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勇者ですが何か?  作者: マイケヌ・ハクション
序章ー旅立ちー
4/38

勇者ですが何か(4)化粧は大事ですが?

「うわー、母さん派手にやらかしてるね〜!これは呟かなきゃ!」


 モミジはハーブティーを飲みながら猛スピードでテルフォンを扱う。


「親がテレビ局に乗り込んでるナウ…っと!」


 モミジは投稿できたのを確認してテレビに注目する。


「面白いこと頼んだよ、母さん」


 テレビには坊主頭の青年とチヨコが映っていた。



ー勇者ですが何かー(4)


「ちょ、ちょっと待てって!」


 タロウはチヨコと青年の間に立った。


「あらぁ、心配してるのぉ?大丈夫、お母さん強いから」


「いや、あんたのことは心配してねぇよ!テレビだよ!これ放送されてんだぞ!?」


「なんだぁ、勇者ってのは随分とまぁ臆病だな!あぁ?やっぱ俺でも勇者やれそうだぜ」


「おい、なんだと?」


「金髪のくせにしゃべえって言ってんだよ!」


「くっ、やろう…、人が下に出ればつけ上がりやがって!」


 タロウの横を風が通り過ぎる。チヨコだった。


「!?」


 チヨコの飛び蹴りを喰らい吹っ飛ぶ青年。


「口臭くさすぎて吹っ飛ばしちゃったわぁ」


 あははと笑うチヨコを見て、引きつった笑顔のタロウ。


「…やばいって母ちゃん…」


「大丈夫よタロウ」


「いやいや!全然大丈夫じゃねぇって!周りを見ろよ!」


「うーん?」


 タロウに言われ見回すチヨコ。周りのスタッフはズボンを湿らしガタガタ震え、チヨコが蹴り飛ばした机は遠くの壁に突き刺さっていた。見回していると、モニターに映ってることに気づくチヨコ。


「あら、やだ…」


 口に手を置き困惑した表情でモニターを凝視する。


「な!やばいだろ?」


「ほんとねぇ」


 ウンウンと頷きながらチヨコは急に顔を赤らめる。


「お母さん、化粧するの忘れちゃったみたい!」


「だろ?ほんと恥かしって、は?」


「もうやだぁ、怒ってたから、すっぴんで来ちゃったじゃない!」


 チヨコが顔に手を置きフリフリと恥かしがる姿にもはや突っ込む気力を無くしかけていたタロウは青年が起き上がったことに気づく。


「ババァ!俺を吹っ飛ばしていう言葉がそれかぁ!」


 青年は猛ダッシュしてチヨコに殴りかかる。が、青年のパンチが当たる前にクルリと回転して逆に青年の顔面に拳をめり込ませるチヨコ。


「…当たり前じゃない、大人の女に化粧は必須なのよぉ?」


 そしてひるんだ青年の足を蹴り、こけさせる。


「恥ずかしいからパパッと、もう巻きで終わらせたいから…タロウは最高の勇者ですってカメラに訂正しなさい」


「ッガ!くそ…誰がそんなこと、グハッ!ウッ!」


「早く言わないとほっぺの大きさが顔の大きさを超えるわよ」

 倒れた青年の体を踏み、時に顔に蹴りを入れるという仕打ちを行うチヨコ。


「ほら、言いなさい、勇者であるタロウ様とそのタロウ様をしっかりと育てた母は大変に素晴らしく、今、指導を受けてるのは光栄ですって」


「なんか増えてねっ!?」


「くそっ、誰が…こんなバケモっギャハッ!じ、死ぬ〜…グフゥ!」


 ボコボコ蹴られまくり青年の顔はパンパンに腫れていた。


「ほらあと少しで1分経っちゃうじゃない!もし過ぎたらどうなるか分からないわよ?」


「む…むちゃくちゃ、ガァ!い…言います…言いま、すから…グッへ!だから、もうやめて…!」


 その言葉を聞きチヨコは青年の首元を掴み起こしてあげる。


「ならば、よし!…じゃあ早速、あのカメラに向かってしっかりと言ってみて」


 青年はハイと小さき頷き、よろよろになりながら、カメラに近づく。


「ゆ、勇者であるタロウ様と…そ、その母である、チヨコ…様は素晴らしい人でした……じ、自分のような者が勇者を語るなど、おこがましいことだと身にしみて分かりました…勇者タロウ様に祝福を…」


