「舟口華帆は心配する。」
「無視は良くないと思うんだよ。無視は」
「どうしたんっすか急に。今まで後輩を蔑ろにしていた罪に気づき、これからは目一杯甘やかそうということですか? それなら駅前のクレープ屋さんなんてどうっすか? まだ行ったことないんっすけど聞くところによるとかなり美味しいということなんすけど」
「行きたければ一人で行ってくれ」
「そんな〜、先輩は可愛い後輩と甘いひと時を過ごしたいと思わないんっすか? クレープだけに」
「思わない。僕はそんなの性に合わないんだよ。僕の後輩ならそこのところ知ってるだろ?」
「確かに先輩と可愛いは水と油のような関係だと思いますけど、だからこそ挑戦すべきだと私は思うんっす。ほら、得意な科目は勉強するけど苦手な科目は全然やる気が出ないことってあるじゃないっすか。でも、それだと苦手なものは苦手のままで止まっちゃうので挑戦してみないといけないと思うんっす」
「一理あるかもしれないが別に苦手を克服する必要なんてないんだよ。それがそいつの味だからな。それよりも僕は無視というコミュニケーションの放棄は如何なものかと思うんだよ。まあ、僕もコミュニケーションは得意ではないけどあれだと友達は少ないだろうな。いや、というかあいつが僕以外の奴と話してること見たことないな……いや、あれも話してるとは言えないが」
「先輩よりもコミュ障ってことっすか? それってかなりヤバいんじゃないんっすか? その人、ちゃんと生きてるんすか?」
「さりげなく、僕をディスっているように聞こえたがあいつはお前みたいに誰かと話してないと生きていけないような人間じゃないんだよ。まあ、あの様子だと将来的に困るだろうがそこは僕の知ったことじゃないね」
「相変わらず薄情っすね〜。この前から不機嫌なのはその人のせいだったんすね?」
「だったらどうする?」
「いやいや、どうもしないっすよ。それほど無口な人なら私との相性は最悪、それこそ水と油でしょうから」
「どうせお前たちが会うことはないだろうから心配するな。それよりも、お前はライトノベルとか読むか?」
「いえ、そもそも小説を読まないっすね。ライトとか関係なしに」
「そうか……」
「あっ! もし、先輩のオススメならガンバって読むっすよ。苦手なものを避けるのは良くないっすからね」
「いや、枕になるのがオチだしそのつもりで聞いたんじゃないから必要ない。それよりも最後に聞かせてくれ」
「何すか?」
「僕はシスコンだと思うか?」