きっかけ
「世界が終わる」
ニュースにそれが流れた日、大学生のTに超能力が宿った。千里眼、透視、テレポートなど、様々な能力だった。Tは自分が世界の救世主であるのだと思った。Tはその能力のことをツイッターで拡散し、世界中の人々の希望となった。
Tは、未来予知をした。隕石が落ちる未来が見えた。自分はそれを念力ではじき返していた。だがその後に世界中で感染症が流行り、人々がどんどん死んでいく未来を見た。自分はそれを千里眼と透視を使い、感染している人を見分け、完全にウイルスを消滅させていた。その後に、世界中の国々の統率がうまくいかなくなり、大きな戦争が各地で起きる未来を見た。自分は武器を全て破壊し、武器工場を破壊し、それでも争いを続けるものの拳を念力でねじり取り治療した。その後も何度も何度も世界が滅ぶ危機に陥り、何度も何度も自分はそれを救っていた。Tは常に必死でいた。がむしゃらに考える暇もなく全力で世界を救おうとしていた。
Tは未来予知をやめた。
「どれだけ、頑張っても世界は滅ぼうとする。どれだけ頑張っても世界を救い続けても、終わらない。たった一人で救い続けて、自分は世界を救い終わることはできなくて、疲れてた。こんなのは嫌だ。これじゃ自分が報われない。そもそも、世界が終わりたがっているのならそれでいいんじゃないか?きっとこれから、今までのような生活には戻れない。地獄が続いてそれを止めようとし続けるだけだ。そもそも救って何になる。救っても救っても意味がないじゃないか。そもそもこの世界に意味があるのか?自分が望むような世界だったか?そもそも自分が生きていることに意味があるか?生きていて意味があるか?その意味はどういう視点での意味だ?」Tは考え続けた。もう世界を救うことはどうでもよくなって、とにかく考えていた。納得のいく答えが欲しくなっていた。長い時間ずっと考え続けていた。
ガバッ
目が覚めた。頭がいたい。枕元の時計は7時30分を指している。もう出かける時間だが、Tは布団から出てまっすぐ窓の方へ歩いて行った。