プロローグ
すべての物語の始まり。
ソフィア=メフィアは、目を醒ました。ふいに、眠り続けるのが許されない程の違和感を覚えたからだった。
一体、どのくらいの時間眠ってしまったのだろう、何故眠ってしまったのだろう、ここは何処なのだろう・・・、ソフィア=メフィアには、なにひとつわかりはしなかった。 ただひとつ、わかるのは決して瞼を開いてはならないということだけ。このまま眠り続けているフリをしなければならないということ。 何故、そんなふうに思うのかはわからない。ただ、どういうわけか、本能的にそうしなければならないと強く感じるのだ。状況がまったくわからずも、瞼を開いてしまっては、ひょっとしたら自らの命に危険が及ぶのだと確信していたのだ。
ソフィア=メフィアは、目を醒まして、すぐに周囲の様子がおかしいことに気づいていた。今までに感じたことのないような違和感を感じたのだ。 彼女は、自らの身體が、仰向けに横たえられているのを感じていた。背中には柔らかに体重を包みこんでくれる感触があった。布団のようだった。 何らかの薬物による目眩なのか、或いはそれは錯覚で、実際地震でも起きているのか、身體全体が、ゆらゆらとゆっくり揺すぶられているような感覚があった。 ソフィア=メフィアは、ひとりきりでいた筈だった。なのに周囲は騒然としているようだった。 何人ものひとの気配を感じた。革靴のものらしい足音がせわしなく行き交い、騒がしく響いていた。彼女は匂いに敏感だったから、目は瞑っていても、いく人かの人間が側にいるのを、その微妙な体臭によって感じ取っていた。