第8章 予選
7月の終わり予選の日が来た
第8章
予選
7月の終り、予選の日が来た。
ピットクルーの、バイク屋の湯沢さん、その従業員の広川そして後輩の岡崎がしてくれる事となった。
もちろんタイムキーパーは、洋子、さっちゃんは雑用係をしてもらう。
ライダーは、やはり真次と寺井だ。
予選が始まる。 前日のフリー走行で寺井が好タイムを出していたので、真次は先に走らせた。
午前に第一ライダーの出走。寺井の好調は続き、暫定順位は19番手だ。午後には、真次が走る。
真次:「寺井、ナイス。」二人は拳を合わせた。
寺井:「昼から、路面温度上がりそうやな。真次でもタイム落ちそうか?」
真次:「早い目にタイム出すようにしんとんな」
湯沢:「真次、タイヤのコンパウンド固いのに代えとこか?」
真次:「決勝で使うやつ? もったいない」
洋子:「真次が『もったいない』とかいうの。 明日、雨降るな!(笑)」
真次:「あほ、真面目に言うてんのや」
湯沢:「じゃ、とりあえずニュータイヤにしとくし」
さっちゃん:「とりあえず、お昼にしよう。」
「はい、雄二(寺井の名前)の分」
真次が洋子に耳打ち:「呼び方変わったで、やらしいなあいつら」洋子はクスクス笑ってる
寺井:「なんやねん、真次。 なんか文句あんのか?」
真次:「いやいや、えータイムが出るはずや」
さっちゃん:「真次くん、ひやかさんと午後の予選に集中してな。この人終わったしね」
洋子:「真次、今『この人』って言うたな」 洋子もかなりの悪だ。
真次:「予選のおまじないの『しばき』があるし、バッチシやで」
洋子:「真次、やっぱり喜んでるんやな」と言い、指を『パキパキ』鳴らした。
真次:「岡崎~! 俺の代わりにしばかれとけ!」
岡崎:「えー! そんなん先輩の彼女でもいやですよ」岡崎はタイヤ交換の手伝いをしていた。
湯沢:「うちの嫁はんと、よー似とるな」唯一妻帯者の湯沢は笑ってた。
洋子:「えー!悦子さん? 似てるの?」
湯沢:「あー、気の強いとこがそっくりや」
広川:「そーいや、似てますね」
真次:「湯沢さん、洋子と悦子さん交換しよか」
洋子の平手がとんだ。『バシッ』 真次は椅子から落ちた。
真次と洋子の他全員:「おまじないや!」みんな笑ってた。
午後の予選が始まる
真次は、ツナギとブーツを身に付け、椅子に座って神経を集中させてた。
湯沢:「真次、準備OK」 真次は立ち上がった。
洋子:「真次、気を付けて」ヘルメットを付ける前、洋子は唇を軽く真次に重ねた。
真次:「おーし! 行こか!」
寺井:「あー、あー。タイム落とすな」
真次:「ぼけ!」
湯沢の合図で、周りに他のマシンが居ないのを見計らって、スタートした。
1,2周は軽く流し、3周目よりタイムを出しに行く。
最終コーナーを終えた時、前はオールクリアになっていた。真次はフルスロットルでピット前を通り過ぎた。
洋子は、ストップウォッチを作動させ、真次が帰って来るのを見守った。
真次は1台スローダウンしたマシンのみ抜いただけで、ピット前に戻ることが出来た。
洋子がストップウォッチを押す。
湯沢:「タイムは?」
洋子:「・・・・・すごーい。ベストタイム。」洋子は何度も見直して言った。
寺井は洋子の持つストップウォッチを見て驚いた「2分・・・・・・」声が出なかった。
真次は、寺井より2.20秒早くピット前に戻って来た。
前回、鈴鹿で走った時は1.30秒の差があまりにも離された寺井は、ショックを受けた。
次の周、真次は0.5秒上回った。その後は、他のマシンが入り込み。タイムが落ちて来たので、真次は
ピットへ向った。 ピットへマシンを止めると洋子が走って抱きついた。
洋子:「おまじない利いたやろ」
