3話
3話
このあとも絡まれる事なく森を抜けた二人は街道からすぐの町へつく。
「もしかしたらここで休憩、なんてことはないか」
「そうだったら僕たちにとっては嬉しい話だったんだけどね…」
当然聞き込みをしたのだが一時間かけてもこの町を通った不審者はいないようだった。そこに二人組のパーティが話をかけてきた。
「あれ、何か探しもの?僕たちで良ければ手伝おっか?」
「お金をくれるならやってもいいわよ」
二人はさっき森で見かけた大きな熊を殺したパーティだった。
「うーん。上位のアクエスマテリアをもった人に心当たりない?」
「俺達はそいつにアクエスマテリアを盗まれちまってな。返してもらって元の場所に戻したいんだが」
ダメ元で聞いてみたものの二人の答えは違ったものだった。
「もしかしてアレのことかな?」
「あれ?あー、台とラクリマは上等なもんだったのに何故か環境設定がおかしかったやつのこと?やっぱそうだったのね。それなら問題ないわ」
二人は手招きしてからギルドの方へ歩いていく。その行動にレントとカスタルは何も言わずついていくことにした。
二人は顔パスで職員の場所に入っていくとギルド長の部屋をノックする。
「あのー、さっきのラクリマなんだけどー」
「あのダメ親父また仕事放って酒飲み行ったんじゃないでしょうね…」
「君たちはギルド長がどこに行ったのか心当たりはあるの?」
間違いなく二人はギルド長と関係がある。そしてギルド長は確実に何か知ってるのだろう。そう理解してレントが二人に訊ねる。
「どうせ酒場にいるわよ。さっさと探しに行きましょ」
呆れた様子の少女は面倒くさそうに次の場所へ案内を始める。
「あ、そういえば僕達の名前言ってなかったね。僕はナイマン。ナイマン・ノイマンス。彼女が…」
「リン・ブニャル。まあこれっきりで合うこと無いかもだけどよろしく」
ナイマンとリンはじっとこっちを見てくる。
「僕はレント・ガンバレン。でこっちがカスタル・ミョルスだよ」
「…よろしくな」
勝手に自己紹介をされたカスタルはレントを肘打ちしてから挨拶を交わす。
「よろしくね!」
「それじゃさっさと案内して帰るわよ」
そのあとは特に話すことは無かったがこの二人はいい人ということだけはわかる。そう考えたレントは一人で頷いているとカスタルはため息を付いてから耳打ちする。
「誰かに見られてるぞこれ」
「ぼ、僕も感じたから問題ないよ」
不意に言われて焦りながら答えるレント。意識を集中させて周りを見ていると確かに見ている人がいるようだった。
「カスタル達って人気者なの?」
「ん?なわけ無いだろ。俺らは善良な一般市民だからな」
「善良、ね」
何か引っかかりを覚えたのか目を細めてカスタルを見つめるリン。しかし少しすると「まあいいや、興味ないし」と呟きながら前を歩いていく。
「でも感じた視線はどう考えても普通じゃないんだけど…まあ気の所為なのかな」
「そうそうきのせいきのせい」
レント達よりも早く同意するリン。そんな話をしている間に酒場につく。ナイマン達は迷いなく酒場にズカズカと入っていきそれに続くように二人も酒場に入っていく。
この子供二人はここらへんじゃ有名な二人組のようで酒場に入ってから何度も声をかけられている。しかも酒場に入ってきたことに注意するわけでもなくただ談笑しただけ。それだけ二人は有名なのだろう。
「よう坊主。またそこのバカを連れ戻しに来たのか?」
「いや、今回は僕達が来たのはこの二人を紹介するためだよ。どうやら僕たちが取り逃したラクリマを追ってきてた人みたいでさ」
つまりナイマンとリンはいち早く怪しいことに気付き取り押さえようとはしていたらしい。しかし相手の用心棒は相当な実力だったようで簡単にあしらわれて逃げられてしまったらしい。
「そうか、ご苦労だったな。命があっただけ良かったぜ。こっちの問題で他の奴らが死んだなんてあったら俺らは目を合わせらんないからな」
「まあ結果的には良かったかもしれないよ。実力を持った二人がそう簡単にあしらわれるとは思えないからね。僕たちでも勝てない人がいる可能性があるみたいということだけでも嬉しい情報だと思う」
話を聞いたレント達はすぐに追いかけるために酒場を出ようとする。だが後ろから呼び止められた。
「おいおい、それだけじゃ俺様を探した理由がねぇじゃねぇか」
「僕達はギルドに頼むつもりはないからな」
「それはわかってるさ。だからこそ言わせてもらうけどな、あれは国を股にかけてる犯罪者絡みだぜ」
つまり国レベルで対処するような問題。というか世界で対処すべき問題という事だった。
「は?たかが上位のマテリア一個が?」
「少なくともギルドはそう見てる」
突拍子もない事を言われ流石のカスタルも驚きの声を上げる。そしてナイマン達は最近やっている二人の仕事を説明する。
「だからこそ最近になって出てきた変な魔物、あの森の熊とかを討伐してるってことなんだ」
「そうそう。どうやら小型のラクリマをつけられてるみたいなのよね。どんな機能をもったやつなのか私が主導の研究室で分析ちゅうってところね。そして一つわかってるのは実験として作ってるっていうことなのよねぇ…はぁ」
ラクリマを雑に扱われていることを良いことと思っていないようでリンはため息混じりに説明していた。
「というわけなんだが一つ協力関係ということにはできないか?相手の規模は確実にでかいんだ。協力するのも悪くはない手なんじゃないかい?」
ギルド長の目を見るからに嘘を言っているようには見えない。けど…
「少なくともその情報が本当かわからない限り協力は難しいと思いますが。そもそもあなたの名前すら知らないですし」
「そうか、自己紹介すらまだだったか。俺様はレイヴン・ミラーってもんだ。よろしく頼むぜ」
軽く手を出して握手を求めるレイヴン。カスタルはその握手に応じると自分の名前を言う。
握手が成立したもののその空気感にレントは不思議なものを覚えた。
「どこかで聞いたような…」
「…まあ気のせいだろ。人間似たような人が何人もいるんだからな」
「そうそう。俺様はそこらへんにいるおっさんだから気にするほうが損ってもんなわけよ」
二人に否定されてレントは大人しく引き下がりこれからの事を聞く。
「仮に僕達の事を手伝ってもらうとして見返りはなんでしょう。まさか無しでやってもらえるような事件じゃないですから」
「そうだねぇ、まあ変な魔物ってやつ。ギガントモンスターって言うやつを狩ってくれればいいんだけどどう?まあそれがだめならおっさんもう少し考えるけども」
ギガントモンスターについて聞くと意外と興味深いものが多かった。特にあの森のギガントモンスターはまだ弱い方だということ。レント一人でも倒せる相手だったが流石にこれ以上となると辛いものがある。しかし放っておくと町や村に大きな被害を出しかねない話をスルーしていくことはレントにはできなかった。
その顔から感じ取ったカスタルはレントのかわりに話を進める。
「それで?もちろん報酬は出るんだろうな」
「それはださせてもらうぜ。ギルドは損得勘定で動くもんだからな。仕事をしてくれているやつに敬意をはらうもんなんだぜ」




