第4章 嫉妬
洋子の店に行くと・・・
第4章
嫉妬
店の扉のガラス越しに洋子の姿が見えたが、カウンターの中の洋子は少し沈んで見えた。
「カチャ」真次が扉を開け、洋子を見ると洋子は泣いていた。
真次:「洋子! どうしたん?」
洋子は洗いかけのグラスを置いといて、真次に抱きついてきた。
洋子は、真次の胸に顔を押し付けて泣いてるだけで、まだ言葉を発して無い。
真次は泣きじゃくる洋子を抱いたまま何も言わず、セミロングの髪をなでていた。
5分ほど経過したが、まだ洋子は真次の胸から離れない。
見かねたさっちゃんが代わりに、キッチンを片付け始めた。
しばらくして落ち着いたのか、洋子は顔を上げ指で顔をぬぐった。
洋子:「さっちゃん、ごめんな。ありがとう」
「真次・・・・・おかえり」
真次:「どうしたん?」
洋子:「うん、今は、・・・まだ、言えへん・・・・・」
真次:「そうか・・・・ほな、今日は早よ帰ろか」
寺井:「そやな、さっちゃん送ろか?」
3人は、帰り始めたが、洋子は真次の腕を掴んで離さない。
真次:「俺は、居たほうがええんか?」
洋子:「うん。」と首を縦に振った。
真次:「寺井!俺の荷物下ろしてくれ」
寺井:「おう。洋子ちゃん頼むわ」
寺井は真次のバックを下ろし、さっちゃんを軽トラの横に乗せて走りだした。
喫茶『Kai』の中は真次と洋子の二人だけになった。
洋子:「どっか行きたい」 ぼそっ、と洋子は真次に伝えた。
真次:「わかった、車、裏の駐車場か?」
洋子:「うん」
真次:「ほな、店閉めよ。 腹も減ってるやろ」
洋子:「うん」
二人は店の戸締りをし、裏の駐車場まで歩いた。洋子は真次の腕にしがみついたまま。
洋子の赤い軽自動車に真次がハンドルを握り、横に洋子がうつむいたまま座った。
真次:「ごめんな。洋子残して行ったからな」
洋子:「うんうん。違うの。真次は悪くないの」
真次は、一番近いファミリーレストランへは行かず、15分ほど離れたインターチェンジの近くの
ファミリーレストランへ行った。
二人ファミリーレストランの中へ入り、向えどうしに席に付き、ハンバーグ定食を真次が2人前頼んだ。
真次:「落ち着いた? どうしたんや」優しい口調で洋子に尋ねた。
洋子:「あのね、恭子が来たの。 それで、真次と付き合ってた時の事をいろいろ聞かされて・・・・」
「ひどいこと言うの。 真次の事、あたしの事、寺井くんの事、さっちゃんの事」
「あの人、最低!」 大声で言った。 客はあまり居なかったがみんなこちらを向いていた。
真次:「もう、恭子は終わってるんやで。あいつから離れて行ったって洋子も知ってるやろ」
洋子:「恭子、別れたみたい。まだ真次が好きみたい」
真次:「俺はなんとも思ってへん。お前もおるし」 少し照れたように言った。
店員:「おまちいたしました。ハンバーグ定食2つですね。以上でよろしかったでしょうか。」
真次は指でサインし、店員はレシートを置いて立ち去った。
洋子もお腹は空いていたのか、箸をとり食べだした。真次はすでに半分ぐらい食べている。
真次が食べ終わったころ、3分の2ほど洋子は食べて真次と皿を交換した。
真次が洋子の残りを食べていると、洋子が真次の言った。「今日、帰らへん」
真次は、堰こんだ。水を一口飲み。「なんで?」
洋子:「帰りたないもん。 真次、一緒に居て!」 また、大声で言った。
真次:「おまえ、声でかい。・・・・・・・わかった!」
真次も洋子の不安の様子をほっとく訳にはいかなかった。
真次が残りを食べ終え、「出よか?」 洋子はうなずいた。
真次が、レジを終えると、後ろに待っていた洋子と一緒に店を出た。
真次は、ファミリーレストランよりすぐ近くのラブホテルへ車を入れた。
部屋に入るなり、洋子はキスをしてきた。真次はそれに応えベットに倒れこんだ。
