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The Guardian~守り手は異国人~  作者: グリム
第一章・ジパングにて
2/4

二話 守りません勝ったけど……

さぁ、第二話の始まりだ。よってらっしゃい見てらっしゃい!


今回は夢で出てきた少女が出てくるよ!


さぁさぁゆっくりご覧なまし!

 バレルは迷っていた――この小さな男と戦わなければならないのか……?

 自分と頭2つ分以上は違うであろう東洋人の男を見つめ大きく息を吐き……口を開く。


「カナメ・ヒビキ棄権しろ」


 この言葉にヒビキは眉を顰めた。


「なぜ?」

「お前じゃ私には勝てない。諦めろ」


「あんたおもしろいね」


 クスクスと笑うヒビキをバレルは鋭い眼光で睨みつける。

 

 何がおもしろいというのだろう……自分は忠告のつもりで言ったはずだ。それとも彼は自分に勝つことが出来ると思っているのか?大剣を強く握り締めバレルは一振り二振りとヒビキに見せ付けるよう振り回す。


 大剣を振るうたびに砂埃が舞い上がり……会場からは大きなどよめきが起こる……。

 ヒビキも今まで自分が戦ってきた剛剣の男たちの中で一番の手だれだと感じ取っていた。


「本当に逃げなくてもいいのだな?」

「あんたこの”戦場”での決まり知らねぇんだろ?」


 そうバレルは”戦場”の決まりを知らなかった。

 選手控え室に決まりが書いた紙が張ってあるのだが彼は東洋文字が読めなかったのだ。


「この会場から出る手段は一つしかない……勝つときと……死んだときだけだ」

「……なるほど。この国……ジパングの決闘は野蛮だな」


「いや……最高さ……侍の血が滾る……」


 戦闘狂と呼ばれる人種が稀にいる……バレルは自分も戦闘好きではあるが目の前の男のように目を輝かせ少年のような笑顔を浮かべることは出来ないだろう……


「これが……失われた血……侍の血か……」


 バレルがボソっと呟く……ジパングには昔侍と呼ばれる剣士がいたと聞く。その血はすでに途絶えたと聞いていたが……


 大剣を振り上げヒビキの首へと向ける。


「私はバレル! バレル・ロングボトム! 侍よ! 全力でいかせてもらうぞ!」


 不敵な笑みを浮かべヒビキの瞳が爛々と光り輝く…………


「上等!」




 先に動いたのはバレルだった。

 リーチの長さを活かしヒビキの届かない範囲から大剣を振り下ろす。


 ひらりと一撃をかわすと地面が砕け砂埃が舞う……ヒビキは体勢を低くし一気に間合いを詰める……会場からはヒビキがまるで地を張っているのではないかというほど姿勢が低い……。刀はというと抜刀せず今だに腰の刀に手を置いている状態だ。


「くっ! スピードだけは……っ!?」


 バレルが地面に突き刺さった大剣を引き抜き間合いを詰めたヒビキをなぎ払おうとした刹那……姿が消えた。


 勝負が決まったのは一瞬だった……


 背後で煙管を吹かしヒビキはクスクスと笑う。

 その表情が物語っていた「遅すぎる」と。



 バレルは苛立ちを覚えた……その余裕に満ちた表情。戦闘中に煙管を吹かすというその態度に。


「貴様……むぅ!?」


 ヒビキの方を振り返ろうとしたが右脚から地面に崩れる……。



 拍子抜けだ。もっと強いと思っていた。ヒビキは舌打ちをしてバレルに詰め寄っていく。


「何をした!?」

「自分の足を見たらいいんじゃない?」


 バレルの右足は膝から下が無くなっていた。

 会場は割れんばかりの声援と怒声が響き渡る。もちろん怒声を上げているのはバレルに金を賭けた者たちだ。


「観客もあんたを殺せと息巻いてるよ」


 5000人は入れる会場を見渡す……各々が口々に叫ぶ。



「ヒビキー! そいつを殺せー!」


「異国人せっかくてめぇに賭けたのによ! 金返せ!」


「ヒビキこそ最強だー!」



 ヒビキは自分の煙管をバレルの口に咥えさせ……微笑む。


「死ぬ前に一服しとけよ」

「俺はタバコは吸わないんでな……」


「そうかい……残念だ」


 バレルの背後に回り太刀を抜く……。

 

