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異セ界の狐  作者: ままま
第一章 異セ界の狐
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この物語は『おれのかんがえたさいこうのせかい』という厨二病と趣味が炸裂して出来た物です。まず最初に言うべきこととして


(勇者が)ハーレム

(勇者が)チート

主人公は勇者ではなく旅の仲間の一人

どこかで見たこと、聞いたことあるような固有名詞や人物像

突然の固有名詞


があります。固有名詞に関しては物語中に語るようにします、恐らく話の中に出てきた後に内容を語ることになると思いますが…。細けぇこたぁ!の精神が必要な場面が多々在るかもしれません。


異世界という存在がある。それは本当に異なるという意味の異世界なのか、はたまた平行……、可能性の中にあり分岐された異世界なのか、それは定かではない。ただ言えることは、異世界という名前の通り"異なる"世界だ、自分が住んでいない世界、自分が知らない世界、もしかしたら自分が望んだ世界かもしれない。ただ最初に言わなくてはいけないことがあったが、それが"本当"に存在するか否か、ということだ。現に誰も見たこと無いし存在すると証明されたわけでもない。その上誰も見たことがないということも、本当に存在しないと証明出来たものもいない。



「想像出来ることは現実に起きうる。」



と言ったものがいたが……さて、それは"本当"なのだろうか。思えばあながちそれも間違ってはいない。よくある話だが、人々が認識したからこそ存在する、というなんとも不思議な理論……"観念論"がある。石器の槍を手に持ち、オーオーオーオッオッオッ、とそれっぽい歌を歌いながらピョンピョン飛び跳ねる古代の者たちに宇宙の存在を教えたところで理解出来るはずもないだろう。なんせ、古代の者達は宇宙を"観測"したことがないのだから。宇宙の概念を、存在を、真理を、わかるものなどいない、決していない。ならば、当時には宇宙など存在していないことに等しいのでないだろうか。例え存在していようが、存在していて"何らかの何か"に成りうるだろうか。そこで問題なのが、意味のないことは存在する必要が無い、という話に繋がるのだが……、それはまさしく無駄なことであろう。必要あるのか、無いのかは個人が決めることだ。別の誰かが決めることではないし、己が必要と思う存在が別の存在に否定などされて堪るもの、か…。さて、観念論の中でも"観測して存在する"というもの、それは存在論という話だが…イデアやらなんやらと小難しい話である。物事において、全てには本質的イデアが存在し、我々人間が見ている存在はただの影……本質的な物を人間という観測者が見える形で投影されたもの、という。ただ、そんなことを言ってしまえばわかるかもしれないが……本質というのは無限に存在することになるのだ。人間一人を観測するにしても、それが男か女か、どこの出身か、年齢、性格、ありとあらゆる側面を持ち、無論その一つ一つに本質が存在する。あぁ、なんとも無駄なことであろうか、考えれば考えるほどそれは無限大に広がるのだ。まさしく…可能性という石にぶつかった時、枝別れを始める平行世界の根……




――そう異世界のように。






「東の方、本日も晴天なり、ってねぃ。」



時刻は暁、地平線の向こうからまだ見ぬ太陽の光が漏れ始めた時刻である。太陽が昇る東の果てをどこぞの建物の屋根に座りブラブラと足をさせながらゆったりと眺める彼がいた。明るく霞んでいく闇夜を侵食でもするかのように徐々に、次第に、その光景は何度見ようとも"飽きる"ことなど決してないだろう。彼はその日、特にご機嫌だった。人間には決して存在しない"耳"をピクピク動かし、まるで主人を出むかえる犬のように"尻尾"をフサフサ…、まぁ普通の人間じゃないことは確かである。



「ふんふーん、ふふん。」



愉快そうに鼻歌を歌いながら、ゴソゴソと懐から何かを取り出す。細長く黄色、彼は器用にもその何かの黄色い皮を放射線状に剥いて露わになった実を一口かじる。うまい、と果実をモニョモニョ言わせながら食べるのであった。



