表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ですが何か?  作者: マイケヌ・ハクション
第1章ー勇者と女騎士ー
9/38

勇者ですが何か?(9)倒れましたが?

第1章突入します!果たして、タロウの旅はどんなモノになっていくのか!?作者の私も分かりませんが、興味のある方はご覧ください。興味のない方もご覧くださ(以下略)

<トキヨー大陸、勇者の村から南にある森>


 その日も昼に回っただろうという頃、太陽は朝よりもさらに燦々と大地を、森を、人を照らしていた。森の中は木々によっていくらか日の光をごまかせるが、それでもかなりの暑さを見せていた。


 森に住む動物たちですら暑さで日陰に隠れて動こうとはしない中、一人の金髪短髪オールバックの少年がゆっくりと歩いていた。


ーーグウゥゥゥ…


「…腹減った…、馬鹿だ…俺は。……なんって馬鹿なんだ!」


 汗でビショビショになったジャージを腰に巻きつけよろよろと、そしてグーグーと歩く少年、タロウ。

 額の汗を手で拭い、片方の手には空になった瓶が一つ。


「…なんで、食べてこなかったんだ…なぜに飲み物大丈夫とかほざいたんだ……」


 ブツブツ言っていたタロウは急に立ち止まった。


「今日、パンしか食べてねぇじゃねか!!しかも暑いし、喉乾くし、飲み物になるのはポーションしかねぇし!…おまけにポーションはクソだし!!」


 この森に来る前、つまりは旅立つ前のことを思い出す。


ーーうーん、1日もあればアリアーハンには着きそうだし食べ物は…いらねぇかーー


「いや、いるだろ!朝からテレビ局乗り込んだくせにそれから食べてねぇんだから…」


ーーポーションは(中略)飾りとしてでも持って行く価値はあるな!ーー


「いや、ねぇよ!せめて喉を潤すかと思ったら何これ?緑ぃ飲み薬じゃん、まずいし、後味残るし喉乾くし…!」


 そしてタロウは顔を空に向け、大きく息を吸った。


「俺の馬鹿やろぉぉぉ!!!」



ー勇者ですが何か?ー(9)


 勇者の村を出てから最初の1、2時間ほどは順調だった。テルフォンのナビアプリを見ながら進んでいたタロウは途中であることに気づく。


「あれ…?俺そういえばテルフォンの充電器、入れてなくね?」

 バッグをゴソゴソといじり、確認したが、魔法のバッグには残念ながらテルフォンの充電器は入ってなかった。


「クソ!街に着くまでに電池は切れさせたくねぇな…」


 そう言って地図を広げ進んでいたのだが、ラクダヨ王国の国都までは何度も足を運んできたが、その他の地には実はあまり行ったことのなかったタロウは、道を間違え、遠回りしていた。


 そして、普通に行けばもう抜け切る頃だろう森を、未だに歩いていたのである。


「…マジでもう無理だって……こんな暑いのおかしいだろ?まだ初夏だろ……ん?初夏って夏か?」


 暑さでタロウは自分が何を言ってるのかも分からなくなってきた。空の上では鷹が飛んでいた。


「俺を狙ってるんだ…きっとそう…。こんな、初っ端からきついんなら、もっとしっかり鍛錬なり勉強なりしとけばよかった……。家でファースト・ファンタズィーを遊んでおけばよか…った…」


 バタりと倒れたタロウは這うようにしてゆっくりと前へ進み出した。


「くそぅ……こんな森では死にたくねぇ…せめて死ぬなら…アイコちゃんの胸元で………ん?」


 ゆっくりと這いずっていたタロウの手が土では無く、何か硬いものに触れて、地面が土から変わったことに気づいた。


「…この硬いのは…石?」


 顔を徐々に上げると、変わった理由が分かった。


 今まで森の中の舗装されていない土の道だったのが、タロウの手が触れた場所からは舗装された石畳になっていたのだ。そしてさらに顔を上げると、そこには森の木々が終わり、石畳の続く先に、小さな門と鐘のある長い塔、それから数多くの建物が見えた。


