2章 ツーリング
みんなでツーリングに出掛けた
2章
ツーリング
翌朝寺井が迎えに来た。朝の弱い俺は、寺井にバイクのキーを預けエンジンを掛けてもらう。
ブーツを履き、ヘルメットを持って外へ出る。
寺井:「真次、雨降るらいしぞ」
真次:「えーやん、気にしんと行こうや」
寺井:「さっちゃん後ろに乗せるし、降ってきたら引き返すしな」
真次:「ご自由に」
2人で洋子の店へ。洋子は準備が出来ていた。
洋子:「おっそいなー。どうせ真次が起きひんのやろ。寺井君ごめんな」
寺井:「そのとうり」
真次:「・・・・・・行こか!・・・・」
寺井は、早々とさっちゃんの家に向った。
寺井はさっちゃんの事を好きだけど、まだ付き合ってはいない。
アップダウンの続くワイディングロードを抜けダムのほとりへ来た。
休憩
洋子:「真次! 早よ止まってくれなおしっこ漏れるやん」
さっちゃん:「あたしも~!」
ふたりは、そそくさとトイレへ走りだした。
寺井:「真次、洋子ちゃんとどうすんねん」
寺井は洋子と結婚するか聞いていた
真次:「俺、無職やしな」
寺井:「運送屋しいや、紹介したるし」
真次:「いや・・・! そうゆう仕事向いてへんし」
寺井:「そやけど・・・・洋子ちゃんとどうすんのや!」
「このままではかわいそうやで」
真次:「そらー、考えてへんことないけど」
「とりあえず先立つもんないとなー。 店もあるし・・」
「就職するにしても、足! 先に直さんと」
真次:「ぼちぼち、バイトは出来そうやしな。 リハビリはまだあるけど・・・」
「また、洋子いいひん時にそうだんするわ」
寺井:「・・・うん」
そんな話しをしてると洋子とさっちゃんが帰ってきた。
洋子:「なんの話ししてんの? たばこ頂戴」
洋子は真次のたばこを取り上げ自分で吸いだした
しばらく、雑談した後4人はバイクで走りだした。
1時間半ほど走って、海に着いた。
そこは、波が穏やかなな内海となっていた。
洋子:「うわー、誰もいいひん。 水着もってきたらよかった」
真次:「あほー、まだ冷たいやろー」
洋子:「日光浴だけやんか」
さっちゃん:「あーん!ほんま、持って来たらよかった。」
寺井:「服ぬいだらええやん。 ひっつひっつっひ」
さっちゃん:「やらしー。あんたには見せへんし! ふん!」
洋子:「あーあー、嫌われよった」
洋子はそういいながら、ブーツを脱いで浜に入っていった。
洋子:「真次も来てみー、気持ちえーし」
真次は言われるままに浜に足をつけた。洋子は、はしゃいで水を真次にかけ、
二人で水の掛けあいとなった。
寺井とさっちゃんは、さっきの事で一言もしゃべらず洋子と真次を眺めていた。
洋子と真次が二人が待つ場所へ戻る時にはびしょ濡れになっていた。
さっちゃん:「二人とも、びっしょびっしょやん」
「あたしもそういう人いたらええのになー」
真次:「寺井が、 おるやん」
洋子が、目で真次に合図
真次:「こんなんと一緒にいてたら疲れるで」
洋子:「もう!」洋子が真次にシッペ
4人は、浜に横にになり雑談をしてすごし、又バイクに跨って帰路についた。 3/
第3章
サーキット
それから数日後、寺井から真次へ電話
寺井:「真次、次の次の日曜日練習走行キャンセル出たし走れるで!」
真次:「おう、行くぞ! ほな今度マシン整備しよか」
寺井:「軽トラ借りとくし、おまえの家の前でやろか」
真次:「OK!」
次の日曜日。 朝8時
寺井が真次の家に、オートバイレース出場用の「YAMAHA FZR400」を軽トラックに積んで来た。
その日ばかりは真次も、朝早くから起きていた。
二人は、軽トラックからマシンを降ろし、メインスタンドとなるジャッキを敷きFZRをばらす(整備をする)
準備をした。
真次:「前に走った時、8000rpm以上でばらつきよってん」
「メインジェットちょっと上げて高回転向きにしいひんか?」
寺井:「真次はえーけど、俺はそんなことしたらタイム落ちるで」
真次:「そやけど、この前のタイムやったら予選通らへんで」
寺井:「おまえ、回すからな。 真次のタイムやったら予選はいけるやろ」
「そやし、俺にあわせてくれや たのむ!」
真次:「前、俺がよかった時より5番下げてるやん。そやから、1,2番上げてくれ」