「んー、なんていったかなぁ、この南の果実は…、ぜってぇ果物じゃねーよコレ。」



果物と言えば何を思い出すだろうか。赤くたわわに実った悪魔の果実、林檎か。はたまた梨、葡萄かもしれない。しかし総じてそれらには統一性があるのはわかるだろう。みずみずしさ、果実としての甘い汁、全部がそうだ。しかしその黄色い果実にはまったく無い。むしろ喉が渇く勢いだと彼は、美味しいという感情と同様にも思う。噛めば噛むほど、というか噛む必要がないほど"ネッチョリモチョモチョ"しているその果実は……世の中不思議なものだなぁ、と彼は思う。太陽が地平線の彼方から出てくるのをボンヤリと眺め、太陽の光が細長い果物を照らす。



「ごちそーさま!っと。んー、いらね。」



些か満足はしたが、残った皮が邪魔である。彼はだらしなく左手より垂れ下がる黄色い皮を見ては、そう思いそのままポイッと放り投げた。下がどうなろうが、まぁ気にすることもないだろう。食べる物も食べ終え、特にすることがなくなった彼は背を伸ばす。コキンと鳴らし、その心地よさの余韻に浸る。一息終えた後のコレはいつの時代でも格別なことなのであろう。



カラァ―――………‥‥‥・ ・ ――ン



カラァ―――………‥‥‥・ ・ ――ン



カラァ―――………‥‥‥・ ・ ――ン




「あらま、最近お日さんが速いねぃ。」



彼が辺りを見下ろした。三百六十度街である。建物が並び、早朝とはいえ店を構えるものや速く動こうとする冒険者達が疎らに歩き回る様子がわかるが…まだ早朝だ。人が行動するにはまだ早かった。だが、本日もその"大鐘楼"は響き渡る。座っていた彼が振り向くと、後方には城があった。優雅讃美を極める匠の造形でありながら、いざ戦闘が起こると無類の頑丈さを誇る要塞、城の最上部につけられた白銀に輝く大鐘楼が太陽の光を反射し始めていた。彼が微かに残る鐘の音を楽しんでいる合間に、街の通りに次第に人々の姿が現れる。普通の住民のように、何の変哲も無い服装をするものもいれば、魔物を祓って手に入れた素材を使った軽そうな鎧をつけた戦士、ローブを被った魔導師もいれば、なんと全身毛むくじゃらの人もいた。



「ま、行きますかねぃ、っと。」



ピョンと彼は、座っていた屋根から降りる。飛び降りた先にもまた建物の屋根が見えるが、彼は着地の音を少しも立てずに屋根に着地し、勢いをそのままに駆けだした。屋根から屋根へと身を移し、今の彼には遮る存在は無い。タンッ、と大きく跳躍したかと思えば、彼が出た先には大きな通りが見えた。まだご機嫌が良いのか、金色に輝く尻尾を忙しく動かしながら、財布の中身を確認し彼は歩き出した。




『中心国家ミドルアーク』




彼がゆっくりと散策しているころには既に太陽も大きく自己主張を始め、通りには様々な人々で賑わっていた。料理の材料でも買いに来たのか、主婦らしき女性が店主と色々言い合い、冒険者達が互いに己が仕入れた情報を交換し合う小さな井戸端会議。子供達が、見ているだけで疲れるぐらいの元気っぷりを見せ付けながら走り去る姿も、ガタイの良い男達が歩き回る姿もいつも通りだ。彼が歩く通りは、その都市国家最大の通りである。さすがと言うべきか、様々な国を探してもここまで広く人の多い通りはいないだろう。フリフリ尻尾を揺らしながら通りの真ん中を歩く彼だが、特にその日も何事も無く終わるのだろう、そう思いながら歩いていたせいか、ざわざわ、と不自然にも人々が集まっている広場には少しばかり驚くものがあった。なんだろう、と彼が歩み寄る、が…人が多くて何がなんだかよくわかない。頭の上方についた金毛がはえた三角形の耳を澄ませば、どうにも国からの知らせが掲示板に張り付けられたらしい。



