第二話「ノヴァ」
「格闘ゲーム「ノヴァ」
今、格ゲー界を賑わせている大人気対戦格闘ゲームの一つだ」
「PC、コンシューマー、アーケード
様々な媒体で展開されている」
「1対1の2D格闘ゲームで
どちらかのHPゲージを削れば勝負が決まる
攻撃、ガード、掴み、投げ、
コマンド入力で技を繋げればコンボが出せる
オーソドックスなスタイルの格闘ゲームだ」
「ユーザー名を作れば戦闘開始
僕はコウ9(ナイン)という名前にした
特に由来はないがなんとなくかっこいいから」
「このゲームはキャラクリにも対応している
自分だけのオリジナルキャラクターを作成することが可能だ」
「僕はデフォルトのキャラを使用している
キャラクリが下手くそでゴミみたいなキャラばかり出来上がるから……」
「オンラインに繋げば世界中のプレイヤーと対戦が可能だ、このゲームにはランクというものが存在し、それを上げれば強者として認められ更なる高みを目指すことができる」
「オンラインは連動型、ゲーム画面には各媒体のアイコンが表示される
プレイヤーがどの"ハード"でプレイしてるのかがわかるという仕組みだ」
「僕はアーケードを利用している」
「父と母が厳格で、大のゲーム嫌いだから
外でこっそり遊ぶしかプレイする機会がないからだ」
「オンラインには対戦の他に観戦と挑戦者というモードが存在する」
「観戦モードはプレイヤー達の対戦を見ることができるというモードで、戦いの参考として主に利用されている」
「挑戦者モードは、低ランクのプレイヤーが高ランクに挑めるというモードだ」
「高ランクに勝つといろんな順序をすっ飛ばして一気に高ランクに上がることができる、僕は主に挑戦者モードをプレイしている」
「通常、ランクを上げるためには
同ランクの人間と何回か対戦して
経験値を伸ばす必要があるが
このモードではそれらの順序を一気に飛ばすことができるんだ」
「観戦モードにはチャット機能が搭載されている
相手の戦いを見ながら世界中のプレイヤー達と
コミュニケーションが取れるという仕様だ」
「つまんな」
「弱すぎ!!」
「新手の荒らしだろこれ」
「こいつ出禁にしろよ」
「コミュニケーションツールとしては
非常に快適だが、一部ではプレイヤー達に優劣をつけて批評する厄介なユーザーもいる、特に挑戦者モードではそれが顕著だ」
「またこいつかよ…」
「もういいよ」
「つまんね」
「僕はただ純粋にランクを上げたくて挑戦してるだけなのに、周りの馬鹿どもは勝手に採点して悪口を書き込んで来る」
少年の額には青筋が立っていた
「コウタくん今日もかっこいい!!」
「コウタくん相変わらずイケメンだね!!」
「声が素敵!!」
「筋肉質でなんでもできてコウタくんって他の男子と全然違う!!」
「ピアノ上手だね!!」
「他とは違うメロディに聞こえるよ、すごい!!コウタくん!!」
「ソが弾けるなんてすごいコウタくん!!」
「そうだよソが弾けるなんて!!」
「他とは違うメロディに聞こえてくるよ!!」
「ソがすごい!!」
ピアノを弾く少年の周りには女子達がキャッキャと群がっていた
「ソなんて誰でも弾けるだろ!!」
女子達の反応に不満を持った男子はソを力強く叩いた
「相変わらずイケメンだよねコウタくんは…マジ彼氏にしたいわ」
「ムリムリ、コウタくん鉄壁だから
フラれた女子は数知れず」
傍では黒ギャル、白ギャル、小春
の女子3人組が仲良くやり取りを交わしていた
「小春どうだったん??