 語り終えて青年は、体力を使い果たしたのかバタりと倒れた。


「ありがと〜う、アドリブまで入れてくれて〜。おかげでタロウへの誤解が解けて、旅も素晴らしくなりそうだわぁ」


 チヨコの笑う姿がテレビに映る。


「…いや、確実にアウトな気がする……母ちゃんのせいで…」


 タロウはこれからのことを考えると気が遠くなりそうだった。





「ふーん、いきなり出てきたかと思えば、ただ暴力沙汰を起こして、自分と息子を素晴らしい人物だとアピールさせるだけ、か…しかも結局のところ、勇者はやっぱりどうしようもなさそうな感じのガキだし、ただの親バカっていうか、モンスターペアレンツっていうか…」


 テレビを見ていた青髪ポニーテールの少女はやれやれと、テレビの電源を消した。そして扉の近くに置いている剣とバッグを見る。


「こんなのが勇者なら、行きたくなくなるわね…」





「やはり!勇者は素晴らしい人物でござったかっ!!!」


「いや、どう見てもそんなことないだろ、むしろやばいやつだろ、主に親が」


「おお!神よ、拙者が正しかった!正義の象徴であられる勇者が、非道な輩なはずはないのだ!」


「…聞いてねぇし」


緑髪をした少年が高らかにクナイを掲げて雄叫びを挙げてる横で、顔を忍び装束で隠した少年はため息交じりでテルフォンに映る勇者とその母親を見つめた。





「勇者か……クック、忌々しい響きだ、クククク…だがいいぞ、貴様が動き出すのなら、そろそろ行動に移ろうではないか!クククク!クーックックック、クーー!!」


 ボロボロの部屋の中で小さなテレビを見ながら、そいつはけたたましい声で笑った。


 ドンドン!!


「うるせーぞ!静かにしろやっ!」


「ひい!すみませんすみません!もう笑いませんっ!!…………ふぅ…クック…今に見てろよぉ!」




勇者ですが何か?講座


ートキヨー大陸ー

この勇者ですが何か?の世界が通称『アースター』そして大まかに三つの大きな大陸があり、そのうちの一つが、タロウの生まれた大陸『トキヨー大陸』

トキヨー大陸は『時』つまり、歴史や伝統、そして時を重ねるごとに発展していくことが大事であると言い伝えられている。そのため、大きな事を起こした人物などはそれが善であれ悪であれ、しっかりと称えられたり、恐れられたりする。

トキヨー大陸には様々な国々があるが、その中でもトキヨー大陸で最も信仰されている『時の教会』の教王が正式に、大陸での正統な代表としての務めを定めた『ゲンシュー王国国王ジン・カーン』が他の大陸との外交を指揮している。つまり王国は数あるが、実質的にはもう一つの国家によって統制されいるみたいなもの。ただし、教王により、あくまでも大陸代表っていうポジションとはいえ、他の国々と同じという意味で、大陸に大きく影響が出る、世界に関わること以外では、大陸内の他の国々には関与しないことになっている。

大陸の中央にゲンシュー王国があり、ラクダヨ王国は少し北側にある。

有名な国々といえば、ゲンシュー王国、ラクダヨ王国、クルシカ帝国、大チーコク帝国、カスガ、魔王国ダーツァ、などがある。


ーーー時とは過去から現在、そして未来へと止まることなく果てしなく続いていく現象である。どんな物事にも原因があり過程があり結果がある。時という現象は、人がどんなに祈り行動しても止めることはできない、時の起源を知ることはできない。全ての現象に原因あれど、時という現象にはそれは通じない。始まるということを知らないのだ、なぜならば常に進み続けているのだからーーー

(時の教会の教本『タイム・イズ・エターナル』時の真理からの抜粋)

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