寺井:「そやな、予選まで後2回走れるしな。真次のタイムまで下がったら予選もあぶないしな」
二人で買った、鈴鹿4時間耐久レース用のマシン。
カウルを外し、ガソリンタンクやシートを外して、エンジンをばらしにかかった。
キャブレター、マフラーを外すとただのポンコツのバイクだった。
冷却水を抜き、エンジンオイルも抜いた。
寺井がキャブレターをエアーブローで清掃し、真次はシリンダーヘッドを外しカーボン除去を
していた時。いつのまにか昼を回っていたのか、向こうの方から洋子がバスケットを持って
歩いてきた。
洋子:「お昼、まだやろ」
真次:「おー、洋子! めしか?」
洋子:「あんた、食べんとく? 軽量化やで」
真次:「冷たいやつ」
寺井:「洋子ちゃん、ありがとう」
真次:「寺井の分は、さっちゃんが持って来るんちゃうの?」
洋子:「なんで、あんたはそーやっていじめるの!早よ、手洗っておいで」
三人マシンを前にして、昼食をとった
洋子:「今度の日曜日、あたし行けへん。 おとうちゃんに止められてんねん」
「ごめんな(真次のそばに居たいのに・・・)」
真次:「えーで。しゃーないやん。寺井、さっちゃんに頼めへんかな?」
寺井:「なんで、俺にゆーねん。 洋子ちゃんは友達やろ」
真次:「おまえ。 好きなんやろ」
「ほな、タイムキーパー頼むのと一緒に、『好きや』ってゆーたらえーやん」
寺井:「おまえなー ・・・・」
洋子:「じゃ!寺井くんに任せるわ。 真次もたまには気が利くやん」
真次:「そやろ 愛のキューピットやねん!」
寺井:「断わられたらどうしょう」
三人は昼食を終え、洋子は帰って行った。
寺井:「真次・・・・・・・」
真次:「なんや?????」
寺井:「・・・・・・・・・・・」
真次:「なんやねん!」
寺井:「さっちゃんのことやけど」
真次:「うん」
寺井:「さっちゃんな、他の男と一緒にいるとこ弟が見てたんや」
真次:「それが? 洋子もたまにあるで」
寺井:「さっちゃん、そいつの事好きなんかな」
真次:「そんなん気にするな。ぶつかってみろや」
寺井:「俺は、真次みたいにもてへんしな。度胸もないで」
真次:「俺は、モテルとは思わへん。洋子だけで十分や。電話してみようや」
寺井が電話をとりダイヤルした。
プルッー。プルッー。プルッー。 ガチャ
さっちゃん:「はい、喫茶Green Lakeですが」
寺井:「さっつ!さっちゃん! いっ!今大丈夫」
さっちゃん:「あっ!寺井くん」
寺井:「おっ!お願いがあるんやけど・・・」
さっちゃん:「何?」
寺井:「こっ!今度の日曜日、よっ!洋子ちゃんの都合が悪いし鈴鹿で、たっ!タイムキーパーしてくれへん」
寺井は、どもりながら話した。
さっちゃん:「うん、えーよ。 迎えにきてな。朝何時に出るの?」
寺井:「あっ、朝は、5時。むっ、迎えに行くし」
さっちゃん:「わかった。じゃ店あるし」ガチャ 電話が切れた
真次:「なんで、聞かへんねん」
寺井:「緊張した・・・」
真次:「まーえーわ。目的はタイムキーパーやしな。俺が走ってる間に聞けるやん」
寺井:「うん・・・・・」
そうのこうの会話をしているうちに、整備が終りマシンを寺井の軽トラックに載せた。
マシンを寺井の家の倉庫に片付け、二人は洋子の店に行った。もう暗くなっていた。
店は、客が多かった。
洋子:「真次!えーとこに来た。やきめしとカレーライス2人前ずつ創って」
真次:「えー!!!! 俺も腹減ってるのにー・・・」
しぶしぶ、真次はカウンターに入りやきめしを創る用意をしだした。寺井はかろうじて、カウンターに席が
ひとつ空いていたので、水だけで座っていただけだった。
カレーは、缶詰を使うが、やきめしはほぼオリジナルである。洋子が創るのと真次が創るのは味がかなり
異なる。
寺井:「二人並んでカウンターの中に居たら夫婦みたいやな」ぼそっっとつぶやいた。
洋子:「え! 何! 寺井くん?」
真次には何も聞こえない。やきめしを作っている音で消されている。
客も引け、店の中が落ち着いたころ。さっちゃんが来た。
真次も、洋子も後片付けに追われていた。
さっちゃんも、片付けに手伝いに入りやはり、寺井も片付けに入った。
片付けも落ち着き、全員カウンターに並んで座り先程創ったカレーとやきめしを食べた。