真次:「お前のおかげや」と言い、ヘルメットごしに洋子とキスをした。
岡崎:「先輩、ヘルメット!」
真次:「わかってるねん。このほうが・・・えーやろ」
洋子は湯沢が持っていたスパナを取り上げて、腕を上げて構えた。
真次:「はい、ごめんなさい」
洋子:「ほんまか?!」
真次はそそくさとピットの中の方へ逃げて行く。
洋子:「もう!」
湯沢:「やっぱり、嫁はんとそっくりや(笑)」
洋子:「言わんといて、かわいい乙女なんやから。」
全員ふきだした。
笑いを堪えながら湯沢が、「真次、まだ走るやろ」
真次:「おまじないまだ残ってるしな」 洋子はツンとしてる。
タイヤを見ていた湯沢が、「後、5周ぐらいかな。 合図したら出ろ。」
湯沢:「GO!」
真次は再び走り出した。今度は、ラインを確かめるように、先程より0.7秒落ちで周回を重ねた。
湯沢が洋子が採っていた。タイムスコア表を見て、「±0.03秒!」
湯沢:「あいつ、なかなか良いもん持ってるな。 決勝が楽しみや」
予選が終り、真次のラップタイムにて順位は13番手。なかなかの好位置をキープ出来た。
それより、前の位置をキープ出来たのは、もっと有力チームで弱小の真次のチームにしてはなかなかの
好位置でスタート出来るのである。
予選終了後、湯沢と広川と岡崎はマシンのメンテナンスを始めた。
真次と寺井は手伝おうとしたが。
湯沢:「せっかく、良い位置で予選通過出来たんやから、明日に備えてゆっくりせーや」と言ってくれた
湯沢:「真次、夜、やりすぎんなよ。 お前は今晩禁欲な!」
真次:「湯沢さーん、俺より寺井やで。こいつらおかしいからな」
湯沢:「ほな、寺井もな!」
寺井:「テントで寝るのに、出来ひんって。 真次と洋子ちゃんは別やけど」
湯沢:「今晩、うちの嫁はんも来るし、耳ふさいどけよ」
広川:「えー!師匠の奥さん観えはるですかー。岡崎ー、師匠のテントから離れよや」
テントは、真次と洋子、寺井とさっちゃん、広川と岡崎(男どうし)、湯沢となっていた。
洋子:「湯沢さんのテント、うちらの隣やん。」
真次:「洋子!・・・・・満点刺激やな」
洋子:「あほ!あんたは明日に備えてちゃんと寝るの」
「さっちゃんと、代わってもいいのよ~!」
真次:「寺井と一緒! 『ゾクッ』 いやや、洋子さんお願いします」
「さっちゃんと、一緒やったらえーねんけど・・・・・」
寺井:「お前は、何ゆーてんねん!」
洋子:「新婚さん、じゃましたらあかんでしょ」
さっちゃん:「洋子まで、真次くんの悪が移ってきたのね」
湯沢:「うちの嫁はん来たらもっと言われるでー」
そうこう、お喋りして真次と洋子、寺井とさっちゃんはテントへ向った。
テントへ向う途中で、湯沢さんの奥さんの悦子さんに出会った。
洋子:「あー!悦子さーん。」 「旦那さん、まだピットで仕事してはるよ」
悦子:「洋子ちゃーん!久しぶりやな。 『旦那さん』なんか言わんといて、『コウ』でえーしな」
「コウは又、私のいいひんとこで、私の悪口ゆーてるやろ」
真次:小声で「ほんま、よー似てる」
洋子:「んー! 何? 何かゆーた?」
真次:「えっ!・・・・別に・・・」
悦子:「うちのテント何処?」
洋子:「今からいくし、行きますか?」
悦子:「おっ!グットタイミング。コウはほっとこう、それより晩ご飯は?」
さっちゃん:「みんなが戻ってから、一緒に行こうと思ってます」ちょと怯え気味
悦子:「やつらは、ほっといたらえーねん、私らだけで食べに行こ!」
寺井:「岡崎もいるんやけど・・・・・」
悦子:「えっ!岡ちゃんもいるの❤ 待っててあげよう」
真次:小声で寺井に「やっぱり、洋子に似てるな。」
洋子には、聞こえた。真次に平手を放った。