 アリアーハンの街である。


「み、見えた……!へへ、何だよ…以外と直ぐ近く…じゃね……え、か……」


 街が見えたことで安堵してしまったのかタロウの意識は急激に遠のいていった。

 かすかに森の木々の茂みから足音が近づいてきたのを感じつつ、その足音の主が助けてくれることを願って、タロウは完全に意識を失った。


「ひひ…何でこんな森と街道の間で寝てるんだ?馬鹿なのか?ひひひ、生きてはいるようだが…持ち物は…と」


 細身のモヒカン男はタロウからバッグを外し、ポケットを弄った。


「ん?テルフォンじゃねぇか!……つかねぇ、電池切れてんのか?まあ良い、他には…」


 モヒカン男はタロウのポケットからテルフォンと財布を取り出し喜びながら飛び跳ねた。


「あとはこのバッグだなどれどれ……うんん?…何も入ってねぇじゃねぇか、てか、何だこの感覚、魔力が付いてる?」


「ーーそいつは魔法のバッグだ、ダルキヨ」


「頭ぁ(かしら)!このバッグのこと知ってんすか!?中身空っぽですが……」


 頭と呼ばれた男もまた、モヒカン男が出てきた茂みの奥からゆっくりと出てきた。筋肉質のがたいに、左目に眼帯を付けたその男はモヒカン男から差し出されたバッグを手に取る。


「…間違いねぇ、これは魔法のバッグだ。魔法のバッグってのはな、特別な素材を使って、専門の職人が作ることで出来上がるバッグでな、持ち主と契約することでその力を発揮してな。…一見、普通のバッグに見えるし、俺らが使えば、特に何の特徴もないバッグで終わるんだが、契約した持ち主が使うといくらでも物が入るんだよ」


 バッグに手を入れたり出したりしながら頭の男は説明を続けた。


「そして、契約したやつでしか、その入ってる中身を取り出すことができない…魔法のバッグって訳さ…」


「そ、そいつぁすげぇや!…ん?でもそう考えたらこのバッグの中身は……」


「そうだ、ここでぶっ倒れてるこのガキが持ち主で、こいつしか取り出せねぇだろう……」


 二人は気を失っているタロウを見る。


「…どうします頭?」


「決まってらぁ、アジトに連れ帰るぞ。こんなバッグ持ってるってことはそれなりに高貴な野郎に違いねぇ!倒れたところを介抱してやるんだから、お礼はもらわねぇとなぁ!」


「ひひひ…!たっぷりともらいましょうや!!ひひ」


 

 二人の男はタロウを抱え森の中へと消えていった。……それを一人の少女が見ていたことを気づくこともなく…。


「……遅いと思って見に来たら、あんな奴らに捕まるなんて…本当にあれが勇者なわけ?」


 ため息を吐いたその少女は腰に下げた剣を少しだけ鞘から出し、良しと言って戻しては、二人の男を追うように森に入っていった。その青いポニーテールを風で揺らしながら…。

勇者ですが何か?講座


ー魔法のバッグー

バッグや荷袋、荷物を入れる荷箱など、世の中には物を収納し、持ち運ぶ道具は数ある。しかし、無限に物を入れることが出来る道具ーアイテムーは、そう多くない。

遥か昔、魔法使いの学校に通う少年は思った。

ーなぜ、魔法使いは様々な魔法を使い、魔法のアイテムを数多く作っては使ってきたのに、バッグは普通なのかと…。正確に言えば、バッグにも魔法をかけることで、絶対に開かなくしたり、破れることのないバッグなどはあった。だが、そうじゃない、そういうのじゃないんだと少年は思ったと言う。

そして、少年は先生や友人たちに相談し、あらゆる書物を漁り、魔獣から素材を手に入れたり、人々にどんなバッグや収納道具が欲しいかを調べたりした。

そしてある日、一つの大きな袋を作った。

その袋に物を入れると、入れたものは魔法陣の上に置かれた箱の中に入り、バッグの中は空のままという、いわゆるテレポート袋を完成させた。

それからさらに試行錯誤を繰り返し、大きさを改良したり、バッグやケースなどで試してみたりなどを行い、最終的には、異空間を開き、その異空間自体を大きな倉庫として扱えるまでになった。

それにさらに工夫を加え無限に入り尚且つそのバッグと契約した者や、その契約した人物が許可した者のみが自由に扱える魔法のバッグは完成された。

だが、やはりそれだけの機能のアイテムを作るのは難しく、知識と経験、そして魔力をしっかり持った者でなければ作ることはできない。


ーーーどんな物だって入ります!このバッグに入るサイズの物ならね!…え?あなたの旦那が入るような大きいの?……オーダーメイドなので作れますよ♪ラララなんでも入る魔法のバッグ!パッカー社製ならね♪ーーー

(パッカー社の魔法のバッグの販売cm)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