 こんな小国にこれほどの剣の使い手がいるとは……微笑を浮かべたバレルにヒビキは首を傾げる……大概の人間は死ぬとき悲鳴を上げるものだが。

 いや、それだけではない……この男潔すぎる。


「あんた……何で抵抗しねぇ……。まだ左足も両腕もあるだろうが」

「いいんだ目的は達した……」


 バレルはヒビキを見つめ微笑む。


「あん? 何言ってんだ?」

「……お前を強い男と見込んで頼みがある」


 この異国人は何を言いだしたのか……この俺に弱者の頼みを聞けというのか?

 釈然としないがヒビキは「いってみろ」とぶっきらぼうに答えた。


「ありがとう。頼みは……俺の荷物を守って欲しいんだ」


 唖然とした……よほど大事なものを持ってきているのか……そんなことを今日会ったばかりの男に頼むとは……。

 だがこれは金目のものがあれば持っていっても問題はないということだろう。

 満面の笑みを浮かべ「いいぜ」と言うと再び……バレルは「ありがとう」と礼の言葉を口に出した。


 この軽い返事が大きく彼のこの後を変えるとは……ヒビキは予想だにしていなかった。



――会場外


「ヒビキ! ご苦労さん!」


 会場の外へと出たヒビキに貴賓席にいた小太りな男が声を掛ける。


「ああ、サイトウさん。どうも」

「今回もすばらしい大会だった。やっぱりお前はジパング一いや世界一の剣士だよ」


 サイトウと呼ばれた男はゲラゲラと汚い笑い声を上げた。今回は相当儲かったようだ、ずいぶんと機嫌が良い。


 ヒビキはふと気になったことを聞く。


「そういえばあのバレルとかいう男誰の差し金ですかね?」

「ああ、あれか……」


 急に曇った表情を浮かべるとヒビキに耳を貸すよう手招きする。

 生暖かい中年男性の息が耳にかかり斬ってしまおうかと思ったがそこは押さえておいた。


「実はあれを呼んだのは……俺だ」


 それを聞いてしばらくヒビキは黙っていたがサイトウの思惑を察したのか大声で笑った。

 自分が稼ぎたいが為に異国人を連れてきたというわけだ……。


「じゃあ、この試合は八百長ってわけね」

「いや、賭けのことはバレルには伝えていなかったさ」


「あのなぁ……俺が負けてたらどうすんだよ」

「そしたら次からはバレルを使って一儲けするだけさ」


 食えねぇ親父だ……。

 ヒビキはサイトウに背を向け歩き出す……が思い出したように振返る。


「バレルに荷物を預かるように頼まれてんだけど……サイトウさんとこに荷物ある?」


 サイトウはしばらく唸ると……思い出したようにブクブクに膨れた手をパンと一つ打つ。


「ああ、そういえば妙にでかい鞄を持っていた気がするな。大会中は私の屋敷に泊まるよう言ってあったから荷物もあると思うが……」


「それ、後で取りに行ってもいいかい?」


「まぁ、中身を先に私が確認してからならいいぞ」


 やっぱり食えねぇ親父だ……

 もし鞄の中身が金目のものなら絶対に渡さないはずだ……


「……いいぜ。そのかわり空けるとき俺も立ち合わせろ」

「なぜ、私がお前の条件を……っ!?」


 ヒビキの鋭い眼光にサイトウは息を呑む……睨みつけられただけで息苦しくなる……。

 もしも断ったならば一瞬にして斬られる……そんな闘気が感じられた。国最強の剣士を警備兵が止められるはずもない……。


「わかった。いいだろう空ける時は報告する」

「ああ、頼むよ」


 サイトウは馬車に乗り込み屋敷へと帰っていく……。

 あの狸親父のことだ絶対に先に空ける……ヒビキは馬車の後を付けた。

 