その日の洋子は、いつもより真次を求めてきた。真次も激しく時にやさしく洋子を愛した。
サーキットを走ってきた真次は汗まみれだったが、洋子にはそれも快感だった。
1時間ほど愛しあったころ、真次が果てた。
洋子は、真次の胸に頬を寄せすぐに眠りに着いた。真次も疲れていたので洋子を腕で寄せて眠りに着いた。6/
翌朝、7時ごろ二人はほぼ同時に目が覚めた。洋子は真次の胸に頬を寄せたまま目が覚めた。
洋子は、真次が汗まみれだったことに新たに気づいてバスルームの浴槽にお湯を張りに行き、冷蔵庫から
水を1本だけ取り出した。ベットに戻った洋子はボトルを真次に渡し、真次はそれを一口、口に含むと
そのまま洋子の口をふさいだ。
洋子:「おいし」にこっと笑った。二口目は、洋子が含み真次の口を塞いだ。
真次:「歯、磨かんと口臭い」
洋子:「あたしより真次のほうが臭いー」 「バシッ」洋子は笑いながら真次の胸を叩いた。
真次:「ほんまにー! しばいてばっかり」でもいつもの洋子に戻って喜んでいた
真次:「風呂!湯はいったんちゃう」
洋子:「あっ! 真次!一緒に入ろ」
洋子は真次の手を取りバスルームへ引っ張って入った。洋子は湯を張る前にバブルバスを入れていたので
浴槽は泡だらけだ。
洋子は、シャワーもせずそのまま浴槽に入った。
洋子:「真次、グラビアアイドルみたいやろ」
真次:「あほ、グラビアアイドルは水着着ては入ってんねん。おまえすっぽんぽんやん」
洋子:「もう!」
真次も浴槽に入ると、洋子は真次に覆いかぶさって抱きついた。
洋子:「真次、まだ・・・・出来る?」
真次:「しよか」
二人は浴槽の中、泡だらけのままで二度目をした。
シャワーを、二人で浴びながら洋子が「真次、足 どう?」
真次:「うん、大丈夫とちゃう」
洋子:「よかった」
シャワーを終えバスタオルでお互いの体を拭いている時、真次が気づいた。
真次:「洋子、避妊してへん。 安全日か?」
洋子:「知ってる。安全日ちがうけど・・・いいの真次やし・・・・・・・」
真次:「俺はえーけど」
洋子は、昨日の事もあり独占欲が出てきたように思えた。
二人は、服を着てチェックアウトし、車に乗り込んだ。
洋子の店に行く途中
洋子:「真次、今日リハビリ行くの?」
真次:「いや、もう毎日行く必要ないで。2日置きやったら」
洋子:「今日、店にずっと居て。また、恭子来るかもしれへんし」
真次:「えーで。コーヒー、ご飯付きやったら」
洋子:「あたしも付いてるで!」
真次:「あっ、おまけやな」
洋子:「なんでやねん」
でも、洋子はうれしそうにはしゃいだ。
店に着くと、店の中からやはりカイが吠えていた。
洋子が店の鍵を開けると、カイは吠えるのをやめ洋子に飛びついた。
真次は少し後ろで見ている。噛まれたくないからだ。
洋子は、ホットコーヒーと暑くなってきたからアイスコーヒーを多い目に作った。
真次は、店の掃除とテーブル拭き。
真次がテーブルを拭き終えた時、藤田くんが来た。
藤田:「おつ、今日はめずらしいちゃんと店開いてるやん。 真次もおるし」
洋子:「おはよっ!藤田くん。あったしまえやん、たまには開いてるで(笑)」
藤田:「真次、お前恭子と付き合ってたんちゃうんか?」
真次:「2年前やで、とうに終わってる」
藤田:「恭子は、近藤と付き合ってるみたいやったけど、恭子は、真次、
お前が彼氏やて近藤に言うたらしいで。お前あぶないぞ、気を付けろよ」
「黒井が、一緒にいたから全部聞いてたらしいけど。あいつら最初から好きでもないのに
付き合ってたみたいや」
真次:「そやけど、あの時相手は近藤と違う知らんやつやけど、俺の前からそいつの車に乗って行きよったんやで。それから、俺から連絡とったら、別れよって言われて・・・それっきりや」
藤田:「真次、お前と洋子ちゃんの仲は俺がよく知ってるけど、あいつらはそうとちゃうで
