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The Guardian~守り手は異国人~  作者: グリム
第一章・ジパングにて
1/4

一話 守りません勝つまでは

勢いで始めたこの作品……長く書き続けられたらいいな……


ではお楽しみください。

一話

――父上は……王は変わってしまった……。誰か……お願い……助けて……。


 女の声が聞こえるとぼんやりとしか見えていなかった映像が鮮明に映し出される。

 美しい水色の髪をした女性がこちらを見つめ助けを求めていた。幼さが残る顔立ち……まだ10代前半といったところだろう……。少女は美しい純白のドレスを着て月が照らす光のみの緑生い茂った暗い深い森の中を走っている……。

 背後からは黒い塊が少女を迫っていた……。塊が少女のドレスに触れる瞬間……映像が途切れ……真っ暗になった。


「……!? 夢……?」


 見慣れた天井……ここは間違いなく自分の部屋……俺のベットだ。


 一人暮らしの男らしく水差しの置いてある丸い小さいテーブルと裾がはみ出たタンス、ベット意外何もない狭い畳6畳分ほどの部屋。この狭く小汚い部屋は彼が家賃を払い借りている。


 他にも探せば安くていい部屋があるかもしれないが彼はこのボロイ借家が気に入っていた。2階(自分の部屋)から見える景色が最高に綺麗だったからだ。春夏秋冬さまざまな季節の風景、風、匂いがこの部屋からすべて感じられる……。


 ベットから起き上がりしばらく窓を空け先ほどの夢を思い出していた……


「何だったんだ……今の……」


 汗を掻き濡れた額を手で覆う……。どうやら夢を見ていたようだ……だが夢にしてはとても……鮮明にはっきりと覚えている。夢などほとんどみない自分が……あんなにはっきりとした夢を見るだろうか……。そして少女は何から逃げ、何に追われているのか……

 

 茶色と黒の混じった長髪を掻き毟り大きく欠伸をすると水差しを手に取り水を直接口に運ぶ。水を一気に飲み干すとベットに腰を下ろし枕元に置いていた煙管きせるに火を点け一息つく……。


「おい! ヒビキ! 大会始まっちまうぞ!」


 外から自分が呼ばれていることに気付き窓から顔を覗かせると友人のサトルがいた。


「大会……あっ……忘れてた……」


 大会と言えば聞こえはいいが実際には生死を掛けた賭博……。人々が出場者に金銭を掛け殺し合いをさせる……言わば民衆の道楽だ。

 

 ヒビキはその大会の出場者で今日はその大会の決勝戦であった。


「ヒビキ! 早く! まだ間に合うかもしれないぞ!」


 タンスを空け2本の刀と着物を取り出し軋む階段を一気に駆け下りた。一階ではこの家の主が遅めの朝食を取っていたがヒビキに気付き声を掛ける。


「ヒビキ! 今日は決勝戦なんだってな! 頑張れよ!」


 男と話しながら手早く着物を羽織、帯を結ぶ。


「あ、ああ。大家さん。いってくるよ……」


 下駄を履きボロい引き戸を開け玄関を飛び出すと今度は掃除をしていた体格のいい女性に声を掛けられた。

 この女性は先ほどの大家の奥さんだ。


「ヒビキ! 今日は頑張るんだよ! 家賃溜まってるんだからね!」


 満面の笑みで背中を2、3発叩かれ女性よりも小柄なヒビキは少しよろけ……。


「わ、わかってるよ……」


 傾き今にも崩れそうな借家を後にし舗装された路地側に出るとサトルが「早く早く」と急かしている……ヒビキは秋が深まり落ち葉で彩られた道をサトルと共に会場まで駆ける……。

 舗装された道は下駄を履いているヒビキにはとても走りやすかった。心地よい風を受け町並みを眺めながらサトルの後を追っていると突然立ち止まり振り返る。


「ヒビキ! 決勝の相手だけど……」

「わかってるよ」


 決勝の相手は豪傑と呼ばれるバレルと言う異国人らしい。

 何でも国の偉い貴族様が毎回ヒビキが優勝するのでは賭けにならぬと連れて来たそうだ。 決勝まで最低でも5戦は戦わなくてはならない。バレルは決勝までの全ての試合で相手を真っ二つにしていた。


 だが恐れなどはない。


「俺は……勝つ……」


 口元に笑みを浮かべたその表情からは絶対の自信と強者の余裕があった……


――戦場……人々はこの賭け事の場をそう呼んでいた。


 戦場の人々は試合前からすでに興奮状態だった。

 ある者は酒を煽り、またある者は興奮し過ぎて隣の人間に喧嘩を売り始める。


 貴賓席では西洋の服装をし貴金属を身につけた派手な小太りな男がそんな様子をしばらく達観して見つめていたがいつまでも始まらない試合に不満そうな顔をし、隣の執事に声をかけた。


「おい試合が始まるのが遅くないか?」

「どうやらヒビキがまだ来てないようでして……」


「何!? 奴に賭けているというのに……このままでは不戦勝になってしまうぞ」


 

 会場中央では2メートルは超えるであろうヒビキの対戦相手が怒りを露にし地団駄を踏む。

 彼の怒りの原因はヒビキが遅刻している意外にもある。会場の半数以上がヒビキが勝つほうに賭けていたからだ。

 

 自分の国では負け知らずだった。最強のグラディエーターと呼ばれていた。

 そんな自分がこんな小国の剣士に負けるはずがない……そう高をくくっていた……


「負けるはずがない……ふん!」


 自分の身の丈はあろうかという剣を地面に突き刺すと砂埃が舞い上がる……と同時に中央の大きな扉が開いた……。



 会場が静まり返り大きな扉を見つめる……。

 膝より少し長いくらいの赤い着物を羽織口元には煙管、右腰に太刀、左腰に脇差を挿した男が会場の中央まで来ると割れんばかり歓声が起こった。

 会場全体が揺れ……人々が口々に「殺せ!」と叫ぶ……。


 バレルは固まっていた……目の前にいるこの男が自分の対戦相手カナメ・ヒビキなのかと……。

 想像よりも小さい……160センチくらいだろうか……。白く女性のように透通る肌と整った顔立ち、茶色い髪が混ざって入るが東洋人女性特有のキレイな黒くて艶のある長い髪……。だれがこの男を戦士だと思うだろうか……これでは雇い主に昨夜連れて行かれた店で見た遊女と対峙しているのと変わりない……。

 

「さぁ……始めよう」


 ヒビキは逆手のまま両腰の刀に手を置いた……。

良いところで止めるのが自分流というところがありますが……


きりのいいところで終わるのが一番なんだろうなぁ……

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