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2話

 2話


「おいお前ら!早く来い!」

「どうしたそんな慌てて。また腰痛めちまうぞ」

「今は俺の腰なんざどうでもいい!事件だ!」


 その言葉を聞き二人は急いで服装を整え武器を手にすると走り出す。


「それで今はどういう状況ですか?」

「アクエスマテリアが盗まれた。ここの生命線の一つだっていうのによ」


 アクエスマテリアは水を生み出す為の宝珠。この街で一番の宝と言っても過言じゃない。そのマテリア一つでこの街が出来てからずっと賄っていると言われている。


「はぁ?あんなの簡単に盗み出せるもんじゃねぇだろ。要台に組み込まれてるもんなんだろ?」

「要台ごと持ってかれちまったんだよ」


 二人はとてもじゃないが信じられない。しかし目の前に広がっている状況は間違いなく話のそれであった。

 二人は周りを見渡すが当然不審な人は周りにいない。


「しかももう騎士団が来ちまってるんだ。どうやら既に富裕層でも盗みが起きてるらしくてな。この街に探りを入れようとしていたみたいだ」


 しかし街に来たものの騎士団と話ができるほどの時間の猶予はなくこれからの生活のためにアクエスマテリアを集めて共有するために走り回っていた。


「ちっ、俺らが見つかるのはあまり得策とは言えなそうだ。それよりも逃げていった方向はどっちだ?」

「聞いた話じゃ隣町の方に走り出してったようだぞ…ってお前ら追いかけるつもりか?」

「もちろんです。それが僕らの仕事ですから」


 かつて働いていたところを辞めたあと二人はこの街で色々な仕事を貰い生活している。その仕事のうちの一つは犯罪者を捕まえること。


「まあ他にも警備の奴らもいるから平気ではあるが。まあとにかく死ぬような真似はするなよ。アクエスマテリアなんかよりもお前らの命のほうが大事だからな」


 町長はそれだけ言うとバッグを手渡してくる。

 流石にと断る二人だったが圧に押されて受け取ると中にはサバイバル用の物が一式入っていた。


「まじか、ありがとな。これで気にせず追いかけられるってもんだ」

「でもいいんですか?こんなもの貰ってしまって」


 今からでも返せるなら返そうとおもったレントは念を押して聞く。しかし帰ってきた言葉は返せるようなものではなかった。


「このサバイバルセットは常備していてな。いつか使う日が来るだろうと持ってたが全く使わなかったから遠慮せずもってけ。なんならもう一セット持ってくか?」


 そこまで言うなら、と思いバッグ肩にかけて紐を締めると急いで残りの支度をすませる。


「まあこんだけありゃ狩りさえできればしばらくは持つだろ」

「そうだね。それじゃあ行こうか」


 不審者が通ったと聞いた道を走り始める二人。

 




「この道を通っていったなら確実にクレベルト大橋を通る筈だ。クレベルト大橋は普段からちゃんと検問をしている厳重な橋だからすぐには渡れないんじゃねぇか?」


 確かに普通に考えたらそこが一番安全なルートになる。しかし腕に自信がある場合話は別だった。


「いや、多分通るのは森の方だと思う。あそこを渡るには所持品のチェックは確実にされる。そして上級のアクエスマテリアを持っていたら普通に不審な人の出来上がりだよ。そんな手は取らないはず」

「まあ確かにそうだな。だけど結構辛いぜ?」


 レントは行ったことないがカスタルは前に一度何人かでこの森に入ったことがある。その時はほとんどの人達が一日で逃げてくるという記録。その中でカスタルは数日森で暮らしていた。


「僕なら問題ないよ。カスタルに負けたことないから」

「冗談はやめろって、負けたことなんてねぇけど」


 お互いに一度も負けたことがない。勝ったこともない。毎回毎回あと一歩で引き分けになる。カスタルが戦ってこれる森なら僕も戦っていけるくらいの魔物のはず。

 レントはそう判断して森を抜けることを決める。


「なら早く行かねぇとな。そのまま抜けるにしたって早いに越したことはねぇからな」

「準備は出来てるなら行こうか」


 そう言い荷物を持ち直すと二人は森に入ろうとするが踏み入れる寸前にカスタルが目配せをしてくる。それに対しレントは腹の前でサインを送るとそのまま森に入っていく。



 森はウーサの森。魔力の霧により迷いやすくなっていると言われている。

 周りを確認しつつ身長に歩を進める二人はレントが右、カスタルが左の立ち位置でそれぞれサイドを警戒していく。


「追いかけられてないとは思ってねぇだろうからな。どこかで殺しに来てもおかしくねぇぞ」

「まあここを通ったって保証は無いんだけどね」

「そうでもないみたいだぜ」


 森には一直線で湿っている跡ができていた。


「盗んだやつは要台ごと持ってんたんだろ?ならこの跡は間違いないだろ」


 この森はマナの流れが少しおかしくなっており要台の不具合が生じやすい。調整する時間も無い筈のこの状況はここへ入っていった可能性が急激に高まる。


「なら早くこの森を抜けよう。森が終わったらまた情報が無くなるよ」

「…そうだな」


 一瞬なにかを考え込んだカスタルだったがレントに同意して歩く速度を上げる。


「俺の事覚えてるやつでもいんのか?全く来ねぇな」

「まあ今は急いでるから絡まれないに越したことはないよ」


 森にはそれなりに気配があったが襲ってくる気配は無い。なのでスルーをしている。

 何か他に理由でもある?と少し思ったものの違和感はないので気にしないでおくことにした。しかしそこに大きな話し声が聞こえてくる。


「そんなに強いなんて聞いてないんですけど!?」

「僕も聞いてないよ!集めてきた情報が間違ってたんだって!」

「んなことわかってるわよ!それよりどうすんのよ」


 二人の子供は普通の熊の体格の2倍ほどの敵の前で喧嘩を始めていてだいぶ雰囲気が険悪にしか見えない。その二人を見てレントは即座に剣を抜こうとする。


「助けよう!」

「いや、まて。あいつらはそんなに弱くないと思うぜ?」


 大きな熊は勢いよく近付きその巨大な腕を振るう。しかしその腕は二人にまで来ることなく止まる。そして次の瞬間熊の手首から血が流れ始めていた。


「こうするんだよ!」


 止まった腕に向かい札をつける少年はつけたあとすぐに飛び退くと一言。


【爆!】


 それだけで札は爆発し腕を大きく弾き飛ばす。


【スパイラルウインド!】


 その隙を見逃すことなく魔術で追撃を決める少女。その二人のタイミングは即席のパーティというものでは無いようだった。


「こんな戦い方する人もいるんだね」

「そりゃ剣だけが力じゃないからな。少女は魔術。少年は暗器と符術による二段構えか。ちゃんとした前衛がいないのが気になるもんだが色々あるからな」

「無駄な時間使わせてごめん」


 レントは即座に謝るとカスタルは手をレントの頭に載せてわしゃわしゃとする。


「んなもん気にすんなよ。それよりさっさと行くぞ」


 終わる直前だったとはいえ何分か立ち止まってしまった。更に早く歩かないと。

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