真次は、昔恭子ちゃんと付き合ってたし、近藤は洋子ちゃん狙ってこの店出入りしてたやろ」
「近藤は、洋子ちゃん。恭子は真次。って具合にな」
真次:「そしたら、近藤は俺、恭子は洋子を狙って何かしてくるんか?」
藤田:「ほんまに気を付けろ。黒井は止めてるけど近藤は一人でもやるで」
「真次、洋子ちゃん四六時中守ってやらんと、ほんま危ないぞ」
真次:「近藤、あいつ最近やーさんと付き合いあるみたいやけど、あそこの親父が嫌ってるやろ」
「それに、昨日、恭子がこの店来て、洋子にケチ付けに来たみたいやけど」
藤田:「近藤より今は、恭子のほうがあぶない。レディース(暴走族)のサブになったみたいやな」
真次:「尾藤のチームと結束割れたんか?」
藤田:「尾藤と恭子のヘッド『律子』が別れたらしい。律子は、まだ『蘭』ヘッドに納まってるけど、
内部が荒れてるみたいでな」
「尾藤のはサブに黒井がいて、その下に近藤がいるんやど、近藤が脱退して
真次、お前を殺りにくる可能性はあるな」
「尾藤と黒井は真次の事認めてるから、やつらは逆に真次の見方やぞ」
真次:「そうか、藤田くん、ありがとう」
洋子:「真次ー」
藤田:「洋子ちゃん、真次から離れんときや! 真次がうらぎったら俺んとこ来たらええし」
藤田は、コーヒーを飲み終え、シビックに乗って立ち去った。
洋子:「真次ー・・・、今晩も一緒に居てくれへん」
真次:「えーけど、金続かへんで。このままやったら」
洋子:「あたしも、お金工面するし。・・・ 怖いもん」
真次:「そや!なんとかしなな。 寺井にも協力してもらお」
洋子:「真次、レースにもお金いるやろ、こんなことで真次に迷惑かけたないいねん」
真次:「洋子、金はないけど、洋子は『洋子』レースは『レース』 でも今はお前を守るしな」
洋子:「真次!」洋子は真次に抱きつた。
その時、恭子がいきなり入ってきた。 7/
恭子:「真次! あたしがあんたの女とちゃうんか!」
真次は洋子を抱いたまま恭子に受け応えた。
真次:「恭子お前、俺から逃げたやないか! それに今は、この洋子なんや」
恭子:「あたしは、連れさらわれたんやで、なんでわからへんの」
真次:「俺が電話したときも、別れるって言うたんは恭子からやで」
真次は洋子を抱いたまま、恭子に顔を合わせようとしない
真次:「お前、俺が洋子と付き合う前に近藤と付き合ったやないか。 ちゃうか!」
恭子:「あたしは、あたしは・・・・・」恭子は泣いていた。
「後で、気づいたんや・・・・」
「尾藤と律子が別れた時に・・・・」
真次:「お前、逆恨みやろ。洋子に関係ないやないか」
「俺は、今は洋子なんや。恭子は忘れた。」
「わかってくれ」
恭子:「わかってんるんやけど・・・」
「なんか、二人仲いいとこ見かけると腹たったんや」恭子の目からは涙がぼろぼろと零れ落ちていた
「あたしの時、そんなんなかったやんかー」恭子は座りこんで泣き出した。
洋子が、真次の腕を払って恭子の元へ行った。
洋子:「恭子さん、ごめんなさい。でも、あたしも真次が好きなの」
洋子が、恭子を慰め恭子立ち上げようとした時、恭子の右手に光るものが真次に見えた。
真次は、とっさに洋子を恭子から離した時、恭子の右手に光ものは真次の左肩に付き刺さった。
恭子も、洋子もまさかっという表情に。
真次の肩から血が流れだした。ナイフは刺さったままだ。
恭子は、すわりこんで真っ青になっていいた。
洋子は、真次の下敷きになり最初は状況がつかめなかったが、すぐに読み込めた。
洋子:「真次ー! 真次!」
その時ちょうど、洋子のお父さんが店の仕入物を届けてくれるとこだった。
お父さん:「なんや? 真次くん! 真次くんどうした」
恭子:「ごめんなさい。 ごめんなさい。」 恭子も我に帰って事の大きさに気づいた。
洋子:「お父さん、救急車よんで! 急いで。 真次が・・」
すぐに救急車が来た。パトカーも後から来た。
