第七話 生徒会長と俺と妹の将来と 後編
処女作第七話 後編
最後までお読み頂ければ、幸いです。
次の日の土曜日…………
俺は寝苦しさを感じ、目が覚めた。
俺の横には、パジャマを着て肌蹴た状態で眠る神奈の姿があった。
グッスリ眠っていたため、俺はその様子を眺めていると、神奈が目を覚ました。
「ん……んん? おはようございますっ!?」
神奈は俺がいたことに驚いたのか、勢いあまりベッドから堕ちた。
「お、おん。大丈夫か?」
「は、はい……大丈夫です」
「なんで俺のベッドに?」
神奈は口を閉ざし、モジモジした様子から笑顔へと変わった。
「ちょっと寝ぼけていたみたいです。すみません」
「俺は全然構わないぞ」
神奈は身なりを整え、俺の部屋を出ていく。俺にはなんのこっちゃ何ひとつとして理解は出来ず、少し呆然としていた。
着替えリビングへと向かうと、神奈はいつもの様に、朝食の用意をしていた。
「おはよう」
今の挨拶は、完全にいつも通りの感じでできた気がする。
「おはようございます!」
神奈もいつも通りの可愛さで、挨拶をしてくる。
「勉強は順調か?」
「お陰様で!」
どうやら、昨日の勉強会も役に立てたようで何よりだ。
「志望校なんかはもう決めてたりするのか?」
「兄さんと同じ高校にしようかなと思ってます!」
「なんでだ? お前ならトップクラスの高校へも目指せるだろ?」
「いいんです!」
うちの高校は県内においては、かなりの高校にはなる。選ぶ理由としても家から近く、高校の知名度など、ステータス的には十分なところだろう。
だが、神奈の成績からしても都内などの高校のほうが、神奈には相応しいだろうし、そっちの方が将来の幅は広がると思う。
同じ高校にする理由が少しわからん。うちの高校の中には知ってる人もいるだろうが、数える程だから、他校でも良いと思うんだがな…………
そう思い悩みながらも登校する。
「やほやほ!」
ほらきたっ! 俺が悩んでる時に限って、異常なテンションで絡んでくるやつが……
いつもテンションは高いが、俺のテンションが低い時は、いつも以上にテンションがおかしい。
「どーしたんだい? 悩んでいるような顔をして」
生徒会長は俺の肩を叩きながら問いかけてくる。
「悩んでなかったらこんな顔はしてない」
「つまりは悩んでいるということだな!」
「つまりそういうことにならなかったら病院へ緊急搬送してたところだがな」
「奈岐が?」
「お前が!」
おっと! こんなクソつまらん漫才をしてる場合ではなかった。いち早く妹の将来を明るいものにせねば……
「どこへ行くんだい?」
「学校に来て最初に行くところなんて決まってんだろ!」
「保健室!」
「屋上」
当たり前のように答えが割れ、そして教室という答えが出ない。
「おやおや! 立ち入り禁止の屋上へ行くとはなかなかの強者ではないか!」
「保健室なんて答えるお前には言われたくないがな」
というか、こいつずっとついてくるやんけ。
「というかだな! 先輩に対して敬語を使うがよい!」
お前は一体いつの時代の殿であるか!
「妹の前では敬語を使ってあげる優しく、真面目なお兄ちゃん!」
「よっシスコン!」
「シスコンじゃねえわ!」
屋上の熱されたコンクリートを踏む。
こんな雑音を聞いている間に目的地へと着いてしまった。
俺は屋上で仰向けになる。すると何故か生徒会長も横で仰向けになる。
「あの……その……」
生徒会長にしては珍しく歯切れが悪い。
「どうした? まるで乙女のような反応しおって」
「まるでとはなんだ! まんま乙女じゃないか!」
とうとう脳に寄生虫でも飼いだしたか。
「結局何が言いたい?」
「この優秀なわ・た・しが! 相談にでも乗ってやろう!」
自慢げに言うが、こいつに相談するとろくな事にならないと、俺の勘が言っている。
「じゃあ、俺の横のお邪魔虫を排除する方法は?」
「おーっと! 耳が遠くって何も聞こえなーい!」
つまりこの相談は却下されたようだ。
「じゃあ、俺から言うことはねえよ。授業戻れ。生徒会長様」
「君から様呼ばわりされるのもそれはそれで悪くない」
体を起こしこちらを見て言う。
こいつに付き纏われると結果的にこっちが折れる羽目になる。
「まぁいい。以前妹に会っただろ? 同じ高校にするらしい……」
妹を断念させれる案が聞ければ、いいんだがな。
「いいんじゃない? だって来たいんでしょ?」
勧めんな勧めんな。
「あいつの学力ならもう一つ上の高校にも行ける。楽観していい話でもない」
妹の将来をこんな平凡な高校に費やす訳にもいかん!
「やっぱりシスコンじゃないか」
「あのなぁ……」
「でもさぁ、奈岐だってそうでしょ? 実際都内の高校すら容易かったでしょ?」
「それなのに県内のそれなりで収まってる。じゃあ何故?」
今更過ぎるな。俺は呆れたように話す。
「そんなものあいつを放っては行けんだろう。あいつにやりたいことがあるなら、俺は背中を押すだけ」
「神奈ちゃんも同じように思ってるとしたら?」
「そうだとしたら、その考えは矯正させる。悪しき考え方だ」
「自分はいいけど?」
「そう。自分はいいがあいつはダメだ!」
「腹割って話さないと分からないよ? お互いに」
「……………………」
正論に言葉が出なかった。俺は荷物を持ち立ち上がる。
「行くの?」
「まぁな。お前と話すのも疲れたからな」
「素直じゃないな。何年の付き合いだと?」
「忘れたわ。そんな昔のこと」
「妹ちゃんのことはしっかり覚えているのに?」
「あいつは特別だからな」
そこから少し無言になり、秋空は口を開いた。
「私は奈岐の………………のかな?」
声が小さく俺には聞こえなかったが、何かを呟いた。
「何か言ったか?」
俺は秋空を見て聞くが、秋空は俺に背を向け、何も言わなかった。
「兄さん! おかえりなさい!」
まさかの早退してきた俺より早いとは一体どういうことだ?
「お前学校は?」
「いや、中学校は創立記念日で休みですよ?」
「そんなもんあったか?」
「ありましたよ! てか、兄さんも同じ中学通ってたのに、なんで覚えてないんですか!」
まさか通っていた中学にそんなものがあったとは…………
「少し話がある。時間いいか?」
「高校の話ですか?」
「そうだな……」
リビングへと場所を移し、向かい合い座る。
「したいこととかなりたいものとかないのか?」
「今はまだ後回しでもいいかと思ってます。高校でしたいこと変わるかもしれないですし、なりたいものはあれですし……」
言うこともわかるが、目指してる奴は高校から既になんてもの普通なのも現実だ。
神奈のやりたいことは尊重したいとは思うが…………
「まぁなんだ。最後に一つだけ言っておく」
「はい!」
真剣な表情で神奈は俺を見る。
「後悔の少ないものを選べよ」
俺もいつになく真剣な表情で話す。
「大丈夫です。私には兄さんが付いていますから」
「俺から言えるのはそれだけだ。解散」
俺たちはそれぞれの部屋に戻る。
階段を上がり、部屋に入る前に神奈が呟く。
「私のなりたいものは…………」
神奈は一瞬こちらを見た気がしたが、俺はそのまま部屋に入る。
最後までお読み頂きありがとうございます。
不定期にはなりますが、今後も投稿は続けて行きたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い致します。