第三話 妹と魅惑の拒絶
処女作第三話
最後までお読み頂ければ、幸いです。
「はぁ……はぁ……」
「どうしてこうなった…………」
神奈は仰向けになり、頭には、いくつものたんこぶができていた。俺はというと、知っていたというかなんという、左人差し指の突き指を達成していた。
どうしてこんなことになっているかというと、数時間前に遡ることになる。
「お兄ちゃーん! 授業の体育で、バスケをするんだけど、教えてぇぇ!」
神奈が勢いよくリビングの扉を開け、ソファーに座る俺のお腹に顔をうずめるようにして、言ってきた。
「ん……? 体育の授業なんだし、多少出来なくてもいいんじゃないのか?」
「ダメなんです! 私もバスケしたいですし、その……恥ずかしいですし……」
神奈は努力家である。勉強に対しては、俺がどうこうしなくとも自力で克服してきた。元々そこまで、頭が悪かったというわけでもなかったというのもある。
だが、運動に関しては別だ。運動に関しては、ちょっとできないだとか、センスがないだとか、そういうレベルじゃない。
関わらない方がいいというレベルで、極度の運動音痴なのだ。
それでも、妹はなんとか見せられる程度にはなりたいというのだから、手伝わない訳にも行くまい。
運動と実験・マジックだけ何とかすれば、完璧超人なんだがな……
そういうわけで、生徒会長の力を行使し、うちの高校の体育館を貸し切り、練習をすることになったが、同時に生徒会長への借りができてしまった。
「教えるといっても、テレビやネットの簡単な知識しかないぞ?」
「大丈夫だよ! お兄ちゃんに任せていれば、安泰だよ!」
バスケした事ないやつに、そんな期待を上乗せされても、大変困りまするぞ?
「とりあえず、体操服に着替えるか……」
「はーい!」
神奈は右手を掲げ、元気よく答える。
可愛いな! なんとかせねば……
「着替えてきました! 先生! 本日はよろしくお願いします!」
神奈は、中学校指定の半袖短パンの体操着に、ポニーテール姿だ。
カシャカシャ……撮らずにはおれん!
ブルマもいいと聞くが、これはこれで悪くない。うんうん……
「もうっ! 恥ずかしいですよ!」
怒りながらも少し照れている神奈、可愛い! 死ぬほど!
「じゃあ、シュートからしてみるか」
「はい!」
「とりあえずゴールに入るように、打ってみて?」
神奈は力加減が分からないのか、力一杯投げた。ボールはゴールではなく、真っ直ぐに俺の方へと向かってきた。
防ごうと左手を顔を前に出したが、間に合わず、人差し指にボールが当たる……
「おっふ……むっさ痛い!」
痛みも然る事乍ら、妹のノーコンぶりに目も当てられなかった……
もうノーコンなのか、殺意なのかの見分けがつかない領域に達しているな。
「す、すみません。大丈夫ですか?」
もう、いつもの事すぎて、あーだこーだ言う気も湧かない。
「と、とりあえず、腕を斜め前に打ち出すようにして、膝はバネのように動かしてみて」
ネットで拾い上げた簡単な知識を教えていく……
「こ、こうですか?」
そういい、神奈の放ったボールはゴールに届いたが、跳ね返り神奈の頭へと吸い込まれた。
「あ痛っ!」
「まあ……最初はそんなもんだよ。続けてみて」
「痛っ! あたっ! ふぇぇ……」
神奈の打つ球は、一寸の狂いもなく、見事に跳ね返り、頭に命中させていく。
シュートをする度、神奈の豊満な胸は、上下に激しく揺れた。
特になんの考えもなく、シュートから始めたけど、これはこれで眼福なんだよな……
寧ろ、同級生の男どもは、妹のこの姿を拝めるなんぞ、全くうらやまけしからん!
そんなこんなで五時間経過で、今に至るというわけだが……
変わらねええええ!
妹の頭は、ブラックホールなのかと思うほど、的確にヒットさせてきやがる!
「少し休憩を挟もうか。終わったら、フォームの確認をして再開しよ。」
「はい…………」
神奈は、落ち込んだ様子だったが、ここ数時間打ちっぱなしだからな。
「ん…………。角度六十五度、距離八メートル、こんなもんかなっ!」
俺の投げたボールは、放物線を描き、ズレを生じさせず、ゴールへと入った。
「あっ……なんか入っちゃった……」
神奈のことが脳裏を過ぎり、すぐさま妹の方を振り向いたが、どうやらこちらを見ていなかったようで助かった……
見られたら、「お兄ちゃん嫌い!」ってなって、一週間ぐらい寝込むことになりそうなんだよな……マジセーフ!
「…………再開します!」
神奈が休憩を終わらせ戻っきたが、休憩前よりもやる気が増しているようにも見えた。
「とりあえず、フォームはこんな感じで、足は先程と同じような感じで大丈夫だと思う」
フォームを少しづつ修正し、シュートさせた。
「えい!」
神奈が放ったボールは、ゴールの縁を回り、三周ほどした後、ネットを揺らした。
「やたー!」
声を合わせ、ハイタッチをする。
ここから数発打つが、全て入るほどの上達を見せる。
「ほんほん、もう大丈夫そうだな……」
「少し運動が苦手って言っても、ちょこっと練習してしまえば、こんなもんですよ!」
この子はたまにおかしなことを言う……
ちょっとや少し所のレベルではないんだよな……壊滅とか絶望的とかのほうが、的を得てるぞ……
「兄さん、大丈夫ですか? お顔が引きつっておられるようにも見えますが?」
「大丈夫だぞ! きっと気のせいだ」
「そ、それじゃあ……パスとドリブルもお願いしていいですか……?」
神奈は指を弄りながら、不安そうに言ってくる。
そして、俺は考えるのをやめ…………
「お兄ちゃん……お願い?」
両手を組み、上目遣いをしてくる神奈。
超可愛い、どこで覚えてきたんだチクショー。ずっと俺だけにしてて。
「はっはっはっ! まーかせておきなさーい!」
と言ったものの、その時の俺は、遥か遠くを見据えていた……
………………………。
妹の体育も無事終わり、平穏がカムバックしてきた俺に、もう死角はない!
「お兄ちゃーん! 次はソフトボールなんだってー! また教えてぇ!」
「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、目の前が真っ暗になった……
後日、妹の成績表を見せてもらった。
以前であれば、体育は二や三の評価だったのだが、今回は四がついていた。
努力したのも結果を出したのも妹の実力だ! お祝いといっては大袈裟だが、本をプレゼントし、とても喜んでくれた。
苦労はあったが、なかなかに悪くないと思い、更なるやる気へと繋がったのはここだけの話。
「兄さーん! 今度はバレーボールだってー!」
「もう諦めてもいいんじゃないかなああああああああああああああ!」
最後までお読み頂きありがとうございます。
不定期にはなりますが、今後も投稿は続けて行きたいと思っておりますので、何卒よろしくお願い致します。