洋子は真次の付き添いで救急車に乗り。恭子は、パトカーに乗せられていった。
第5章
バースデー
真次は、出血が多かったため救急車の中で気を失っていた。動脈を傷つけたみたいだ。
真次の肩は縫合を終え、麻酔で眠っていた。
洋子は側を離れようとはしなかった。
何時間眠ったか?真次は目を覚ました。目を開けると洋子の顔が映った。
真次:「洋子」
その瞬間、洋子はぼろぼろと涙を流した。
洋子:「真次! あーん!」 洋子は真次に抱きついた。
真次:「いたっ! 痛い。痛い」
洋子:「ごめん」
洋子:「真次、ありがと。」
「あたし一人やったら・・・・・、あたしが恭子に刺されてたんやな」
真次:「お前、怪我なかったんか?」
洋子:「あたしは大丈夫、かすり傷ひとつないで。真次が守ってくれたし」
「真次、あたし真次が退院するまでここに泊まるし。決めた」
真次:「あほ、何ゆーてんねん。洋子は帰らなあかん。お父ちゃんに怒られるやんか」
その時、真次の姉が入ってきた。
姉:「真次、またか。 もう、えーかげんにしーや。」
「お母さんも、お父さんも怒ってるで」
真次:「しゃーないやん。不可抗力やもん」
洋子:「お姉さん、ごめんなさい。あたしのせいなの」
姉は「ブツブツ」言いながら、着替えを洋子に渡し、睨みつけて帰っていった。
しばらくして、寺井とさっちゃんが来た。
寺井:「真次、大丈夫か?刺されたんやて」
真次:「うん、まあな」
寺井:「女やろ!」
洋子:「もう、黙っといて」
さっちゃん:「あんた、いらんこと言わんとき」
真次:「寺井、洋子は怖いやろ」
寺井:「ほんまや」
洋子:「真次、しばくで!」
真次:「はい、もう言いません」
小声で「寺井、おまえがいらん時に言うしやんけ」
寺井:「悪い」小声で後手で合図した。
寺井:「どれぐらい入院や」
洋子:「まだ、なんとも言えへんけどたぶん1週間ぐらいかな」
寺井:「次の日曜の練習走行は無理やな」
真次:「俺は行くで、こんど中山やろ、俺は無理やけどお前一人で走れや」
「セッッティングお前に、合わせたらえーやんか。いっつも俺よりやしな」
寺井:「それはえーけど、車にマシン乗せたり下ろしたりするの俺一人は無理やしな」
真次:「力もちいるやんか、目の前に」真次は洋子を見た。
洋子:「パシーン!」真次の頬に赤い手形が付いた。
寺井:「今度は、顔に包帯巻かれるな」
さっちゃん:「もうやめときや」
寺井:「もう、2,3日様子見よか」
真次:「そやな」
さっちゃん:「寺井くん、帰ろ。店片付けなあかんし」
寺井:「そーや。真次が救急車で運ばれたって聞いたし、あわてて出てきたんやしな」
真次:「悪いな。ついでに洋子も連れて帰ってくれへん」
洋子:「いやや! 帰らへん」
真次:「これやし、たのむわ」
洋子:「・・・・・・・・・いや」
さっちゃん:「洋子、真次くんの側にいたいんやからいいやん」
真次:「また、しばかれるしな」
さっちゃん:「真次くん。うれしいくせに。」
寺井:「洋子ちゃん居たいんやから、ちょうど個室でよかったやん。 ひっひっひ」
寺井は、やらしい笑い方をした。さっちゃんも笑ってる。
洋子:「明日来たら、真次を骨だけにしといたるわ」洋子は怒ってた。
結局、洋子は真次の付き添いで残り、二人は帰っていった。
真次は洋子の顔を眺めて、「しゃーないな。洋子、お前着替えぐらい取ってこいや」
洋子:「大丈夫。お父ちゃんに頼んで明日持って来てって電話したもん」洋子はうれしそうだ。
真次:「そや、寺井に近藤のこと言うの忘れた。 洋子、後で公衆電話まで連れてってーな」
洋子:「やっぱり、あたしが必要やろ。ちゃんと尿瓶も借りてるし」
真次:「あほ、それは自分で出来るわ」 でも真次の腕は動かせない包帯でぐるぐる状態だ。
洋子:「看護師に任せる?女の看護師だけちゃうよ」
真次:「いえ、洋子さんにお願いします」