告ったんでしょ?」
「うん…でも…」
「あっちゃー玉砕かぁ
まぁそりゃそうだよ」
「クラスの男子に人気だった山中さんもフラれちゃったんだもん、私らみたいな地味子には到底叶わぬ恋だ」
黒ギャルがため息をこぼすと
小春もうなだれるように肩を落とした
「そういや小春、あの件どうなったの?」
「あの件?」
「あんた地味男に迫られたんでしょ?」
「あぁ、キッパリ断ったよキモいから
ちょっと優しくしただけで勘違いしてさ…」
「うわきっつー、いい加減自覚したらいいのにね
地味な男を好きになる女子なんて世界中どこにも存在しないのに」
呆れたように黒ギャルは漏らした
「コウタくんってどう言う女子が好みなのかな?というか女子を意識したことなんてあるのかな?」
「このままだとマチアプの女みたいな末路を辿りそうで怖いよ」
その言葉を聞いて小春は腕に顔を埋め、不安そうな顔をした
「あーあー
コウタくんを彼氏にしたいなぁ
カレたんに相談して無理やりくっつけてもらおうかなぁ」
「カレたん?」
「カレカレだよ知らないの?女の味方」
「あぁ、あの胡散臭い暴露系配信者のこと?」
「有る事無い事振り撒いて
コウタくんの弱みを作って
それを脅しに恋を実らせちゃおっかなーって」
「あんたも相談する?」
「私はパス、正攻法で行きたいから」
「ウィッシュ!!」
「なにそれ」
「カレカレの決めポーズ
十字にクロスしたマスクを鼻につけてるの
だから…ウィッシュ!!」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
その後も女子3人はゲラゲラと盛り上がり
教室は明るい声で賑わったーーー
「ただいま」
「おかえり、遅かったじゃないか
どこをほっつき歩いていたんだ?」
「……」
家に戻ったコウタは父に寄り道したことを詰められていた
「こんなに遅いと父さんと母さんが心配するじゃないか」
「ごめんなさい」
「まさか、ゲームでもしてたんじゃないだろうな?」
「勉強だよ父さん」
「そうか、ならいい
もしゲームだったら会社を訴えているところだ
うちの息子をたぶらかすなとな」
「……」
ぎゅっと自身のズボンを掴むコウタ
そこへ母親がスマホを片手に部屋に入ってきた
「あなた、ゲーム回収が済んだわ
あら、コウタじゃないの
おかえり」
「どうだった?」
父親は険しい顔で母親をじっと見た
「各店舗に置いてあるゲーム機と在庫の回収に成功したわ、これからプレス機にかけるところよ」
「よくやった、さすが私の派遣したチームだ」
父親はメガネをきらりと光らせた
「ゲーム会社がまた新しいゲームを開発してるそうじゃないか、性懲りも無く…、p○4だのSw○○chだの、訳のわからんものを作ってこの世界を混沌に引き摺り込もうとしている…」
「娯楽なんて音楽と名画、美術
だけで十分なのにね」
「ゲームは人間をダメにする
この世にあってはならないものだ」
「幸いにも転売ヤーと呼ばれるもの達が最近ゲームを買い漁ってるようだ、彼らから取り寄せることで容易にゲームを破壊することが可能だ」
「なんとしてもこの世からゲームを無くし
世界を平和に導くんだ」
「コウタ、あなたも寄り道ばかりせず
早く帰ってピアノに集中しなさい
私は不安で仕方ないわ」
コウタは悲しそうに顔を下に向けた
「はい…」
うつむくコウタの肩に母親は優しく手を置いた
「コウタ、私達は別に意地悪で厳しくしてるわけじゃないのよ、あなたにはまともに育ってほしいの」
「わかってるよ母さん」
「コウタ…」
母親はコウタを強く抱きしめた
「愛してるわ、コウタ…」
「…僕もだよ」
部屋を出るとコウタは歩く速度を徐々に上げて
自室の扉を開け、勢いよく閉めると、机に向かって拳を強く叩きつけた
「わからない、わからない、わからない、わからない……!!!!」
「父さん達の言ってることがまるで理解できない……!!!!」
コウタは血走った目をして頭を抱えた
「まともってなんだ!?訴えるってなんだ!?
ゲームを手当たり次第回収して破壊する行為がまともなのか…!?」
「クラスのみんなは父さん達とは正反対のことをしている…!!クラスのみんながおかしいのか…!?わからない…どちらが正しいのか…!!!!」
コウタはしばらく混乱していると
脳裏に格闘ゲーム「ノヴァ」が浮かんだ
「そうだ、考えるな、こう言う時こそ心を落ち着かせるんだ、僕が今やるべきことは
ピアノでも勉強でも読書でもないーーー
ノヴァだ」
コウタは冷静さを取り戻し、お風呂に入って夕食を済ませて歯を磨いたあとベッドに潜り、ぐっすりと眠り、そして夜が明けたーーー。




