心残り
「あのな?ワシが心残りなのは、ドラゴンクエスト3ってゲームやねん」
美紀の目が輝き、声が思わず弾む。
「あっ!?それは私も知ってるゲーム!ねぇ、どんなパーティー編成でクリアしたの?」
「違うねん。聞いてぇや。アレ、陸を移動して魔王を倒す旅に出るゲームなんやけど、途中で船が手に入るんよ。それで船が手に入ったら移動出来る場所滅茶苦茶増えるようになるねん」
美紀は目を輝かせ、前のめりになる。
「うんうん!私もやった事はないけど、そういうストーリーって知ってるよ」
「で、船が手に入ったら、何か7つのオーブを集めろみたいな話になるんよ。多分、その7つ集めたら魔王と戦えるんやったかな?」
「うん!そういうストーリーだと思う!それで、魔王と戦ったの?」
「いや。ワシ、3つぐらい集めた所でセーブデータ消えてもてん。だからクリアしてないねん」
美紀は申し訳なさそうな表情で、声を落とす。
「あ、ごめんなさい……セーブデータ消えるの、すっごくショックだよね……」
「それが成仏出来ない理由やと思うねん。だからもし良かったら、ドラゴンクエスト3買って、主人公じゃなくてもいいわ。仲間にダイゴって奴作ってな?魔王倒して欲しいんよ」
美紀は困惑しながらも、幽霊の真剣さに少し心を動かされる。
「え、えっと……私、ゲーム下手だし……でも、そんな理由だったなんて……ちょっとだけなら、挑戦してみてもいいかも……」
「RPGやから簡単やろ!おっ、託せたからこれ成仏出来るんちゃうか!?」
幽霊の体が薄く揺らぎ、徐々に消えていく。声が遠ざかる。
「長々話聞いてくれてありがとうな〜!ダイゴやで〜!ダ〜イ〜ゴ」
美紀は慌てて手を伸ばし、消えゆく幽霊に向かって叫ぶ。
「え、えええ!?ちょ、ちょっと待って!」
だが、部屋は再び静寂に包まれる。鏡には、もう何も映っていない。美紀は呆然と立ち尽くす。
ーー数週間後。美紀はドラゴンクエスト3のソフトを手に持つ。バイト代をはたいて、中古ゲーム店で購入したのだ。テレビ画面の前に座り、コントローラーを握りしめる。
「はぁ……本当に買っちゃった……でも、約束だもんね……」
ゲームのタイトル画面が点灯する。主人公の設定を終え、仲間の名前を入力する場面になる。美紀は少し緊張しながら、呟く。
「えっと……ダイゴ……って、どんなキャラクターにしようかな……」




