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7.子爵令嬢side

 バカだバカだと思ってはいたけど……ここまで大バカだとは思わなかった。

 庶子の男爵令嬢の傍でまるで犬のように尻尾をふるリューク・マノン。彼は魔法道具専門店の商会の息子で、私の幼馴染兼婚約者だった。

 

 そう、この私、アメリア・ランカスター子爵令嬢のね。


 今は子爵家の令嬢だけど、私の父は元々子爵家を継ぐ立場にはいなかった。三男坊の末っ子として生まれた父は兄二人の相次ぐ不幸によってその座に就いた。普通の男なら兄の死を嘆くよりも自身の出世を喜ぶだろうけど私の父はそうでは無かった。元々、お気楽な立場を満喫していた処があったからよけいだろう。兄達とも良好な関係だったみたいだし、貴族としては珍しい恋愛結婚をしたのもそのせいかもしれない。


 私の婚約だって親友の息子だからという理由もあるけど、恐らく家格の低い家柄の方が、私が気後れしないと見込んでの事だったのだろう。

 気心の知れた幼馴染の男の子。

 平民出身だけれどそこそこ裕福で、気立ての良い優しい少年。

 親友の息子で昔からよく知っている相手なら娘を任せられる。

 決して、私を蔑ろにしないと踏んだのだろう。


『リュークはいいの?私と結婚して』


『もちろん』


『嫌じゃない?』


『なんで?』


『だって……私一人っ子じゃない。だから結婚するならリュークはうちの家に婿に来てもらわないといけなくなるし……』


『え?別に構わないよ』


『本当?商会の事もあるでしょう?』


『それこそ全然だよ。店は兄さんが継ぐし、弟もいるし。僕が婿入りしたって影響はないさ。それよりも貴族社会に進出できるって何だかワクワクするしさ』


 楽天的なリュークは貴族の事を何も知らない。

 彼の実家である商会はそこそこ大きいし、顧客の中には貴族もいる。

 リュークは店に来る貴族を基準に考えているのかもしれない。でも、彼の店に来る貴族は男爵家や子爵家が大半をしめている。伯爵家や侯爵家の貴族がわざわざ来る事は無いだろう。

 だから彼は知らない。

 貴族の世界はとても狭い。けれど上にいけばいくほど怖い。


 教えるべきだったのかもしれない。


 学園に入ってリュークは変わった。

 生徒会の書記になり、ライト男爵令嬢と出会ってから変わってしまった。


 






『クロエは面白い子なんだ』


『元が庶民だからかな?話があうし気遣わなくていいから楽だよ』


『アメリアとも仲良くして欲しいんだ』

 


 バカなのかと思ったわ。

 よくもまぁ、私にライト男爵令嬢と仲良くして欲しいなんて言えたものだわ。彼女と仲良くなんて無理に決まっているでしょ!寧ろ、話したくもないわ!!


 何処の世界に自分の婚約者を誑かす女と仲良くなりたいと願う女がいるの!?

 ましてや、他の婚約者持ちの男子生徒に秋波を送る女よ?

 彼女が仲良くしているメンバーが()()()()()()()だとリュークは理解しているのかしら?

 自分が仲良しグループに入っているのは生徒会メンバーだからとでも勘違いしてるんじゃない?そんな筈ないでしょう!あなたは都合の良い金満よ!!


 周りをもっとよく観なさい!

 私や高位貴族の令嬢だけじゃないでしょう。ライト男爵令嬢が女子にハブられていたのは虐めでも何でもないわ。貴族令嬢として予防線を張っただけのこと。自分の婚約者がクモの巣に引きずり込まれると分かっていて仲良くする女はいないわ!!


 ヴァレリー公爵はこの数年で恐ろしいほど力を付けている。公爵が率いる派閥は過去最大の権力を有している。

 王太子殿下がそれを苦々しく見ている事は学園に入ってから知ったわ。公爵家を疎ましく思うあまりブランシュ様を排除する計画なのでしょう。国王陛下とヴァレリー公爵が不在の今を狙ったとしか思えない。


 リューク……。

 王家の税収が増えたのはヴァレリー公爵家あってのもの。

 あなたの実家であるマノン商会を始めとする商人たちが自由に商売ができるのはヴァレリー公爵家あってのもの。

 この国の経済を活性化させたのはヴァレリー公爵家あってのもの。


 それを忘れたというの?


 恩を仇で返す人間を例え王家といえども許されるはずがない。

 これを認めると言う事は国そのものが信頼に値しないとみなされるのよ。それは、この件に加担したリューク、あなたにも責めは有るの。マノン商会がこれまで通りに商売ができると思っているの?


 もし本気で思っているなら私はあなたの人間性を疑うわ。


 


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