プレリュード
初投稿ですね。
何かとおかしなところもあるかもしれないですけどよろしくおねがいします。
開けっ放しの窓からは運動部の掛け声が聞こえる。日は少し落ち、空は赤くなっている。
そんなテンプレートな青春を傍目に見ながらわたしは独りピアノを弾く。
そんな他愛もない日常を今日も続けるはずだった。
はずだったのだ…
校門を出て帰宅の途につこうとしたとき、ふと楽譜を音楽室に置いてきていたことを思い出した。
6月の特徴的なジメジメとした空気が続く中、わたしは音楽室へ歩みを戻す。
音楽室への階段を登ると、なぜか聞き覚えのあるクラシックが聞こえてくる。
それは放課後は私しかはずの音楽室から流れてきてるみたいだ。
ポロネーズ第6番変イ長調『英雄』
人呼んで『英雄ポロネーズ』
『ピアノの詩人』と呼ばれるショパンの曲だ。
それは荘厳な英雄、勝ち気な英雄。
弾く人によって英雄はその顔を変える。
そして、今聴こえてくる英雄は…
綻びがあるが自信に満ち溢れた英雄だった。
わたしには到底弾けそうにない演奏だ。
って、そんなことはどうでもいいんだ。
演奏も終わったのか、ちょうどいい。
誰がいるのかと半開きのドアから中を覗き込んでみた。
ってなにか来る‼
敢えて結果から言おう。
盛大にぶつかった。
正確に言うと彼女の顔がわたしの胸の辺りに衝突した。
その後は綺麗にふたりとも倒れた。
「ごめんなさいなのだ」
「いやこっちこそ」
「怒って…ないのか?」ウルウル
「怒ってないよ」
「そうなのか〜。良かったのだ」パァー
(その無邪気な目はきついんだ、一番どう接すればいいのかわからない)
「それで、さっき弾いていたのは君?」
「そうなのだ」
「すごいじゃん」
「リンカはすごいのだ〜」ドーン
(いちいち可愛い仕草をしないでくれ)
「リンカって言うの?」
「リンカはリンカなのだ」
「そういえば、この楽譜は誰のなのだ?」
「あっ、それわたしの」
「そうなのか〜。ありがとうなのだ‼」
「ありがとう?」
「リンカ、楽譜の買い方わからないのだ。それにピアノも持ってないのだ」
「それであの完成度なの⁉」
「それは作者がやらかしたのだ…」ボソッ
(さ、作者? )
◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「それで、あなたの名前は何なのだ?」
「わたし? わたしの名前はスミレよ」
「スミレちゃんなのか〜よろしくなのだ、スミレちゃん!!」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「スミレちゃんの演奏も聞きたいのだ」
「うーん… 一曲だけよ」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「すごいのだ!!」
(なぜか、いつもより上手く弾けた気がする)
「頑張っていたからね」
「スミレちゃんはすごいのだ」
「そりゃどうも」
素直に褒められて嬉しくなったのいつぶりだろか?
この後何曲か弾いたのち一緒に帰りました。
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今日のふりかえり
やっと一緒にピアノを弾けそうな子が見つかりました。
英雄ポロネーズは初見で弾けるような曲じゃないです。
そこはツッコまないでください