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復讐を願う魂と拒絶されし者  作者: 聖天騎士
第一章 伸ばしたこの手を握ってくれるまで
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幕間 新たな決意

 ~イリスsaid~

「そんなことで驚いていてはお嫁にもらってくれないぞ、こやつがな。」


 私、イリス・フロリシアはお父様がシゼル君に言った言葉のせいでシゼル君に会うのが恥ずかしくなり、あの日以来あの書庫に行かず家にいましたが、シゼル君が属性の儀を行う日が来たのでこれを機会にもう一度シゼル君と仲良くしようと思いお父様と一緒にシャインゼル家を訪れました。

 そこに残酷なことが待っているとも知らずに。


「今日という今日こそは、シゼル君と仲直りしてまた一緒に勉強したり魔術の練習をします。」


「それを聞いたのは何度目だったかな?」


「こんなことになったのもお父様のせいなのになぜそんなに軽いのですか?」


「まあ、そんなことを言いながら今までは家から此処に向かうこともできなかったがな。」


「それを言わないでください。」


 そんなことを言い合っていると、とうとうシャインゼル家に到着してしまう。


「ほらイリスよ。おまえは先に書庫に行っておいで。」


「お父様はついて来てはくれないのですか?」


「我は少しアレイスター殿と大事な話があるのでな。しばらくは近づくではないぞ。」


 大事な話という言葉に嫌な予感を感じながらもお父様が一緒についてこれない状況に不安を感じるも、お父様の雰囲気が変わったことで貴族としての話があると感じた私は説得を諦める。


「分かりました。後は私が頑張ります。」


 そう言って先にシゼル君のいる部屋へ向かう。





 シゼル君の部屋へ来て見るも、彼の姿はなかった。


「やはりいませんか。シゼル君はやはり勉強熱心ですね。」


 シゼル君は自分の部屋か書庫にしかいないため、部屋にいなければ書庫にいて勉強しているか魔術の練習をしているためこの屋敷ではかなり見つけやすい。

 しかし私は、この部屋に違和感を感じてしまう。それはほんの少しの違和感だが私は感じれたのだ。


「以前来た時よりも荷物が減っている?」


 それは、荷物掛けに掛けられていた袋がなくなっていることに気付いたことで違和感から確信に変わってしまう。


「まさかシゼル君はもう・・・。」


 私は自分が感じた不安を振り払うかのごとく急いで車庫に向かう。そこにいてほしいと願いながら。





「お願いですシゼル君。ここにいてください。」


 私は、書庫の前でそう願いながら書庫を開けるがそこには、誰もいなかった。

 いつもなら聞こえていた本をめくる音、私が来たことで挨拶してくれる声が、本から手を離したことで風によってさらに本がめくれる音。

 その全てが聞こえてこなかった。ただ、書庫の空いた窓から風が吹いてくる音しか聞こえてこなかった。


「そんな・・・。シゼル君が・・・、シゼル君がいなくなったよぅ・・・。お父様どうすればいいのですか・・・?」


 シゼル君がいなくなったことで私の頭は真っ白になり、縋る様にしてお父様の所へ向かう。

 来てはだめだという言葉を忘れてしまったために、そこで聞いてはいけないことを聞いてしまうことを私は気づけなかった。





 ~ヴェレスsaid~

 イリスが先にシゼルの所をいいことに我はここに来るまでに感じていた嫌な予感が何なのか確かめるために行動する。


「アレイスター殿よ少し話があるのだがよいか?」


「いったい何なのだ。こちらは忙しいのだよ。」


「忙しいだと?」


(なぜ忙しいのだ。あやつの属性の儀はもう終わっておるだろうに。)