悦子:「もう~!あんたら仲えーな!」
洋子は、真次の頬を撫でた。
テントで待って1時間ほどしたら、湯沢たちが帰ってきた。
人数は8人の大所帯になったので、町中の居酒屋に行った。
4人、4人の席になったので、男5人がじゃんけんをして負けた者が女3人に囲まれるという具合になった。
・・・・・・・・真次が負けた。
悦子:「よかったね!真次くーん。 奥さんの(洋子)横がえーやろ、あ・け・て・あ・げ・る」
洋子:「もう!来んでえーのに」
真次:「悦子さ~ん! ひどい仕打ちや。」
悦子:「そういう言い方は、コウと一緒やで」
湯沢:「おい、おい!悦子、いらんこと言うな!」
店員さんが来た。
悦子が適当に注文しだした。「刺身盛り合わせ、から揚げ、にんにくの丸揚げ、レバー刺し、やまいもの短冊・・・・・・・あと、生ビールが5つにチュウハイが2つ」 精力的な物ばかり注文。
湯沢:「悦子、真次と寺井が今晩大変やないか」
悦子:「えっ!明日がんばってもらおうって思ったんやけど・・・。コウもやな」
岡崎:「先輩やらは、いいんやけど・・・僕らのテント男二人なんですけど・・・」
悦子:「うちが行ったろ。」
広川:「いや、それだけは御勘弁を」 悦子は広川の頭を撫でた。
全員:「カンパーイ!」
悦子:「コウ!調子に乗って呑みすぎたらあかんで」
湯沢:「わかってる! 呑むのは明日や。 なあ、寺井!」隣に座ってる寺井の肩を叩いた。
洋子:「真次、肉ばっし食べんと野菜も食べ」と真次の皿にサラダを山積した。
真次:「洋子、野菜ばっかし食べたら腹もたへんねん」
悦子:「真ちゃん食べたらえーよ、あまった分は今晩洋子ちゃんの相手して。」
真次:「湯沢さん!悦子さんが溜まってるみたいやで」
悦子:「そやねん、このおっさん呑んだくれですぐ寝てしまうしな」
洋子:「湯沢さん、頑張ってねー」
真次:「悦子さん、おこさんといてな」湯沢夫妻以外笑った。
前夜祭はそこそこにして、明日に備えてみんな帰ってテントの中に入って寝た。
洋子:「真次、すぐ寝られる?」
真次:「まだ、寝るには時間早いしな。する?・・・・・さんぽ。」洋子の目を伺って言い直した。
洋子:「うん!行く!」
二人は、そーとテントを出た。湯沢夫妻と寺井とさっちゃんのテントはキッチリ閉まってる。
遊園地の側に公園があり、缶ビールを1本だけ買ってベンチに座った。
二人で交互にビールを飲み、雑談などしてると岡崎と広川が来た。
岡崎:「居てられませんね。湯沢さん隣のテントやし声丸聞こえですわ」
広川:「寺井さんもです」
岡崎「先輩はいいんですか?」
真次:「あほ、俺にもデリカシーってもんがあるねん。 やつらと違う」
洋子:手を横に振って「ちゃう、ちゃう、あたしがゆるさへんしやで(笑)」
広川:「二人の邪魔になりますし、向こうへ行きます」 二人ビール片手に消えていった。
二人が居る近くの建物の電気が消え、外灯のみになった。
真次は、まばらに散らばった雲と満月に近い月を眺めて洋子とひと時を浸ってた。
洋子:「真次、黙ってたらかっこいいな」(笑)
真次:「俺は、いっつもかっこえー」
洋子:「いっつもやったら、やらしい事とか言ってくるやん」
真次:「なんでや、俺はいつもまじめやぞ」
洋子:「やらしいし、エッチやし、スケベやし」
真次は洋子に覆い被さった。
洋子:「キャー! ほら~! エッチや~ん!」笑いながら言った。
真次:「お前がそうやって、からかってくからやん」
洋子:「真次、明日がんばってな」真次の耳にかじるようにつぶやいた。
真次:「わかった。やっぱ!洋子が側に居てくれたほうがえーなー」照れて言った。
