第五話 妹と海と三人目?
処女作第五話
最後までお読み頂ければ、幸いです。
「神奈、起きてっか?」
「はい、朝ごはんもできていますよ」
俺がリビングに入ると、いつものように早起きし、朝ごはんを用意していた。
「もうなんか妹が嫁みたいなとこあるな」
そう言うも、それについての返事は帰ってこなかった。
「きょ、今日出かけるんだよな?」
「はい! お時間取らせてしまってすみません!」
「いいよ。俺も暇だったし、妹のお誘いならば行く以外の選択肢もない」
「それで何を買いに行くんだ?」
「それはまだ内緒です!」
神奈は口に人差し指を立て、片目を閉じた。超可愛い……
「ご飯食べたら出ましょう!」
そう言うと、神奈はすぐに食べ終わり、二階へ駆け上がる。
「出かける時だけ食うの早いな……準備するのに時間かかるからかな?」
俺も平らげ、準備をし、玄関にて待っていると、案の定俺より遅く準備を終わらせた神奈が来た。
「そんな準備することあんの?」
「あるんです! 私だって女の子なんですよ?」
神奈は顔を赤らめ、照れているように言った。
「いや、それは知ってるけどな。多感なお年頃だしな」
「それだけじゃないんですよ!……」
何かを訴えるように、熱弁していた。
「あっはい、すみません」
「分かってくださればいいんですよ!」
神奈は体を反り、自慢げに言う。
俺たちはそうこうして、ショッピングモールへと着いた。
一階は飲食、二階はインテリア、三階はゲーム、四階は衣服類など、まだあるが、なかなかに大きなモールだ。
俺たちは四階の衣類の場所に足を運ぶ。
「どんな服がほしいんだ? 金は持ってきてんぞ!」
「そのですね……兄さんにその…………」
神奈は俯きながら歯切れが悪そうにしている。
「あんだって?」
「と、友達とでかけるので、兄さんに可愛いと思うもの選んで欲しいなと!」
神奈は何故かヤケクソになっている感じがした。
「あー! 好きな人が出来たとかか! 了解したけど、ちゃんと紹介してくれな。そいつ消せねぇから!」
「消したらダメですからね!」
妹に好きなやつか……許せんな。
「男か…………」
意図的ではないが、大きな溜め息が出た。
「違いますからね! 違わなくないけど、兄さんが思ってるようなのじゃないですから!」
「お前にその気がなくても相手にはあるかもよ?」
「それはそれで……」
満更でもないんかい! まじ許さぬ!
今の俺は怒りと悲しみを兼ね備えた複雑な存在になっている気がする……
そんなこんなで、こんな状態のまま俺たちは水着コーナーまでやってきた。
「その……兄さんに可愛い水着を……」
男と海行くんか……いいなぁ……
「ちなみに友達って?」
「澪と凛ですよ」
「あー、澪凛コンビか。ちゃんと仲良くしてるようで安心したわ」
「じゃあ、男云々の話はどこ行ったし……」
「次の土曜日にその人と行くんですよ……」
神奈は恥ずかしそうに言う。
「次の土曜……」
次の土曜は俺と出かける日だったと思うが……
「三人で海行く感じか?……」
「え? 誰加えたんですか? 二人ですよ」
「俺と神奈とその男と……」
「二人ですって!」
どういう目論見!?
「もう! と、とりあえず選んでください! 可愛いのですからね!」
神奈は痺れを切らしたのか、俺の手を引き店へと入っていく。
「こんな感じか?」
俺は白のクロシェ系の水着を渡した。
ミニティーと短パンを合わせたような水着だ。色気などはあまり感じられないようなものを選ぶ。
「兄さんはこれがいいの?」
「いや、別に」
「もう! ちゃんと選んでよ!」
「お前は元々がいいからな。スタイルにしても顔にしてもな」
「だから、基本なに着ても似合う。下手し赤白のボーダーでもな」
実際事実である。妹であることに誇りすら感じる容姿端麗ぶりなのだから。
「そ、そうですか……でも兄さんに選んで欲しいです……」
俺の感性に拘る理由がよくわからん。
「普通にビキニでいいんじゃないか。日焼けとか考えるならラッシュガードやパレオでも着とき。お前の場合、大胆に着ても多少肌を隠しても良く見える」
白い三角ビキニとパレオ・ラッシュガードを渡す。
スタイルがいいから、体型カバーなんて考える必要も無いだろう。
「そ、そうですか……じゃあこれにします」
「あくまで俺の感性だし、そんな即決でいいんか?」
「いいんですよ! だって……」
神奈は言い切ったかと思うとまた歯切れが悪くなる。
そうして、神奈の水着代を払い、一階で食事を挟み、その日は帰ることになった。
次の土曜を迎えた。
「ちくせう、結局何も聞き出せず当日になってしまった……」
嘆きつつも玄関にて神奈を待つ。
俺の前で神奈に色目を使おうだなんて、不逞な輩は許さん!