「見えねぇ、見えないよー!」



ピョンピョン跳びはねるが、彼の身長は大の大人の半分程度。ぶっちゃけ子供サイズの彼だったのだ。その大の大人が寄ってたかった我こそはと見ようとするその"お知らせ"が見えるわけもなく、ただのイラツキを積もらせるだけに終わる。埒が空かない、と彼は速攻に見ることを諦め――もう既にどうでもよくなってきているが――とっくにその"お知らせ"を見たと思われる集団に素直に聞くことにした。



「ねね、おねーさん達ちょっといい?」


「あらぼーや、こんな朝早くからお誘い?ぼーや可愛いからなんでも言っていいわよ、フフ。」


「んー?」


「……なんでもないわ、どうしたの?」



彼はちょっと言っていることワカンナイナー、ばかりにコテンと頭を傾げた。彼が聞いた集団の一番偉そうな、というか一番強そうな女性に聞いたのだが、ちょっと勘違いが起きたらしい。周りを見渡せば、みんな女性。中にはウサギの耳のように頭にピンッと細長い耳を生やした者もいる。女性達は彼の姿を見ては、キャーキャー言い、コテンと首をかかげればまたキャーキャー言う。なんというか、彼はわかると思うが一応、性別上は男である。だがまだ少年らしく中性的な顔である上、妙に保護心に訴えかけるフルフルと揺れる尻尾、あぁコレはダメだな、と言わずにも伝わるだろう。ゴホン、と咳払いをし仕切り直す女性に彼は聞いた。



「あれって何の集まりなの?」


「あー、あれね、…‥はー、まさか自分がこんな日に立ち会うとは思いもしなかったけど…‥、」



――勇者、だってさ。



「…勇者?」



そそ、と女性は答える。内面では、再びコテンと首をかかげた彼に顔を赤面しながらも耐える女性であったが、さすがは歴戦の冒険者なのだろう、見れば平常運転にしか見えない。竜の牙で作られた首飾りに身につけ、背負われた大剣は一目見るだけで極上品だとわかるほどのオーラを出していた、が今はどうでもいいだろう。



「前からもう500年らしいさ、それでね、なんでも勇者のお供を募集しているのさ。残念だけど私は無理だねー、クエストもあるし。」


「そっか、ありがと!おねーさん大好き!」


「え、ちょ!はわわわ!!」



満面の笑みで女性に抱きつく彼である、なんかもう色々と終わってるような気がしないでもない。女性は背後から消えてくる「ずるい」だの「次私ね」だの、片っ端から無視し色々と楽しむことにしたのだが、さぁ行こう、と思い立てば彼は女性から身を離す。内心では残念極まりないと思うものの、クールを目標とする女性率いる"パーティ"だ、そこは淑女らしく我慢するという。



「ばいばーい、またねー、おねーさーん。」


「またねーぼーや、いつでも待ってるわ~。」



手を振りながら去っていく彼を見ながら、彼氏欲しい、とブツブツ言い出した女性を慰めるパーティの一員の女性達。なんとも不思議な世の中である。さて、彼のほうから見ると、常に感じていた"危険"な視線から即刻にでも逃げ出したかったのである、まぁすぐに逃げることが出来、何事も無かったので問題は無かったという。



「ククク、マジちょれーなぁおい!俺様ってばマジ罪造りだねん。」



そして、これは言う必要も無いだろうが、女性に抱きついたときにシッポリと女性の豊満な胸と尻の触り心地を楽しんでいたのである。計画通り!とどこかの新世界の神のような顔をしていた。ハッハッハ、と高笑いをしながら彼は人が通らないような裏通りを一人で歩いていた。んー、もうちょっと揉んでおけば、と一人でブツブツ言うものの誰一人ともそれを聞くものはいない。