洋子はそっと真次の唇に自分の唇を重ねた。時間にして1分ぐらいだろうか、前を岡崎と広川が通り過ぎる
時に二人は唇を離した。
広川:「岡崎、ここはやっぱりやばいな! 早よ離れよ」
岡崎:「こっち気づくなよ」
真次が気づいた。 「おい!見たな!」
岡崎:「いえ!何も・・・・見てません」
洋子:「金払え!」
広川:「えーー! そっ!そんなん!」
真次:「冗談や! もう帰るのか?」
岡崎:「はい、もう終わってるやろうと・・・」
真次:「そやな、洋子!帰ろか?」時計を見て言った。
洋子:「そうしよっか! 見物料もらってから。」
岡崎:「もー!勘弁して下さいよー。」
真次:「いじめるな、俺のかわいい後輩やぞ」
洋子:「うそに決まってるやん」(笑)
4人で談笑しながら、テントに向った。
真次と洋子がテントに入り、真次は10分ほどで寝着いてしまった。(真次は寝着きがいい)
洋子:「真次・・・・・・」小さな声で。「寝たの?」
洋子:「真次、おやすみ。 明日ほんとにがんばってね。・・・・・愛してるの・・・。」
そっと、真次にキスをして洋子も就寝した。
第9章
決勝
マシンは1列、予選順に斜めに向けて並べられた。ル・マン式スタートだ。
マシンは寺井が支えている。(スタンドがないので寺井が支えてる)
メインストレート(ピット前)を挟んで、第一ライダーの真次が待機している。
横には、洋子がパラソルを射して真次を日差しから守ってくれている。
ピットでは、悦子さんが総監督のように仕切っている。(ほんとうは湯沢さんなんやけど?・・・)
スタート3分前。
洋子は真次に、やさしい言葉を投げかけるたびに、真次は洋子を抱きしめたくなる。
でも、この日差しは暑い。それにこの観衆の前ではかなり恥ずかしい。
スタート1分前。
緊張がみなぎって来る。 真次は深呼吸をした。
皮のツナギを着た、内側は汗だくになっている。
スタート30秒前。
洋子が真次の横から離れて行く。
洋子:「終わったら・・・・・・・・・・」
真次には、その後が聞こえなかった。
カウントされる。 ・・・・・・・5・4・3・2・1・スタート
全てのライダーがマシンに駆け寄る。
真次もマシンに跨いだ。寺井がマシンを押してエンジンを掛ける。
掛からない。寺井はもう一度力強く押した。「掛かった」
真次は、24,5番手辺りまで順位を落として、1コーナーを駆け抜けた。
1周目、ピット前を通り過ぎる時は、22番手。
5周目、20番手。
10周目、18番手。
15周目、17番手。
18周目、15番手でピットに戻ってきた。 寺井と交代、ガソリン補給。
寺井は、ピット直後は30番手まで順位をおとしたが、他も次々とピットインしていったので、20番手
を維持していた。
寺井がピットイン。タイヤ交換とガソリン補給。そして真次と交代。
真次は、ピット出口から猛然とダッシュ。
真新しいタイヤを付け、タイヤが温まるのを見計らって、スパートするつもりだ。
タイヤが温まると、予選より約1.5秒落ちのペースで周回を重ねた。
一時、8番手まで追い上げ、その後はタイヤをいたわって11番手に落とした。
混戦状態だった。
寺井と2度目の交代。 寺井は予選時のような走りを見せ、好調だった。
ピットでは、真次はデレクターチェアーに座り、洋子が横で団扇を煽っている。
真次:「あーーーーーーー! 暑!」
洋子:「ちゃんと、煽ってるやん。 がまんして!」
真次:「さっちゃんとちがうの?」
洋子:「さっちゃんが代わってほしいって!」
真次:「そか! ほな、洋子でがまんしよ。」
洋子:「『がまん』なん!」 いまにも真次をしばきそうだけど、がまんした。
真次:「しばかれるっと思った」
洋子:「今は、しいひんの。」 「後でたっぷりね」
