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3.側妃2

 アクア王国にきて早くも一ヶ月が経ちました。

 この国の方々は私達一行を、それは丁寧に接し、何処へ行っても歓迎してくださいます。


 ただ一人を除いては――


 


「偉そうに。ここはアクア王国よ。帝国の犬が勝手に動き回るなんて」


「ミレイ様!失礼ですぞ!」


「あら?事実じゃない。皆だって本当はそう思ってるんでしょ?」


「なんてことを!!」


「護衛や使用人をぞろぞろ引き連れちゃってさぁ。もしかして、その女に媚び売れば帝国が便宜でも図ってくれるっていうの?バッカじゃない!そんなことしたって意味ないわよ!」


「ミレイ様!いい加減になさってください!!帝国の公爵令嬢に失礼です!!それに我が国の貴族達にも!!!」


「なによ、貴方までその女の肩を持つわけ!?……あ~あ、やっぱりこの高位貴族は駄目ね。腐った連中ばっかりだもの」


「なんと無礼なっ!!」


 とまあ、こんな具合で何故かミレイ側妃は事あるごとに突っかかってきます。

 私の思い過ごしでしょうか?

 どうも彼女は私に対して敵意を抱いているような……。

 しかも、それを隠そうともしていません。

 彼女から嫌われるようなことをした覚えはないのですが……。

 一体どうしてなのでしょう?


「とにかく!私はその女を絶対に認めないわ!!」


 言うだけ言ってミレイ側妃は踵を返して去っていきました。


「申し訳ありません!」


「ブランシュ様にはご不快な思いをさせてしまいました。お許しください」


「いいえ。お気になさらないで下さい」


 慌てて謝ってくる方々に笑顔で返しました。

 こちらが憐れに思えるほど頭を下げて謝罪を繰り返されるのです。不本意ですが、()()()()()許さない訳には参りません。まあ、他国の要人に対する態度とは到底思えない接し方をするのが自国の王太子の妃なのですから、彼らの大変さは嫌でも理解できます。尻拭いしきれない感がにじみ出ているといいますか。きっと私以外にもやらかしている筈です。


「このような事で両国の間に亀裂が入ってしまうのは、私としても大変心苦しい限りです。ミレイ妃の件は、このブランシュの胸に納めさせていただきますわ」


 ああも突っかかられている以上、既に帝国に話はいってます。当たり前ですが。ただ、この件に関しては私に一任するという遠回しな報告を大使を通じて受け取っていますので有効活用させていただきましょう。


 

「あ、ありがとうございます」


「ブランシュ様の御優しさに感謝致します」


 深々と頭を下げられました。

 いえいえ、これも仕事のうちですからお気になさらず。

 この国は小国ではありますが、帝国はアクア王国との友好関係を望んでおりますので。

 私も帝国貴族となった以上は帝国の国益を何よりも優先しなければなりません。

 





 

 

 コンコン。

 ノックをして部屋に入ってきたのは帝国大使でした。

 

「失礼いたします。ブランシュ様」


「どうかなさいましたか?」


「はい。実は――――」


 大使は静かに口を開きました。

 その内容を聞いて思わず笑ってしまいました。

 これはまた面白いことになりそうです。

 実に()()()()()なさいます。

 アクア王国の重鎮たちは王太子殿下とその側妃に随分と手を焼いているようですわね。



 

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