第七話 生徒会長と俺と妹の将来と 前編
処女作第七話
最後までお読み頂ければ、幸いです。
あれから五日経つが、まだ神奈とは話せていない……
あの日の二日後に学校も始まったが、この三日間遅刻が続いている。
原因が分からないって言うのが、正直なところ大きい。
会長と裏で通じ、探りは入れているが、どうも会長も何か隠しているようにも感じる。
「さてどうしたものか」
俺の独り言も虚空へと消えていく……
外では小鳥が鳴き、案の定四日目の遅刻を記録。神奈は既に学校へと着いている頃だろう。
つまり、家には今俺しかいないということとなる。
…………部屋に忍び込むか? いや、バレれば先はない。だが、このままも良くない……
…………………………
結局断念することとなる。
答えは単純にリスキーだったためだ。答えが見つかる可能性も怪しい部分がある。
寝起きのせいか、考えがまとまらない。神奈が帰ってきたら、とりあえずでも謝ることにするか……
「ただいま……」
神奈の声に気づいて起きた。
目を開けるとそこには俺の覗き込む神奈の姿があった。
「どうした?」
「お願いがあるんです……いいですか?」
神奈は、よそよそしく聞く。
「構わないが、その前にひとついいか?」
「……? なんですか?」
神奈は首を傾げる。
「夏祭りの時、すまなかったな。正直何が悪かったのかはわからん。何かあるなら言って欲しいと思っている」
思ったことをそのままに述べる。勿論それで機嫌を損ねる可能性も考慮はしているが、ただ今の状態が続くのはそれ以前の問題だ。
「ち、違うんです! なにも兄さんは悪くないんです! ただ……」
必死に弁明しようとしているのがわかる。でも、神奈は口を噤み、そこからは何も言わなかった。
「そうか、それなら良かったよ。言いたいことも言えたし、用件はなんだ?」
言いたくないなら聞かなくていい。だから俺は話を変えることにした。
「は、はい! 勉強を教えて欲しいんです!」
「…………んん? 俺が教えないといけない程か?」
日々努力して勉学に励んでいる妹に対し、俺は日々怠惰の化身と化している。その俺に勉強を聞くとは一体全体どういうことであろうか?
「兄さん、理系タイプだから、解きやすい方法とか知っているかなと……ダメですか?」
言われてみればなぁ……神奈はどちらかと言えば文系だ。対し俺は理系寄り。納得はできる。
「俺にできる範囲で良ければ構わんよ」
神奈からは、勉強に対する凄みのようなものを感じた。
「準備して来ますので、待っていてください!」
そう言うと神奈は、先程までの凄みもどこへやら、幸せの絶頂のような顔をして、慌てて自室へと駆け込む。
「勉強に対するあの熱心さは相変わらず感心するな」
良くも悪くも神奈は凄く強情なところがある。先程の凄みも恐らくそれだ。
そういう時の神奈に断念や諦めるなんてのは一切効かない。
「準備してきました!」
はやっ! まだ一分も経ってないんだが……
神奈は俺の勉強机に座り、勉強の体勢を取る。
「兄さん! 早く!」
あまりの早さに俺は出遅れ、神奈に催促された。
気乗りしないせいか、俺の腰は重い。それでも重い腰を上げ、神奈の側へ近寄る。
「ここはだな…………」
まずは数学らしい。俺は淡々と教えていく。教えている内容は基礎中の基礎でしかない。
神奈は食い入るようにして聞く。
久しぶりに神奈と話しているせいか、俺の口元は少し緩んでいたかもしれない。
勉強会は終わった。特に何も無い。ただただ勉強を教えていただけで、特別何かを話したりなんてのはなかった。
「勉強を教えていただき、ありがとうございました」
それでも神奈は満足したかのように、自分の部屋へと姿を消した。
俺はベッドへ腰を落とす。これで以前のように戻れるだろうか。
不安は尽きないが、俺は眠ることにした。
最後までお読み頂きありがとうございます。
不定期にはなりますが、今後も投稿は続けて行きたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い致します。