第四章〜命の保証
ソフィア=メフィアが次に目醒めたのは、どのくらい経ってからだったろうか。 ソフィア=メフィアが少しく空腹を感じ始めた頃だったから、半日近く経っていたかもしれない。 前回、眠りに就いてから、眠っている間に拐われるまでの間にどれくらいの時間が経っていたかもわからないのだから、空腹の度合いで時間を推測するのにも無理があるような気もしたけれど。 やはり、おなかのすき具合では、現在の時間などわかるハズもなかった。そして、邸内の雰囲気を感じ取ってみても、時刻の感覚はるでなかった。時刻を推し量る指標はまるでないのだ。 室内は完全に静寂が支配していたし、瞼越しにも陽の光などは入ってきてないようであった。きっと、この部屋は屋外に面しておらず、日光は差し込まないのだろうと思われた。 気配だけで判断するのなら、今現在では室内には、ソフィア=メフィア以外にはひとはおらず、永い眠りに就いていると思われている彼女は、放置されている扱いのようであった。 その事実は、ソフィア=メフィアを安心させるのと同時に、不安にもさせた。何処ともしれぬ邸宅に監禁され、しかも辺りにひと気もなくなったとあれば、それは不安にもなろう。眠ったフリをするのは段々(だんだん)、上達していった。 眼を瞑って横たわっているのにあまり苦痛を感じなくなってきたのだ。なにも出来ない不安な時間がただ過ぎるというのにも、慣れっこになってきたのだ。 背中が痛くなってきたらさり気なく寝返りをうつことも覚えた。リアリティを出すために、軽く寝言を呟くという芸当も身につけた。 周囲にはひとの気配も物音もなかったけれど、そうやって彼女は眠るフリを続けていこうと誓っていた。 そうしなければ、万が一、部屋の何処かから監視されていたという場合に、命の保証がないからだ。ソフィア=メフィアは、とにかく生きたかった。生きておうちに帰りたかったのだ。