さっちゃん:「おいしい!このピラフ?炒飯? 前と味違う」
洋子:「真次が創ったんやで。前さっちゃん食べた時は、あたしが創ってん」 洋子はニコニコしてる
さっちゃん:「真次くん、うまいなー」
真次:「これだけやねん。洋子が褒めてくれるんわ」
4人共食べ終わった頃は、午後10時を回っていた。
寺井:「俺、帰るわ。明日仕事やし」寺井は仕事が朝早いし開放しなければならなかった
寺井を送り、3人になった。
真次:「さっちゃん、寺井の気持ち知ってるんやろ」
さっちゃん:「うん! でも寺井くん言わへんもん」
真次:「この前、誰かの車乗ってどっか行ったやろ。寺井の弟が見てたんやて」
さっちゃん:「あっ! たぶん不動産屋やと思う」
「洋子ちゃんとこみたいに儲からへんし、店手放そうかと思って・・・」
洋子:「うちで、手伝ってもらおうと思ってるんやけど」
真次:「へー。そーなんか。寺井はあほやなー」
「洋子もちらっと言うてくれたらえーのに」
3人で寺井をけなしていたら。12時をすぎたので解散した。 4/
次の日曜日。AM4:00 まだ外は暗く寒かった。
寺井が、真次の家に着いたときには真次は出発の用意が出来ていた。
ヘルメット、つなぎ、ブーツ、グラブを入れたバックを荷台に積み込み、寺井が運転する軽トラックの
横に座った。さっちゃんを迎えに行くのにいつもより30分ほど早めに出た。
さっちゃんの家は『Green Lake』でなく、少し離れた所のマンションに住んでいた。
マンションに着き、二人はオートロックのドアの手前にあるインターホンのベルの部屋番号を押した。
さっちゃん:「はーい。あっ、寺井くん! すぐ、下りるし待っててな」
1分ほどすると、オートロック扉の向こう側にあるエレベーターからさっちゃんが出てきた。
寺井:「おはよう」
真次:「おはよう」
寺井:「軽トラで3人やけどがまんしてな」
さっちゃん:「うん。だいじょうぶ! おしり小さいし。」
真次:「確かに! 洋子はでかい」
さっちゃん:「洋子ちゃんにゆーたろー」
真次:「また、しばかれる」
3人は軽トラックに乗り込んだ。運転は寺井、助手席の扉側に真次、真ん中にさっちゃん。
途中まで行きコンビニに立ち寄り、朝食を買った。高速道路は走らなかった。もったいないから。
鈴鹿峠を越えると、朝日が差し込んできた。3人共サングラスを付けていたが、それでもまぶしいほど
だった。
寺井:「気温上がりそうやな」
真次:「そやな、早めにセッティング出さんとタイヤもたへんで」
寺井:「真次。先に走れや」
「さっちゃんに、ストップウォッチの使い方説明するし」
さっちゃん:「知ってるよ。前に洋子ちゃんに教えてもらった。先月、鈴鹿行った帰りにうちの店に
寄ってくれたやん。その時洋子ちゃんが手に持ってて教えてもらったんやで」
「その時、真次くんのタイムが残ってたんやけどすごくいいタイムが出たみたいやな」
寺井:「こいつ、その時3台抜いて帰って来たんやけど、よそのチームからクレームが来てな、
けんかになりかけてんで」
真次:「あれは、向こうが悪い。走路妨害ばっかしするし。遅いくせにチンタラチンタラ走ってるしや」
「俺と、寺井より洋子のほうが怖かったな」
さっちゃん:「洋子、気強いな」
やがて、鈴鹿に着き真次と寺井はマシンを下ろし、ピットまで押して行った。
エンジンに火を入れる。「キュルルー バオーン」
真次はアクセルを煽りながら寺井にそれを預け、着替えに入った。
皮のツナギに身を包みブーツを履き、ヘルメットとグローブを持ったままマシンに近寄った。
真次:「今日はいつもよりマシンの台数が多いな。 適当に前が開いたらタイム出しに行くし」
寺井:「OK!」
まわりもウォーミングアップしているから、寺井の声はほとんど聞こえない。
真次はヘルメットを被り、グローブを着け、走行する順番を待った。
前のマシンが走り出した。10秒ほどして旗が振られ真次はゆっくりクラッチを繋いだ。
マシンが走りだし、クラッチを繋ぎ終わると同時にアクセルを開けた。
前輪が少し浮く。真次は、クラッチを切り2速に入れた。
そのまま、1コーナーへ。まだタイヤが温まっていないので無理はしない。前のマシンもまだ邪魔に