――サイトウは怒っていた……


 ヒビキの小僧……この私を脅すとは良い度胸だ。


「バレルの奴がヒビキを殺してくれれば良かったのだ……なのに失敗なんぞしおって」


 まぁ……だが奴が死んだおかげで手に入るものもあるかもしれんがな。

 たるんだ顎を震わせサイトウは下品な笑いを浮かべていた。


 馬車が進むは、貴族たちが住む会場から北の地域。通称、黄金街道。

 立ち並ぶ家々はすべて西洋作り、整えられた庭、咲き誇る花々。この黄金街道を道なりに真っ直ぐ進んでいくと大きな屋敷が見えてくる……それこそがサイトウの屋敷だった。


「奴がジパング一の剣士ならば私はジパング一の金持ちだ」


 敷地に一歩足を踏み入れればメイド・使用人たちが頭を垂れる。

 意気揚々と歩くサイトウを物陰からヒビキが見つめていた。



――バレルが出て行ってどのくらいたっただろう……


 鞄の中に入っていろというのは少々無茶ではないだろうか……

 確かに見つかっては密入国になるかもしれないが他に何か手はないだろうか……たとえば変装するとか親族になりすますとか。


 部屋のドアが開く音がした……きっとバレルだ。勢いよく鞄から飛び出すと中年の小太りな男と目があった。確かこの男はサイトウ。バレルをしつこく国に来るよう誘っていた男だ。



――驚いた……


 まさか奴の鞄から女が飛び出してくるとは思ってもみなかった。サイトウは女を上から下まで舐め回すように見る。

 湖の色のような美しい髪、西洋人特有の堀の深い彫刻のような顔立ちと青い瞳、長身でスレンダーな体つき。

 彼女こそヒビキが夢で見た人物だった。


「誰だ……貴様は! バレルはどうした!」


 彼女の剣幕にサイトウは一瞬たじろいだがここは自分の屋敷だ。誰だ貴様などと言われる筋合いもなければむしろそれは彼のセリフであった。


「き、君こそ何者だ! ここは私の屋敷だぞ!」


 サイトウが強い口調で言うが女は毅然とした態度で強い眼差しを向けている。


「そうか貴殿の屋敷であったか……すまなかった」

「あ、ああ。私こそ大声を出して悪かった……」


 何故自分は謝っているのだろうか……サイトウは頭を掻き首を傾げた。


「私は、アクア・ローレライ。お尋ねしたいのだがバレルを知らぬか?」

「あの男は死んだよ」


 死んだ……? あの無敗を誇る剣闘士が……?

 アクアはガックリと腰を落とし床に座り込んだ。


 この娘……金になるのではないだろうか……。サイトウの金勘定は始まっていた。

 奴隷として売り出すのもいいが……遊郭で働かせてもかなりの金を稼いでくるだろう。

 それに……それになんといっても美しい……。本当に美しい女とは抱かずとも見てるだけで満足するものだ。

 醜い笑みを浮かべながらサイトウはアクアに近ずく。


「お嬢さん。長い間狭い場所に閉じ込められて窮屈だったろう? さぁ、一緒に私の部屋で茶でも飲もうじゃないか」


 アクアの肩に触れようとした瞬間……サイトウの首に冷たい刃が突きつけられた。


「約束破る奴……嫌いだなぁ……」


 ヒビキの鋭い眼光がサイトウを捉える……。

 サイトウは恐怖に声も出ない……この男は平然と人を殺す……その冷酷さが国一と呼ばれる剣士の強さの一つだろう……


「ち、違うんだ。別に約束を破ろうとしたわけじゃない……。ちゃんと鞄があるか確認しようと部屋のドアを開けたら女が飛び出してきて……」


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ……死ぬか?」


 全身から血の気が引いていく……。殺される……。

 サイトウの額からは大量の脂汗が流れ落ちた……。


 その光景をみていたアクアは悟った。この男がバレルを倒したのだと。男の体から滲み出る自信と狂気……間違いない……。


「お前がカナメ・ヒビキだな」

「だったらなん……!?」


 自分が夢でみた少女が目の前にいる……いやだが夢の少女はもっと幼かった。目の前にいる女は明らかに大人の女だ。


「……なんで俺の名前を?」


 夢で女を見たとは言わなかった……。言ったところで頭のおかしい奴と思われるだけだ。


「君の父上から聞いた。自分には息子がいるといずれあなたの助けになると……」

「親父から……? 生きてるのか……」


 5歳の時親父は国から追放された。

 理由は力が目覚めたから……危険だから国から追放された。

 親父は妖怪と人間の子であった。

はい。とりあえず書きました。


見ていただけたらいいなぁ~


明日からは平日。更新できるだろうか……

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