あまりにも無防備な真次に、洋子もためらった。
真次:「洋子!着替えたい。」
洋子:「Tシャツ替えたやん!」
真次:「下も。」
洋子:「もう!」
洋子は、バスタオルを被せて、真次のトランクスを脱がせた。
洋子:「はい、ちゃんと履き。」
真次:「なんでバスタオル?」
洋子:「あんたの、『粗品』他人に見せられへんやろ」
悦子たちの爆笑を誘っている。
悦子:「まるで、子供やな~」
悦子:「しーんちゃ~ん、用意して。 寺井帰ってくるし」 完全に監督気分でいる悦子。
洋子が真次のツナギを着るのを手伝う。 準備完了。
寺井が帰ってきた。ガソリン補給のみで真次と交代。
真次は、ピットを離れた。 洋子は祈ような表情で見送る。
逆にピットでは、さっちゃんが寺井に、洋子がしていた事をしている。
真次は5周ほど走ると頭がもうろうとしてきた。
ピット前を通り過ぎるたびに、ピットサインよりも洋子の顔を見て、我を返した。
もう真次には、何位を走っているか判らない。
何周走ったのだろう、洋子が叫んでるのが見えた。ピットインのサインだった。
次の周、ピットインしタイヤ交換とガソリン補給そして、寺井と交代した。
洋子は、真次の汗をタオルで拭き取った。ツナギを脱がせ、扇風機の前に干した。
先程と同じように、洋子は真次の前で団扇を煽った。
洋子:「サイン、気づかへんかったん?」
真次:「うん・・・・頭がぼーっとしてな。」
洋子は自分のための水を真次の頭にかけた。
真次:「あーーーー! 気持ち、えーわー」
真次:「走ってる時かけてほしいな。」 ちょっと冗談を言った。
洋子:「よかった。真次がまともになって。」(笑)
真次:「俺のまともって、何や!」
洋子:「真次が、しょうもない事言ってる時や」
真次:「まーえーわ! ゆるしたろ」
洋子と冗談まじりに会話をしていた時、真次が気づいた。
真次:「洋子、さっちゃんにお前と同じように寺井に手を振るように言って」
洋子は、すぐ走り出しさっちゃんにその事を伝えた。
が・・・・、しかし、遅かったか・・・・。寺井が戻って来ない。
場内アナウンスで、シケインで2台が接触して転倒した事を伝えた。
さっちゃんは、涙を流していた。洋子がけしかけた。
さっちゃんは、涙を流しながらシケインの方へ走った。 その後を悦子さんも走った。
案の定、寺井はシケインでもつれて転倒していた。
寺井には、マシンを起こし、押すのがやっとの感じだ。
さっちゃんが、シケインにたどり着いた。
さっちゃん:「雄!(寺井の名前) 走って!」泣きながら叫んだ。
寺井は、さっちゃんの声が聞こえたのか、押しがけに成功しスロー走行ながらピットへ戻ってきた。
真次は、寺井の転倒を耳にして、走りだす準備が出来ていた。
真次:「寺井! 大丈夫か? あとはまかせとけ!」 最後の交代となる事を自分にも言い聞かせた。
「湯沢さん!マシンは?」
湯沢:「フロントフォークが曲がってるかもしれんけど、お前やったらいける」
真次は、ゴールまで走りきる。真次はマシンに跨り洋子に伝える。
真次:「たのむわな」
洋子:「うん!」
真次は、時間にして後40分ほど、寺井が転倒したので順位がかなり下がった。
だが、「もうそんなのどうでもいい」
『ただ、みんなと歓びを分かち合いたい。』
『親友、寺井を祝福したい。』
『洋子を抱きしめたい。』
ピットの前へ帰って来るたびに、洋子が手を振る。洋子が叫んでる。洋子の笑顔が見える。
真次は、それだけのために周回を重ねた。
最後の周だろうか、洋子の他に、寺井が見える。さっちゃんも見える。湯沢さんも悦子さんもみんな・・・・
その次の周に見た時は、全員、手を振ってる。
ゴールした。 ・・・・・・・・順位は?