思えた。 S字コーナーを抜けデグナーカーブ、ヘアピンコーナーへと続き、マッチャンコーナー、
スプーンカーブを抜けるとバックストレート。前のマシンは130Rの手前。
真次はバックストレートでは、アクセルを開けなかった。前のマシンとの間隔を開けるためである。
130Rを抜けシケイン。そしてメインストレートを通過する。
真次は、寺井にVサインを送る。あと2週目にアタックとのサインだ。
真次はS字コーナーでタイヤを温めるために、マシンを深くバンクさせた。
タイムアタックに入る最後のバックストレートでフルスロトルで抜け、130R、シケインと綺麗に抜け
メインスタンド前に帰って来た。前にマシンは無し。クリアだ。
タイムアタック突入。 1コーナー手前5-4-3速とシフトダウンし、ブレーキングしながらマシンを
倒して行く。複合コーナーの1コーナー途中で2速に落としフルバンクさせながら旋回していく。
少しヒルクライムぎみのS字コーナーは腕の見せ所。3速で飛ばしていく。
デグナー、手前2速に落とし、クリッピングポイントを見つけると一気にアクセルON。
ヘアピンまで2-3-4速とシフトを上げ、すぐ4-3-2速、ブレーキング。
立上り時にウイリーしながら、マッチャンコーナーへ。次はスプーンコーナー、3速に落とし、マシンを
倒す。膝を摺り、マシンのバンク角を測りながら旋回。立上りは5速フルスロットル。
高速コーナー130R。5-4速。わずかなブレーキング。
一瞬、伊勢湾が見えるがそんな余裕はまったくない。
そこからシケインに突入。右―左―右と切り返しアクセルを全開にする。
前輪を浮かせたまま、シケインを飛び出しシフトアップしていく。
さっちゃん:「カチ」(ストップウォッチの音)
寺井:「タイムは?」
「前よりコンマ0.02秒落ちか。さすがやな」
さっちゃん:「すごいな。真次くん」
真次は2週目に突入。メインストレート前を通りすぎるときは、先程の0.3秒落ちとなった。
前に遅いマシンが居たからタイムが上らなかったのだ。
そして、真次はピットに帰ってきた。
真次:「どうやった?」
寺井:「かわらへんOKや! 前とほとんど変わらへん」
真次:「交代しよか」
寺井:「よっしゃ! がんばろ」
マシンのエンジンを切り。スタンドを立てた。
寺井はツナギに着替える。さっちゃんが居るせいか照れて、後ろ向きに物陰に隠れるように着替えている。
寺井の準備が出来た。もうオフィシャルの旗は出ないから、周りの状況をみて寺井は走り出した。
真次はツナギの上半身だけを脱ぎ、腕の部分を腰で結んだ。
さっちゃんはピットレーンから離れず、ストップウォッチを構え、寺井が帰ってくるのを待っていた。
やっぱり少しは気になるらしい。
寺井は真次より多く周回を重ねた。ベストタイムは真次の1.5秒落ち。
寺井はピットに帰ってきた。時間は11時30分。走行終了時間まであと30分。
真次が再び、走りだした。しかし思ったようにタイムが上らなかった。
気温が上ってきたのとタイヤがたれてきたのである。
真次と寺井は残り10分弱を残して、撤収にかかった。
さっちゃん:「お弁当作ったし、食べて帰ろ」
寺井:「やったー」
真次:「・・・・・・・・・」
3人は、メインスタンドに行きそこで昼食をとった。
寺井:「うまいわー」
さっちゃん:「そうやろー!感謝しいや」
真次は無言。先程の走行で自分の走りが気にいらなかったのだ。
寺井:「真次。十分やで。あれでえーやないか」
真次:「いや、あのタイムやったら予選順位が中盤より後ろや。 もうちょっと前行きたいな」
寺井:「あれ以上やったら、マシン壊すで。 そうかもっと金賭けるか、どっちみちもう時間もないしな」
真次:「そやな、金あらへん、時間もないな」
「ワークスで走ってる奴はえーな。 うらやましいわ」
寺井:「もうちょと、俺もタイム上げるようにがんばるわ。真次のタイムと同じぐらいやったら、
決勝で入賞出来るやろ」
真次:「俺は、優勝したい!(無理やけど・・・・)」
さっちゃん:「もう食べた? 帰ろ。真次くん、洋子ちゃん待ってるで」
真次:「そや!洋子に、しばかれに帰ろ。」
寺井:「ほんまに、しばかれるぞ」
3人は軽トラに乗り、冗談をいいながら、洋子の店「Kai」に行った。 5/