パッツィオの街で
パッツェオの街で
「何もすることがないな。」暇になった俺は泊っている宿屋から、外に出た。すでに夕食は済ませていてあるので、これといってすることもないが部屋にじっとしているよりかは刺激があった。宿の周りは大通りにほど近いので真っ暗と言うほどでもなく、土地勘のない俺でも大通りから漏れ出る光を頼りに歩を進めることができた。大通りに着くと人のにぎやかな声が露店などから聞こえてくる。世界に魔物なんていないと思えるほどに人々は騒ぎ立てていた。いや、魔物と言う脅威があるからこそ人々は今を楽しもうとしているのかもしえれない。そう思うとなんだかこの光景も空々しく感じられる。そんなことを考えながら大通りを散策していると、横道の暗がりから人のもめる声が聞こえてきた。
「姉ちゃん、そんな無下にしなくったっていいじゃねえか。俺たちは市民のために昨日まで魔物と戦ってきたんだぜ。」
「やめてください。」
「強情な姉ちゃんだ。優しくしてやろうと思っていたんだがな。おいお前ら。」
「ちょっと。放してください。」
おいおいおい。なにやらとてもまずそうな会話だった。俺はほってはおけずに横道へ飛び込んだ。そこにいたのは男が2人と口を押さえられ捕まっている少女が一人だ。その男の命令していたほうが俺に気づいて振り返る。
「あ?なんだお前。」
「その人をはなせ。」
俺がそういうとそいつらは互いに一笑した。
「ハハ、痛い目にあいたくなかったらさっさと消えな。」
「・・・」
「いいぜ。戦場では暴れたりなかったからな。死んでも文句言うなよ。おい。女は押さえてろこいつは俺一人で十分だ。」
と言って男は腰の剣を引き抜いた。
「お前もさっさと剣を抜けよ。腰にぶら下げてるそれは飾り物か?」
俺も腰の剣を抜刀し中段に構えた。それを見た男がその顔に薄く笑みを浮かべる。剣を抜いた者同士の決闘では命を奪っても罪に問われることはない。こいつは本気で俺の命を奪うつもりだ。すると捕まっている女の人が言った。
「私のためにあなたが戦う必要はありません。」
「わかってないな君はそんなことを言われたら助けないわけにはいかないじゃないか。」
「茶番は済んだか。来いよ。」
俺は男に突っ込んでいった。俺の振り下ろした剣が闇を切り裂いて男の脳天をとらえんとする。しかし、男は身をよじりながら俺の剣をはじく俺の剣は男の横を空振りした。俺は剣の軌道がずれ予期しない方向に剣の慣性が働いたことで少しの隙を相手に与えてしまった。その隙を逃さず男は横にないだ剣を俺の胴に向かって水平に切り込んだ。俺はその斬撃を後ろに跳んで何とか回避した。
「ちょこまかと、すぐけりをつけてやるぜ。」
そう言うと今度は男が俺に向かって突っ込んできた。男が放ったのは鋭い突き。俺はそれを剣で払って攻勢に転じる。俺は払った剣と同じ方向から斬撃を加える。これなら俺の剣を剣ではじくことはできない。男は危機を察知して後ろへ飛んだ。これでは決着がつきそうにない。相手もそう悟ったのか。俺が走り出すと同時に相手も走り出す。互いに受けと攻めの概念をあいまいにした攻勢、つばぜり合いの始まりだった。この距離では後ろに跳んでも踏み込まれた斬撃を避けることはできない。なるべくコンパクトに、剣振るう。互いに振るう剣に先までの重みはない。この状態では力のある方が有利だ。軍配が上がったのは俺の方だった。徐々に俺の剣劇が男の剣を押し込んでいく。この距離で後手に回れば一つのミスが命取り。たとえミスがなくとも、俺の剣線に対応するのは難しいだろう。
男は劣勢を悟って体制を崩す前に俺から距離を取ろうと後ろへ下がった。それを予期していた俺は深く前に踏み込んで剣を横に払った。男が大勢を崩して転んでいなければその剣は男の腹を切り裂いていただろう。まあ。その時は寸止めするつもりだったが。ともかくこの勝負は俺の勝ちだ。俺は転んだ男の喉元に剣の切っ先を向けて言った。
「俺の気が変わらないうちに早く立ち去れ。」
男は苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
「くそ、化け物かよ。えげつねえ剣の腕前しやがって。行くぞ。」と少女を抱えていたもう一人に声をかける。「でも、ラルゴさんと俺の二人係でやれば。」と少女をす捕まえている男が言うと俺と戦っていた方が「野郎、剣の腕前は相当なもんだ。二人係でも痛手を負かもしれねえ。わかったらいくぞ。」と言って暗闇に消えた。もう一人の男もしぶしぶといった様子で少女を放すと先に消えた男の後を追った。男の手から解放された少女はその場にへなへなと崩れ落ちた。俺が少女の基に向かうと、少女は俯いていた顔を上げて「どうも、ありがとうございます。なにかお礼をしたいのですが・・・」と言った。俺はもともとお礼が欲しくて助けたわけでもないので「お礼なんていいよ、困ったときは助け合わないとな。」と言った。しかし少女は納得いっていないようで「いえ、このお礼は何か・・・そうだ。夕食はもう食べましたか?」なんて聞いてきた。嘘を言うわけにもいかずに「いや、食べてないけど。」と答えると少女は立ち上がって俺の手を掴み「じゃあ、私の家でご馳走します。一緒に来てください。」と言って歩き出した。俺は引かれる手を振りほどくわけにもいかず、恥ずかしながら彼女に連れられることになった。俺は年甲斐もなく少女に手を引かれることに緊張していた。少女と手を繋いでいる手が汗をかいているのが分かる。「どうして、こんなことに。」俺の口から本音が漏れた。「何か言いましたか?」と少女が俺に振り向いて聞く。俺は「い、うや。何も?」とキョドリぎみに答えた。