もちろん、入賞にも至らない。完走はした。 ただ、ピットへ早く帰りたい。
ピット前には、全員が出迎えた。
真次は、ゆっくりマシンを止め、ヘルメットのシールドを明けた。
まだマシンに跨っている真次に、洋子が抱き付いてきた。真次はマシンと洋子を支えなければならなかった。
洋子:「ありがとう。・・・」 涙を流していた。
真次は、マシンを湯沢に預けた。洋子は真次から離れようとしない。
寺井:「真次! おめでとう」
見渡せば、さっちゃんも悦子さんもみんな泣いている。 真次はまだ実感が沸かない。
抱き付いてる洋子に真次が、「洋子、脱がせてくれ。暑いし」
洋子:「あっ、ごめん」涙を拭いながら、真次のツナギを脱がせかかった。
真次:「湯沢さん! 順位は?」
湯沢:「たぶん、21位や。 正式にはオフィシャルから連絡もらうけどな。」
「真次も寺井も十分がんばった。十分や。 今晩は祝杯や~!」
真次のツナギは脱がされたが、頭は朦朧として、胸にしがみ付く洋子を支えるのに精一杯だった。
寺井:「真次!ごめん。こけてしもた。 もう、ふらふらやった。」
真次:「寺井、俺もや。 もしかしたら俺がこけてたかもしれんねん。」
「どっちかが、こけたんや。しゃーない。 終わったんや」
寺井:「俺より、周回多かったんやけど、真次はこけへんかったな」
真次:「あー・・・・・・、こいつのおかげや」胸に抱き付いてる洋子の頭を撫でた。
いつのまにか、さっちゃんも寺井に抱き付いて泣いている。
岡崎と広川は肩を叩きあって泣いている。
湯沢さんは、悦子さんに抱き付いて泣いている。
長い、長い1日が終わった。 夕日が沈みだす。
ピットの片付けが終わった頃には、もう暗くなっていた。
その日は、帰ることはせずみなテントに泊まる事にした。
テント前にシートを敷いて、缶ビールで祝杯をあげる事にした。
つまみは、露店にあったたこ焼き、やきそば、など・・・・。
みんな疲れていたので、動くのが面倒であった。
全員:「カンパーイ」
湯沢:「真次、寺井、完走おめでとう」
広川:「感動しましたよ、師匠が悦子さんに抱きついた時。」(笑)
悦子:「そこ~!」
みんなが、談笑していたが真次は限界が来ていた。
張り詰めた糸を緩めた感じで、疲れと睡魔が襲ってきた。
洋子:「真次、横になったらいいで」
真次は、洋子の膝を枕にして寝てしまった。
寺井も早々にテントに引き上げた。
朝、真次が目を覚ました。テントの中だった。湯沢や岡崎に運ばれたのだ。
大の字に寝ていた真次の肩に、洋子が寄り添うように寝ていた。
真次は起きる時に、洋子を起こさないようにしたが、腕を抜くのに頭を床に落とした。
洋子:「いたー!」 頭を押えながら目を覚ました洋子の目に真次の顔が映った。
洋子は、平手を打った。
真次:「お・ま・え~! 朝から何すんねん」
洋子:「あたしのほうが、痛かったもん。 先に寝てしまうしー。」
真次:「ごめん。疲れたんや」
洋子:「もう、生き返った? 今晩、お父ちゃん出張で居いひんねん」と、真次の股間を触った。
そこを、悦子が除き見していた。「あんたら、朝から元気やな~。」
洋子:「悦子さん、変なとこ見んといてー」
悦子:「うちの旦那は今日も元気やでー」
真次:「どうでもえーし。早よ閉めて。」
悦子はテントを閉める時に「もう帰るし、支度しいやー。」
洋子も真次もテントの中で着替えて、外に出た。
湯沢:「真次! 朝から元気らしいなー」
洋子:「もう!してへんし!」みんなにからかわれて、テントを片付け岐路についた。
洋子の店に着いた時、まだ昼すぎだった。
湯沢も自分のバイクショップを開ける気はないので、みんなで再度祝杯をあげようとピザを注文。
ビールで祝杯をあげた。
昼間から飲んだせいか、全員酔いが回るのが早く、元気なのは、酒の強い悦子さんだけだった。
夜、10時を回り、少し酒が抜けた状態でみんな帰っていった。
洋子は、店を閉め店舗の2階の1室で寝る事を真次に言った。
真次:「寝かせてくれるの?」
洋子:「朝にはね!」
二人は部屋に入って、しばらく抱きあった。
真次は洋子の服をひとつづ脱がせる。Tシャツ、ミニスカート、ブラジャー、ショーツ。
裸になった洋子をまじまじと眺めた。肩に載せたセミロングの髪、小ぶりながら上を向いた乳房、キュッと
締まったウエスト、横に張り出したヒップ。
洋子:「はずかしいやろ、真次も脱ぎ!」
洋子も真次の服を脱がせた。最後にトランクスを下ろすと、顔を真次の股間に寄せて抱擁した。
真次は爆発寸前だった。
真次:「洋子、横になろ・・・・。」
洋子:「うん」
最初、真次が上になり、洋子が何度か登り詰めると洋子と上下を入れ替わった。
そのまま真次が果てると、洋子は真次の上に覆いかぶさった。
洋子:「真次、このままでいたい・・・・」 洋子はそのまま眠ってしまった。