小言の内容は「うかれすぎないように!」というものだった。

しかし、アマリアに口煩く小言を言われても我慢できるくらい、テオドーラは昨日のスマホ調査に満足していた。お陰で自分の魔法媒体でどんな魔法が使えるのか、凡そ把握できたからだ。

自分のことを知らないのが一番危険なので、アマリアも今後魔法媒体を使用するなとは言わなかった。限度を考えるように、とは言われたが。

身支度中、延々と続いた小言を無事に切り抜け、テオドーラは朝食の席に着いた。貴族というと部屋で食事を摂るイメージもあるのだが、ヴェルデマーレ家では一家揃って食事を摂る。

テオドーラが部屋に入ると、既に両親は席に着いていた。


「おはよう、テオドーラ。やっぱり寝坊したね」

「おはよう、父様。でも、やっぱりって?」

「好奇心旺盛なテオドーラのことだもの、魔法媒体を手に入れたらそれを弄り倒して、次の日は疲れていて起きられないんじゃないかって思っていたの」

「うっ……!」


娘のことをよく理解している両親である。

最初に声をかけたのは父、フェデリコ。テオドーラの碧眼は父譲りだ。

そして、テオドーラは顔もフェデリコとよく似た繊細な美貌を持っている。しかし、男性として考えるとこの顔は些か女々しいかもしれない。彼自身の穏やかな気性のこともあり、フェデリコは中性的な印象だ。

父に続いて声をかけたのは母、クラリーチェ。テオドーラの水色の髪は母譲りだ。

あまり身体は強くないが、卓越した魔法の腕を持つ才女である。大人しく見えるのに、得意魔法は攻撃性のある魔法ばかり。もし身体が強かったら、誰も敵わなかったかもしれない。


「おはよ……」

「おはよう、ジュリア」


テオドーラのすぐ後からやって来たのは妹のジュリア。フェデリコ譲りの灰色の髪と、クラリーチェ譲りの紫色の目を持つ少女だ。顔立ちは母譲りの、些か控えめな造りをしている。歳はテオドーラの一つ下。

朝に弱いジュリアはいつも一番遅い。そして、朝食の席ではあまり話さない。完全に起き切っていないからだ。うつらうつらと舟をこいでいるジュリアが倒れ込まないように見守りながら、クラリーチェはテオドーラに話題を持ちかけた。


「学院への入学がもうすぐだけど、準備はできているの?」

「うん、大丈夫」


この国の貴族の子女は、十歳になると王都の学院に通う。これには様々な意図がある。

魔法を使えるようになったばかりの子供達が問題を起こさないよう見守るという意図。十四歳で迎える社交界デビューへ向けての練習。そして、社交界デビューと同時に結婚する子供もいるため、親元から離れるよう精神的自立を促すこと。

様々な意図を含んでいるため、貴族の子女は特別な事情でもない限り、学院に通うのが慣例となっている。


「学院へ連れて行く侍女はどうするんだい?」

「アマリアとアロンザは連れて行くつもり。他も大体決めてあるよ」


貴族ばかりの学院ということもあり、学院には専属の侍女を連れて行くことが認められている。学院に勤める侍女もいるのだが、やはり普段から共にいる侍女の方が気を許せるからだ。

アマリアはテオドーラの専属侍女で、アロンザはテオドーラの護衛である。本来護衛を連れて行くことは禁じられているため、アロンザは侍女として連れて行くことになる。連れて来た護衛で問題を起こす子供もいるため、武装した人間は連れ込めない決まりなのだ。

といっても、魔法が使えれば武装なんて誰でもできるのだから、その決まりにどれだけ意味があるのかは分からないが。


「メラグラーナから王都までは遠い。数日中に出発しなくては新学期に間に合わないな」

「うん。早く準備を済ませないと……」


テオドーラの学院入学まで残り二週間。今後の忙しないスケジュールを思い浮かべ、テオドーラは溜息を禁じ得なかった。


ヴェルデマーレ家は貴族だけどフランクなイメージ。

章名が学院編なのに、中々学院まで辿り着かないですね……。


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