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勇者ですが何か?  作者: マイケヌ・ハクション
第1章ー勇者と女騎士ー
16/38

勇者ですが何か?(16)ワイヤレスですが?

「ごめんなさいねぇ〜」


 母親達はさっきまでとは打って変わった態度をとっていた。


「まさか、あなたが勇者だったなんて〜、知らなかったものだから…ねぇ?」


 母親達の勘違いをなんとか解くことはできたが、タロウの精神もアイリーンの精神もズタボロだった。


「まぁ…黒ジャージに金髪だったら、不良とも思いますよね……はは…はぁ」


「そうなのよぉ〜、そんな格好だったから、間違えちゃったのよぉ?そこは勇者のあなたが謝らないといけないんじゃない?」


「くっ!(このババァども…!)そ、そうですね〜、どうもすみませんでした」


「まぁ、勇者なら許してやるよ、にいちゃん!」


 突きまくってきた子ども達もまた、偉そうな態度でふんぞり返っていて、タロウのイライラを増していた。


「ところで…私の子供に何か用があったの?」


 その言葉に、タロウもなぜ、こんな状態になってしまったかの原因である、男の子の方を見る。今はもう泣き止んでいて、母親の横にくっついている。


「あぁ、その耳に付けてる丸いのは何かなって…」


 それを聞いて母親は子供の方を見て答える。


「これは、ワイヤレスイヤホンよ、コードがなくても、登録したテルフォンや音楽を聴く機械から普通のイヤホンみたい音が出るから、便利なのよ」


 子供は耳から外し、その丸いのをタロウに近づける。その丸いものからは、確かに音楽が流れていた。


「これはすごいな…。これって、電話の声とかも聴けるんですか?」


「そうね、聴けるわよ」


 その言葉にタロウは喜ぶ。


(これなら、作戦ができそうだ!)