 アレイスターの言葉に疑問を抱いたヴェレスは嫌な予感がさらに感じてしまうためさらに追及する。


「なに、そう時間は取らせんよ。我が聞きたいのはシゼルの事じゃ」


 嫌なことがシゼルの事であると予想を立てていたヴェレスは直接シゼルのことを聞くが、アレイスターが返した返事に疑問が確信に変わってしまった。


「シゼル?誰の事じゃ?」


「何だと・・・。」


「ヴェレスよ我の子供はフィーゼル、エミリア、リリアンの三人だぞ。そんな名の奴は知らんぞ。」


 そんなことを言ってくるアレイスターにヴェレスは戸惑ってしまう。そして、属性の儀がどうなったのかが判り、それが生み出した悲劇まで想像できてしまう。


「アレイスター。おぬし、自分の息子を・・・!」


「はぁ。どうせ分かりきっていたことだろう。我がいずれあの化け物を切り捨てることを。」


「化け物だと・・・。てめぇ!自分が生んだ子になんてことをしたんだ!」


 アレイスターがシゼルにやった所業に怒りを表すヴェレスだがそんな事より大事なことに気付きそれを確かめる。


「アレイスター、シゼルはどうしたのだ。答えろ!」


「あんな化け物ならとっくに捨てて、殺すために人を向かわせたよ。」


「アレイスター!堕ちるところまで落ちたか!」


「何とでも言えヴェレスよ。我はこの家を守れればなんでも犠牲にするさ。」


 そんな話をしていると、


「アレイスター様。それはどういうことですか・・・?」


 絶望し切った顔のイリスが二人の話を聞いていたのだった。





 ~イリスsaid~

 私は、シゼル君がいなくなったことを相談するためにお父様の所に向かうがその足取りがなかなか進まない。

 やっとのことでたどり着いた時にはお父様とアレイスター様が言い争っている姿が見えてしまいその内容が聞こえてしまう。


「アレイスター。シゼルはどうしたのだ。答えろ!」


「あんな化け物ならとっくに捨てて、殺すために人を向かわせたよ。」


「アレイスター!堕ちるところまで落ちたか!」


 そんな内容が聞こえてしまいイリスはもう正気を保っていられなかった。


「アレイスター様。それはどういうことですか・・・?」


「イリスよ・・・、どうしてここに・・・。」


 お父様の声が聞こえるが今は耳に入ってこない。今はお父様より大事なことがあるから。


「シゼル君を殺すと聞こえましたがどういうことですか?お答えください。」


 アレイスター様に詰め寄りながら私は無意識に魔力を放出する。それはとても冷たい魔力を。


「ふん、奴なら闇と無の適性を示したのでな。この家から追い出して・・・」


「アレイスター!それ以上言葉にするではない!イリスが壊れてしまう!!」


「・・・どこかで野垂れ死んでいるだろうな。」


 そう言われた瞬間、私の意識は消えた。

 最後にお父様が後ろに立つ姿が見えて私を支えようとしようとするのを感じながら。





 次に私が目を覚ましたには、自分の屋敷の自分の部屋で目をを覚ました。


「あれ、なんで私はここに?」


「目が覚めたわね、イリス。良かったわよ、あれから三日間も目を覚まさなかっただからね。」


 そう言って私を心配してくれるのは、私の姉、ネリテア・フロリシアだった。


「もう、心配したんだからね。しっかり元気を出すのよイリス。」


「え?三日も?・・・あ!・・・あ、あ、あ、あ、シゼル君が・・・!」


「ちょ、ちょっとイリス、本当に大丈夫!」


 突如として慌てだした私にネリテア姉様が戸惑いますが私はそれどころではありません。なぜなら・・・。


「早く行かないと・・・シゼル君が・・・待ってるんです・・・・私の助けを・・・。」


「イリス!待ちなさい!」


 シゼル君を助けに行くのをネリテア姉様が慌てて止めますが私は止まりません。ですがそこに、


「イリスよ、ここからは行かせん。」


 お父様が私の前に立ちはだかるのです。


「お父様、そこをどいてください。私は、シゼル君に会いに行くのです。」


「無理だ。」


「なぜですか?シゼル君が待っているというのに。」


「もちろん事情を説明するぞ。」


 そこで私はお父様にシゼル君がどうなったのかを聞きました。

 お父様の話では、シゼル君は正妻の子ではなく、別の人との間に生まれた子供であること、いつかはシャインゼル家をから捨てられること、お父様が属性の儀を勧めなければしようとしなかったこと、もともと期待もされず、地下に閉じ込められるようにして育ったこと、あの部屋が私と知り合ってからしか入れなかったこと。

 そして、今回の属性の儀でシゼル君が闇と無属性の適性を出してしまったこと、その属性のせいで捨てられるのが早まってしまったこと。

 それだけなら私はシゼル君に自分から会えに行けば会えると思っていましたが、お父様の次の言葉でそれがかなわなくなりました。


「だか、アレイスターはシゼルを殺した。奴を魔領の森に転移させてな。だから、シゼルの生存は絶望的じゃ。」


 魔領の森と聞いた瞬間に私の希望は打ち砕かれました。

 何故ならあそこは、死の森とも呼ばれていて入ったものが二度と出られないとシゼル君との勉強したことで知っていたからです。

 そんなところに飛ばされたなら、シゼル君が生きてる可能性なんて・・・。


「だがイリスよ、奴も才能はそこが知れん。もしかしたら助かっておるかもしれんぞ。」


「え・・・?」


 お父様が発せられた言葉が響きます。


(シゼル君が・・・生きてる?)


「お父様、それはどういうことですか?」


「なぁに、奴の才能をわしは見抜けんかったからな、もしかすると生きておるかもしれんぞ。」


 シゼル君が生きているかもしれない。たったそれだけのことで私の心は軽くなりました。


「だからこんなところで立ち止まるなイリスよ。奴は今も生き延びて強くなっておるはずじゃ。ならばイリスも強くならなければならんはずじゃ。今度は、シゼルを助けられるまで!」


「シゼル君を助けられるまで・・・強く。」


 強くなる。そう言われた私は自分の体に力が入るのが感じれました。

 シゼル君の助けになるために強くなる。そう決意する私は私が感じていた胸の靄が払われる感じも一緒に感じ心がすっきりしました。

 きっとこれが・・・


「見るがよいネリテアよイリスがまるで恋する乙女じゃよ。」


「シゼル許すべし・・・、絶対に会ったら殺してくれる。」


「お、お父様!いったい何をいっているのですか!!それにお姉様もですよ!」


 お父様はからかいお姉様はシゼル君に向けて殺意を向けますがきっと私はシゼル君に恋をしたのでしょう。

 だから絶対待っててくださいねシゼル君。


「今度はきっと手を取り助けますから。」


 そう言って私は強くなるために前に進む為に、


「お父様、お姉様。私に武術と魔術を教えてください。」


 シゼル君がやっていたように魔術と武術を私が知る中で一番強い二人に教わります。

 いずれシゼル君を助けるために。

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