「げにやげに勇者ねぃ、…まぁ関わることもないか。」



やれやれ、と彼は顎に当てたまま歩くの止めない。"勇者"と言われてもなかなかパッとしない、というのが彼の正直な心情である。例え伝統だとしてもアレからもう5000年も立つのだ、と彼は思う。未だに続く、偉い人から言わせれば"古き良き習慣"を続けるのもどのようなものか、偉い人の考えが訳解らず、彼はため息を吐かずにはいられなかった。なんせ…



――もう魔王は存在しないのだ。



5000年前、最初の勇者が魔王を打ち倒し、その後魔王は一回も復活どころかその兆しすら見せたことがない。例え500年に一度、勇者の素質を持つものを半ば"強制的"に召喚し、そしてこの"幻想世界"各地に巡礼させる意味がわからない、と彼は思う。偉い人が言うには、国家間の連携の向上、そして二言目には復活するかもしれない魔王への対策と民衆の意識。偉い人にはわかり、自分にはわからないことだろうと彼は無理矢理に自分を納得させた。



「フン、呼び出される方は堪ったもんじゃねーや。」



と、彼は文句を言うがそんな状況は一向に変わらない。なぜならば彼のこういう意見はその世界では少数派に当たるからだ。というのも5000年の出来事以後"偉い人"達は何を考えたのか、そういう教育を施すようになった。5000年前と比べ技術――現代で言うと科学技術を指す――は余り変わらないものの…、その分と言うべきか、精度の高い教育環境が整うようになり精神的な成長に関しては大いに進歩した。冒険者を支援するいわゆる"ギルド"が発足し冒険者達の能力も上昇、中には『職業クラス』別の教育機関まであるほどだ。その中において、彼らは決まり文句のようにこう言う、勇者に選ばれるのは名誉なこと、5000年の伝統、と。そういうわけで彼のような思考は特に少数派になったわけである。



「(実害があるわけじゃねーけど、後継以外の"神具"が目覚めたんだ……、きな臭いったらありゃしないもんさね。)」



かつて勇者とその仲間達9人が魔王との決戦において使用した強力無比な武具"神具"は、武器として用いれば万の軍勢を打ち払い、防具として用いれば万の災害から身を守ると言われる最高峰の存在である。5000年たった現在においてはその半分ほどが行方不明になっているが……、言い換えればもう半分確実に存在する。勇者が巡礼する場所に奉られているのもあれば、神殿や遺跡の奥深くに封印してあるものもあるというが……。



「勇者ってばマジ面倒くせぇ。」



彼は右手で腰に括り付けられた小さな白銀色に輝く金槌を撫で、左手で紫色の瓢箪を呷る。頭を冷やすようにコクリと一口水を飲めば、彼は頭を振って今までの思考を無かったことにした。やれやれ、と彼は暗い通路を歩き出す。先程までとはうってかわってご機嫌に振られていた尻尾は、力なく垂れ下がっているだけであった。










運命の歯車が回り始めた、とは実に言い難いものだ。あえて言うならば、賽は振られた、と言ったほうがいいかもしれない。そもそも運命とは存在しないと断言しよう。これは運命だ、とよく物語で語られるが……実にはそれは滑稽だ。もっともそれを否定する気はないが些か烏滸がましいのではないだろうか。たかだが運命ごときで、自らが歩いた道が否定されてたまるもの、か……。運命を信じぬ者に運命を説いた所で何の価値観の変化も変わらない。運命とは、初めてそれを「あぁ、これは運命だ」と結論づけたとき、人々がそういう存在として認識して初めて運命は存在する、まさしく観念論の話だ。運命とは実に不明確で、……甘美溢れるもったいない言葉である。



「ここどこ?……ぜってぇ日本じゃ……現実でもねーよ。」


「ふぇ?……ここはミドルアークの城なのですよ?もしかして知らないのですか?」



――勇者様?





『勇者ガ異セ界ニログインシマシタ』

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