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02 トライバル

テオドーラの魔法媒体となった不思議物体、もといスマホ。これはこの世界には本来存在しない品だが、テオドーラはこの品のことをよく知っていた。

なぜなら、テオドーラの前世の世界にあった品だからだ。

そう、テオドーラには前世の記憶がある。前世のことを思い出したのは物心ついた頃だった。テオドーラは元々、地球と呼ばれる世界で生きていた。若くして事故でその命を終え、気付いたら別世界の子供になっていたのだ。

最初は酷く混乱した。科学で支配された世界から、魔法で支えられたファンタジー世界に放り込まれたのだから、混乱するなという方が無理だ。

前世では有り得なかった色合いの髪と目も、テオドーラが現実を受け入れ難くする一つの要因だった。地球では平々凡々な黒髪黒目だったというのに、今生では水色の髪に碧色の目なのだ。初めて鏡を確認した時は悲鳴を上げそうになった。

しかし、美少女だったのは嬉しい誤算だった。ナルシシズムの気はないのだが、自分でも美しいと思う顔立ちだった。

その美しい顔の元となった両親も、テオドーラには中々受け入れられなかった。前世での親のことを覚えているからこそ、本当の家族とは中々思えなかったのだ。

けれど、温かく愛を注いでくれる家族に、テオドーラは次第に第二の人生を受け入れていった。前世のことは過去として割り切ることができたのだ。

と思った矢先に、魔法媒体のスマホ。一体どういう巡り合わせだろうか。


「ファンタジー世界に文明の利器を持ち込む日が来るとは……やっぱり、死に際に思ったことが原因なのかな」


自室で一人、テオドーラは手に入れたばかりの魔法媒体をしげしげと眺めていた。どこからどう見てもスマホ、見紛うことなくスマホ。

そして、見知らぬスマホではない。見覚えのあるスマホだった。

というのも、この機種はテオドーラが前世で購入したスマホなのだ。しかし、使っていたわけではない。購入したその日に、交通事故で死んでしまったのだ。

歩道に突っ込んで来たトラックを見た瞬間、テオドーラの脳裏を過ったのは買ったばかりのスマホのことだった。折角買った新品のスマホ、使うまでは死んでも死に切れない!と思った覚えがあるのだ。

そんなことを今際の際に考えたからだろうか。ファンタジー世界でスマホという、何ともアンバランスな事態を引き起こしてしまった。


「まあいっか!」


第二の人生を受け入れて以降、テオドーラは細かいことをあまり気にしなくなっていた。転生を上回る驚愕の事態なんて、早々巡り合えないだろう。転生に比べれば、魔法媒体がスマホだなんて瑣末な問題だ。

テオドーラは悩みをすっぱりと切り捨て、早速使い方を模索することにした。

画面に並ぶメニューアイコンは、流石に地球のスマホそのままではない。そもそも、この世界には他に携帯電話が存在しないのだから、メールも電話もできないのだ。

代わりに並んでいるアイコンは、事典・名簿・地図・入力・設定・メモ・録音・写真・倉庫。他はアンノウン。アンノウンはいくらタッチしても反応しない。なぜ空欄ではなく不明なのだろうか。

首を傾げながらも、テオドーラは嬉々として各アイコンの機能調査に入った。念願のスマホ。おまけにこれで魔法が使えるというのだから、喜ばない方がおかしい。

その日、テオドーラは夕食に呼ばれるまで、お菓子も食べずにスマホを弄り続けた。


立派な携帯中毒。携帯がないと落ち着かないタイプですね。

スマホで魔法を使う場面は追々。


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