洋子:「つまんであげるしな」洋子は笑っていた。
1時間ほど経過して、洋子は真次を公衆電話まで連れて行った。
洋子がダイヤルして、受話器を真次の耳にあてて洋子は持ち構えた。
「プルッルル、プルッルル、プルッルル、プルッルル、・・・・・・・・・」
真次:「出ーへんな?」
洋子:「ほんま?」洋子が受話器を自分の耳にあてた。「プルッルル、プルッルル・・・・・」
「えーーー!ほんまや。 さっちゃん、その気あったんかな」
真次:「やつも、童貞卒業かな」
洋子:「えー!寺井くんって、童貞やったん。きも!」
真次:「明日にしよ。」
洋子は受話器を置いて、真次と病室に戻った。
洋子:「真次、もう寝る?」
真次:「うん。洋子は?」
洋子:「真次のTシャツ貸してな。あたし、明日まだこの服きなあかんし」
と言うとさっさと服を脱ぎ出した。洋子は、ショーツのみになり真次のTシャツを身に付けた。
洋子:「どうしたん?」と真次の体の異変に気づいた。
「もう、真次わ!ここでは、出来ひんやろ。ちゃんと退院したらな」
真次の股間を刺激して、キスをした。「お・や・す・み」
洋子は、病室の電気を消して付き添い用のベットにもぐりこんだ。8/
翌朝、真次が目を覚ますと。洋子はすでに起きていて売店で新聞とコーヒーを買ってきた。
洋子:「おはよう。どう傷の具合?」
真次:「早いな、洋子。」「寝難いわ、体動かせへんし、痛くはないんやけど」
洋子:「そう、よかった。 はい、コーヒー」
紙コップに入った熱いコーヒーを、洋子は真次の口元に持っていき、ゆっくり飲ませた。
真次:「熱っつ! アイスなかったん」
洋子:「うん。売り切れ」
と、看護師が入ってきた。「おはようございます」女性の看護師だ。歳もあまり変わらない。
看護師:「朝食は後で詰め所の前まで取りに来てくださいね」
「それから、点滴いたしますんで。」
真次:「はい、・・・・」真次は洋子の顔色を伺った。(余計な、ちょっかいはだせない)
洋子:「真次の好みやな」
真次:「えっ! そんなことないで」しらを切った。
洋子:「居といてよかった」 (真次は思わなかった。)
朝食を洋子が、取りに行き洋子は売店でパンを買ってきていた。
洋子が両腕が自由にならない真次に、朝食を食べさせ終わると。真次は、トイレに行きたくなった。
洋子:「どうしたん?」
真次:「・・・・・・」顔が赤い。
洋子は気づいた。「そっか!」
洋子は、真次のシーツを足元から捲くり上げ、「真次、どっち?」
真次:「・・・・・・・・・・・両方。」
真次は、洋子に感謝していた。ただ、やっぱり恥ずかしかった。もう、洋子にあまえるしかない。
その後、看護師が来て熱を測り脈を採って、点滴をしていった。
医者の診察もあって、5日ほどで退院出来るみたいで、洋子も安心した。
警察も来て、事情徴収された。ただ、恭子のほうは、それだけではすまないみたいで真次が退院後、
恭子の面会に行くというとこまで話しがついた。
洋子が、近藤の事を警察の人に話すと後日、担当の刑事が来るように頼んでもらった。
真次を、信じてはいるのだがこの体では・・・と洋子も案じているのだ。
真次と洋子は、いろいろと雑談して時間を過ごしていたが。洋子が「あっ!」
真次:「えっ! 何」
洋子:「今週の金曜日、真次の誕生日やん」
真次:「あっ、そっか。 忘れてた。」
「そうか、洋子と同い年になるんやな」 洋子のほうが1歳年上なのだ。
洋子:「ちょっと、おっさんになるんやな」
真次:「うるさい、お前もおばはんやないか」
洋子:「お祝い何にしよ? お好み焼きにしよか?」
真次:「なんでお好み焼きなん? ケーキちゃうの?」
洋子:「真次、甘いの嫌いやん、去年、寺井くんとかとお好み焼きでデコレーションしたって言-てたやん」
「あたしも食べてみたいもん」
真次:「もっと、普通にしてや」