「お待たせしました! 待ちましたか?」
「今来たところです!」
あまりの可愛さに彼氏みたいなことを言ってしまった……
神奈は白く少しダボッとしたワンピースにこれまた少し大きめのカーディガンを羽織り、慌てて玄関から出てきた。
「今日は海だっけか?」
「ですよ! 二人で海へ行くんですよ」
未だにどういうことかよくわかっていない……
俺たちは新幹線で遠めの海を目指す。
この時期は、人混みも多いだろうし、近場はダメだと判断。
「近場ではダメだったんですか?」
「人混みがな。それに穴場があってそこなら人混みも気にしなくていいし、海も綺麗だぞ」
「兄さんはなんでも知ってるんですね」
「なんでもではねぇよ。たまたまだ」
今回の為に、ネットで調べ、現地へと赴いたことなどは、口が裂けても言えんな。
妹が俺の選んだ水着を着て、俺と一緒に海に行こうと言うのだから、それぐらいは当然である。
「昼食は海の近場で取るか」
「大丈夫ですよ! お弁当用意してきてますから」
「今日でその……」
よくは聞こえなかったが、今日で彼氏紹介とかなんとかなら発狂しかねないな……
そこから、俺たちは新幹線で三時間移動し、目的地へと着いた。
やっぱり空いてるな。想定通りだ。
「ホントに穴場なんですね」
「俺もたまたま知っただけだから、半信半疑なところはあったがな」
「実はもう水着着てきているんですよ!」
神奈はそう言うと、ワンピースの襟ぐりを広げ、胸元が見える。
「そうか。すごく似合っているよ」
超似合う。可愛い、死ぬほど!
「そ、そうですか。その……ありがとうございます」
神奈は背中を向けて言ったかと思うと、ワンピースを脱ぎ、水着姿になった。
「あまり遠くへは行くなよ」
「はーい!」
神奈は海へ走り、俺はパラソルとシートを設置した。新幹線だけど、パラソル持つのはなかなかのしんどさ。
それでも、神奈の喜んでる顔を見ると、疲れも吹き飛ぶな。
俺は、携帯を取り出し、海で遊ぶ神奈の姿を写真に収める。
「あっやべ、意識飛んでて五十枚ほど撮ってしまった」
その内、一番いいものを待ち受けにし、残りは、別フォルダに保存しておく。
でも、写真の中には、照れているように見える写真が数枚混じってるが、気のせいか……
「兄さん、何してるんですか!」
おっと、写真撮ってたのバレたか?
「こっちで一緒に遊びましょう!」
セーフ! どうやらバレていないようだ。
「俺は荷物見てるから、好きに遊びや」
「じゃあ、私もそっちでゆっくりします」
そういえば、三人目?かの誰かは結局どうなったんだ!?
「別に俺に合わせなくても構わんぞ。沢山遊んできな」
「いいんですよ。これで」
神奈は、俺の肩に寄りかかり、海を眺める。
「昼食にしましょ!」
神奈が思い出したかのように言う。
ほぼほぼ電車移動で朝早く出ても、到着までに昼になってしまった。
「そういえば、忘れていたわ」
「軽く食べれるようにサンドイッチにしたんですよ!」
「お前の料理は美味しいからな。ホントにいい嫁になりそうだわ」
「た、食べて欲しい人がいるので」
「へぇー、そうなんか……まさか男か?」
「は、はい……」
おっとぉ。ここでまさかの二人目! 同一人物か?
「俺がお前の料理を食べていられるのはいつまでになる事やら」
「いつまでも作りますよ。兄さんのためなら」
「いつまでもとはいかんだろ。お前も結婚とかいずれするだろうし……」
「むぅー! じゃあ、それまで味わって食べればいいんじゃないですか!」
「そうするよ。いつもありがとう」
率直な感想と感謝のつもりだったが、何故か神奈はお怒りの様子。怒ってるのか恥ずかしい感じなのかよくわからん横顔をしている。
昼食を食べると神奈は『泳いでくる』といい、また海へくりだす。
俺は、腹も膨れそのまま眠ってしまった。
気づくと、辺りは赤く染まっていた。
「意外と寝すぎたか。もう夕方だな、そろそろ帰るか」
そんな独り言を言っていると、左腕が重い。
目を向けると神奈が、ワンピースに着替え、横で寝ていた。
「神奈、帰るぞ」
神奈は熟睡しているのか起きる様子がない。そして、怖い夢でも見ているのか、目には少しの涙の後がついていた。
パラソルを片付け、神奈をおぶり、身支度をして、新幹線に乗る。
「大丈夫、怖くないよ」
聞こえているとは思わないが、少しでも安心させればと思い呟く。
結局起きず、家まで到着する。
よっぽど疲れていたのだろうか……
荷物を玄関に置き、神奈を二階の部屋に行き、ベットに寝かせようとした時--
「んん……おはようございます」
「おはよう、よく寝てたな」
「え……きゃああああああああああ」
思いっきり突き飛ばされ、その勢いは凄まじく部屋の外まで飛んだ。
廊下の壁に背中を打ち、妹の部屋の扉を閉め、一階へと降りていった。
これが火事場のなんとやらってやつか……そんな嫌だったのか。
パラソルなどの大きなものを、庭の物置へと片付けた。
家に入ったとき、廊下で神奈がモジモジしていた。
「そ、そのごめんなさい」
「いや、こちらこそ悪かったな。顔を近づけ過ぎたというか配慮が足りなくて」
「な、なにかしたんですか?」
「いや、してないよ。流石に」
「そーですか! じゃあいいです!」
神奈は階段を駆け上がり、自室のドアを強く閉める。
なんかまた怒られた? 女の子って謎だわ…………
呆気に取られ、三人目のことも完全に忘れてしまっていた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
不定期にはなりますが、今後も投稿は続けて行きたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い致します。