表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うたわれるもの  作者: Mary.
はじまり
1/1

1.

「お前の望みはなんだ」

「うたいたい」



ハッと目が覚めるとそこは自分の部屋だ。


「何だ今の夢・・・」


歌なんてうたいたいと思ったことなんて一度もない。

それなのに夢の中では、うたいたいと願っていた自分。


「まぁ、ただの夢だよな」


学校いかなきゃ、とまだ気怠い身体を起こし階下へと降りる。


「おはよー」

「おはようございます、凛月りつさん」


ふわぁ〜とあくびをしながら挨拶をすると、家政婦のサワさんが返事をしてくれる。

それと共に美味しそうな匂いもしてきて、俺の腹の虫がグ〜っと鳴った。


「フフ、もう朝食できていますよ、顔洗って来てくださいな」

「は〜い…」


笑われた・・・と恥ずかしい思いをしながら洗面所へ向かう。

鏡へと向かうと、


「あれ、俺こんな顔だったっけ・・・?」


イギリス人の父と日本人の母の間に生まれた俺は、

カラスの濡れ羽色と評される黒髪とアンバー色の瞳を持つ。

それに、どことなく違和感を感じ、じーっと鏡とにらみ合う。


「んー?・・・気のせいか」


顔を洗い、着替えて朝食を食べ、大学へ向かう。


「いってきまーす」


「はい、いってらっしゃいませ。あ、凛月さん。夕ご飯は冷蔵庫に準備しておきますので温めて食べてくだいね。

明日の朝ごはんとお昼ごはんはご自由に取られてください」


「了解!いつもありがとう。サワさん!」


サワさんは俺が小さい頃から家に来てくれている。

70歳になり、身体に無理をさせてはいけないと

ウチの両親から「たまには休みなさい」と言われているらしく、週に1・2回は

ご飯の用意だけして、きちんと休みを入れている。


明日の朝は何食べよっかな〜と考えながら歩いていると、すぐに大学に着いた。


「りっちゃ〜ん!おはよー!」

「あ、おはー」

「りつ、今日サークル休みだってよ」

「まじ!やった!」


すれ違う女子や男子に声をかけられながら、1限が行われる教室へ向かう。


『       』


「え・・・?」


その声の中に聞き慣れない言葉が聞こえた気がして足を止める。

振り返りキョロキョロと周りを見渡してみるが、こちらを見ている人は一切いない。


「気のせいか」


くるりと向きを変えた途端。

ストンと落ちる感覚。


「え、」


ドサッと荷物が落ちたあとに凛月の姿は、もうそこにはなかった。

先程まで声をかけていた友人たちはそれを一瞥すると

何事もなかったかのように歩き出していった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