洋子:「いや! さっちゃんに電話しとこ」
洋子は、さっちゃんに電話しにいった。
洋子が病室に戻った時、手には洋子の着替えを持っていた。
洋子:「ちょうど、お父ちゃん来てくれてん」
「さっちゃんにも電話しといたし、楽しみにしとき。真次が退院出来たらやけど」
真次:「俺は、不死身やぞ」
洋子が真次に耳打ちした。「寺井くん、昨日さっちゃんとこ泊まったんやて♡」
真次:「寺井、やったやん」
洋子も真次に抱き付いてキスをした。 ちょうど藤田くんが入って来た。
藤田:「おじゃまやったかな~?」
洋子は慌てて真次から離れた。
藤田:「お前らやっぱ仲えーな。 俺は入る余地ないわ」
真次:「悪い。変なとこ見せて」
藤田:「真次、朗報や。近藤パクられるぞ。」
洋子:「えっ!」
藤田:「昨日、恭子がお前刺して警察に連れていかれたやろ。恭子がほとんど吐いて、近藤の事しゃべりよったらしいで。今朝、尾藤から電話あったんやけど」
「近藤は、『Biregge』辞めて、例のやーさんに入ってるみたいや」
「明日、一斉検挙らしいからな」
真次:「パクられるって、何の件でパクれるんや」
藤田:「『Biregge』おった時から、シャブ(覚醒剤)に手だしてたみたいや」
真次:「それで『Biregge』も辞めたんやな。いや、辞めさせられたんやろ。尾藤はそういうの
嫌いやからな」
洋子:「よかった。 ちょっと一安心やわ」
藤田:「パクられるまでな」
「それより、真次お前はどうなんや?」
洋子:「土曜日には退院できるって。」
藤田:「そうか、それはよかった。後で恭子も面会に行こうって思ってるんや」
「俺も、洋子ちゃん好きやったし、それで恭子をけしかけたもんやし・・・・責任感じてるんや」
洋子:「ごめんね。藤田くんの気持ちに応えられなくて」
藤田:「何べんもいうな。もうわかってるし。そやから見舞いも来れるんやから」
洋子:「藤田くん、真次が退院したら真次のバースデーパーティーするし、来て」
藤田:「おーそうなん!行かせてもらうわ。 真次、早よ治せよ!」
藤田は、見舞いのケーキを置いていったが、洋子がほとんど一人で食べた。9/
退院の日
寺井は仕事をさぼって、迎えに来てくれた。
そのまま、洋子の店でなくさっちゃんの店喫茶『Green Lake』に連れて行かれた。
真次:「お好み焼き出来ひんやん」
洋子:「真次が、普通にしてほしいって言ったやん。そやし、さっちゃんがピザ焼いてくれたんやで」
真次:「お好み焼きやったら、野郎ばっかしで誕生日してるみたいになるしな」
洋子:「あたしは、男か~?」
真次:「いえ、お姫様は違います」
さっちゃん:「あたしのこと~?」
真次:「寺井、なんとかしてくれ」
寺井:「もう、しらん」
真次が主役のはずなのに、肩身が狭く感じた。
藤田くんも来て、5人でパーティーを始めた。
全員:「カンパーイ」
洋子:「ちょっと、待って。 真次は、酒はあかん。 没収~!」
真次:「えー! ちょっとぐらいえーやん」
洋子:「あかんの! 医者に言われたやろ」
真次のワインはコーラに変えられた。
改めて、「カンパーイ」
5人は、それぞれジョークなど飛ばし、夜中まで喋っていた。
みな眠くなり、椅子を並べて眠りだした。洋子も酒が入っていたので寝ていたが、真次は外に出て、
喫茶『Green Lake』の向いに流れる川のほとりに居た。
もう、蛍が2,3匹飛んでいる。
洋子は、店の中に真次が居ないのに気が付いて、外に出てきた。
真次:「洋子か?」
洋子:「どうしたの」
真次:「うん、洋子、蛍飛んでるで」
洋子:「きれい」
真次:「うれしいな、みんなで祝ってくれて。洋子もありがとう」
洋子:「そうや、感謝しいや。あたしのおかげやで」
真次:「はい、お姫様」
洋子は真次が座ってる又の間に背を向けて割って座った。真次は洋子の細い腰を抱き寄せた。