「どこ売ってます?」


「あー、今は多分売ってないわよ、売り切れちゃってると思う」


「なにぃ!?売り切れてる…だと」


「欲しくなったの?残念ね、結構人気だから…」


「そうですか…」


 仕方ない、そう思ってアイリーンの方を見る。


「ん?アイリーン!?」


「ビッチじゃない…ビッチじゃない…」


 アイリーンは相変わらずうずくまりブツブツと言っていた。


「おいアイリーン、良い加減に立ち直れ」


「あら…そんなにイヤホンが欲しいの?」


「いや…、そういうわけでうずくまってるんじゃなくて、お子さんの言った言葉が深く心に来てるんだと思います…」


 そう言いながらタロウは無理やりアイリーンを立たせ、励ます。


「ほら、ビッチでもボッチでも良いじゃないか、とにかくもう時間がないからどうにか他の作戦考えて挑むぞ」


「うるさいわねぇ!私はビッチじゃないし!ボッチでも…!……ボッチでは、ある…わね…」


 また沈みだすアイリーンにため息をついて、タロウは自分を指した。


「いーや、お前はボッチではないぜ、俺がいるから、ボッチ予備軍だ」


 ニカッと笑うタロウにアイリーンも苦笑する


「…あんたと友達ってのは正直な所、最悪なんだけど…」


「おい、お前ひどいな。励ましてやってるのに」


「…でも、あんたがどうしてもって言うなら、なってあげるわ!」


 そう言ってアイリーンは走り出した。


「行くわよ!」


「…へっ、おう!」


 タロウも続こうとすると、イヤホンを持つ子がジャージの裾を掴んできた。


「ん?どうした?」


 男の子はモジモジしながら、手を差し出す。見ると、手のひらの上にはワイヤレスイヤホンがあった。


「…これあげることはできないけど…勇者のお兄ちゃんに貸してあげても…良いよ?」


「えっ?ほんとに?」


 男の子は小さく頷く。


「あら〜優しいのね〜!さすがママの子だわ〜!」


「良い子よね〜!」


 母親達は悶えるようにその男の子を褒め称えた。


「勇者さん!是非私の子の気持ちを受け取って!家は公園を超えて、あそこの通りにある黄色い家だから」


 タロウはイヤホンを受け取り男の子の頭を撫でる。


「ありがとな!…ありがとうございます!これ今日中に返すんで!」


 そう言って軽く頭を下げ、アイリーンの走った方向へと向かって走り出す。後ろでは母親達と、子供達が声をあげて手を振っているのが伝わってきた。





<アリアーハンの外、森の中の小屋>


「…びっくりしましたよ。アリアーハンに下見に行ってから全然帰ってこないんですから」


 いかつい男はジャーキーを齧りながら言った。


「まさか、椅子に縛られてるとは…。おいダルキヨ!!」


「ひぃ!」


 男は近くで立っていたダルキヨを蹴飛ばした。


「お前がいながら、かしらに恥かかせやがってぇ!小指落とすか!あぁ!?」


「す、すいやせん!!すいやせん!」


 ダルキヨは土下座し、頭を床にゴスゴスとぶつけながら謝った。


「小指を落とすのはかわいそうだ、モヒカンをそぎ落とせ!」


 壁に背を預けていた別の男はそう言ってナイフをダルキヨの前に落とす。


「自分でやりな」


 ダルキヨはその男を見て涙目になりガタガタ震える。


「モ、モヒカンだけはやめてくださいぃ!お、俺の魂なんだ!」


「……あぁ!?」


 ジャーキーを食べてた男が椅子から立ち上がる。


「ひっ!!」


「………待て」


 その一声で男たちは声主の方を見た。


「この失態はダルキヨのせいじゃねぇ…。かしらである俺の責任だ」


 眼帯の男は奥の部屋からゆっくりと出てきた。

 革でできた鎧を身にまとい、湾曲した剣を拭いていた。


「…これは恥だ。かしらとしてだけじゃねぇ、男としての恥だ」


 吹き上げて綺麗に磨かれた剣を眺める。剣には眼帯の男の顔が映っていた。


「…小僧に教えなきゃならねぇ……。大人をナメると痛い目を見るってことをなぁ…」


 そう言って眼帯の男は小屋の中にいる男達を見る。男達は眼帯の男へと頷く。


「立てダルキヨ。名誉を取り戻すぞ」


 そう言って眼帯の男は外に出る。


 小屋の外にも多くの悪漢どもが集まっていた。


「聞けぇ!俺はお前達のかしらでありながらガキにやられた!!男としてこのままではいられねぇ!!ガキは今アリアーハンにいる!俺たちが狙いを定めたアリアーハンにだ!!」


 眼帯の男の言葉に悪漢たちは狂喜な歓声をあげる。


「俺の恥はお前達の恥だ!アリアーハンとガキに教えてやろう!!俺たちを敵に回したことを、俺たちを怒らせたことを!後悔させてやるのだ!!」


ーーウオォォォォォォォォォ!!!!!


「我らギズベル盗賊団の力を示せぇぇぇぇぇ!!!」



ー勇者ですが何か?ー(16)

勇者ですが何か?講座


ーギズベル盗賊団ー

 元々アリアーハンの警備兵だったギズベルが、街を追い出された後結成して出来たのがギズベル盗賊団である。

 子供の頃、喧嘩に明け暮れた日々を送っていたギズベルは、よく事件を犯しては牢屋に入れられていた。誰もがギズベルに怯え、近づかなかった。それは親も同じだった。喧嘩をすればするほど人が離れ、寂しさや苛立ちで、また喧嘩を売っては牢屋に行く日々を送っていたギズベルに、警備兵の一人が、腕っ節を認めて、警備兵にならないかとギズベルに誘った。ギズベルは最初こそ拒否していたが、いつも誘ってくる警備兵に、ついに折れて警備兵になるための試験を受けることを約束した。


 試験も合格し、見事警備兵になったギズベルは、自分を真っ当な道へと戻してくれた警備兵に感謝し、新たな心で警備兵としての人生を送ろと努力した。

 元々強かったギズベルは次々と悪人を捕まえて行き、周りの人々からの目も昔とは変わり、賞賛されるようになっていった。

 そしてギズベルは自分もそうであったように、捕まえた囚人たちに更生の機会を与えようと、牢屋に行き様々な会話をするようになる。

 しかし、ギズベルの人気ぶりに嫉妬した他の警備兵達が、ギズベルに対して様々な仕事を押し付け、さらにはミスをギズベルになすり付けるようになっていった。

 ギズベルも当然黙って耐えるだけの男ではなかった為、警備兵達と戦った。その時に警備兵達は懲らしめたが、目に傷を受けてしまった。ギズベルは警備兵達を懲らしめて、なぜ自分にひどい仕打ちをしたのか聞いた。

 そこで衝撃の言葉を聞かされる。

 それは、この仕打ちを行わさせているのは、ギズベルに声をかけてくれた警備兵だと言うのだ。当然嘘ではあったが、ギズベルはそれに気づかず、怒り悲しむ、ギズベルが警備兵達と揉めていることを聞いた恩人の警備兵はギズベルの元へと駆けつけるが、ギズベルは恩人であるその警備兵を殺してしまう。

 そして囚人達に自分の仲間になれと誘い、逃すという行為に出てしまう。


 その後、アリアーハンから離れ、転々と盗賊まがいの悪事を働きながら移動していた。仲間達も増えたことにより、故郷であり、自分の汚点でもあるアリアーハンに復讐を考えている。


 ギズベルをかしらとしていかついインバス。ガラン。ダルキヨなどがいる。

 ちなみにダルキヨは使いっ走りの扱いを受けている。


ーーー俺を利用した上に、俺をコケにしたこの街から奪えるだけ奪い尽くしてやる!俺を怒らせたことを後悔させてやる!!ーーー

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