第十三話 戦いの始まり
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
忙しすぎて二日も空きましたがこれからも投稿していきますのでよろしくお願いします。
「それではこれよりAクラスとEクラスによる合同実践授業を開始する。」
アンジェリカ先生が授業の開始を宣言すると修練場にいた生徒たちはいっせいに静かになり生徒たちの話声が消える。
「これより実戦形式での授業を始めるがその前に注意事項の確認だ。魔術は初級魔術までで、中級以上を出している所を見かけたら即座に授業を中止し、使った者を規則違反とみなし処罰する。そして、魔力切れになった者には攻撃してはいけない。これは、学園内で死人を出さないための絶対厳守事項だからな。破った奴は有無を言わさず退学とする。たとえ貴族でもな。」
アンジェリカ先生が言った言葉に修練場にいる全員が息をのむ。
学園の修練場にはたとえ傷ついても体に傷はつかず、傷を負った者の魔力が消費される結界が張っているために本人にダメージはない。ただし、修練場の外にいる者及び魔力がない者は傷を負うために、たとえ修練場内でも魔術の使用が制限されてしまう。
過去の授業中に貴族が魔力のなくなったものに中級魔術を当てて殺してしまうという事件が発生してからはより一層の警戒が敷かれ、教師が二名以上いる時でないと授業が受けられなくなり、合同授業の形になったのだ。
「今言ったことを守り、授業をすること。それではチームを組み実戦形式の試合を始める。」
アンジェリカ先生の言葉と同時に修練所内の生徒は数名単位のチームを組み始めて試合を始める。
「それじゃあ、こっちも手筈通り行くぞ。作戦を忘れるなよブライア。」
「なんで俺だけなんだよ!」
「あんたが一番作戦通りに動きそうにないからでしょ?」
そんな中でシゼル、ブライア、ライラの三人は共に行動しヘイル・イグニスを探していた。
今回の実戦形式の中でヘイルだけが何らかの方法で自分たちに仕掛けてくると分かっており、それをされる前に叩くという作戦を立てているために時間との勝負なのだ。
突如として修練場内が霧に包まれてしまうまでは、
「おい、どうなってんだよ!?何も見えねえぞ!」
「うるさいわねぇ、そんなこと見ればわかるわよ。」
「どうやら敵の方が早かったようだな。二人共、固まるんだ。」
突如として修練場内が霧に包まれたことにより生徒たちが一斉に慌てだす。しかし、そんな中でもシゼルたちは慌てずに三人で固まる。
(これは、水の初級魔術【アクアミスト】だな。貴族たちまで慌てているという事は十中八九ヘイルの仕業だな。)
こんな事態になってもシゼルは冷静に事態を分析し対処する。
「これは確実に殺しに来てるな。」
「まじかよ、あいつやり過ぎだろ。普通此処までするか?」
「そんなこと言っても仕方ないの分かってるでしょ?だったら腹くくりなさい。ここまではシゼルの予想通りなんだから。」
「分かってるよ。」
ライラの言う通りシゼルはこんな事態も想定して作戦を決めており、それを踏まえたうえでの作戦を立てていた。
「風よ、迫りくるものを、払いたまえ【ウインド】」
シゼルがすかさずに霧を払うために風の基礎魔術を使う。
しかし、霧は結界があるために修練場にとどまり最低限の視野が確保された程度にしか霧ははれなかったがシゼルたちの視野にこの霧の発生源が見えた。
「まさか、こうもあっさりと対処するとわ。」
そこにいたのはヘイルとAクラスの生徒四人の姿があった。
「まあな、お前のようなやつが仕掛けることは自分の事のように知っているから対処がしやすかったよ。」
「それは、同じことをやってきたという事か?」
「逆だよ、同じような目に合ってるって意味だよ。つまり、読みやすいってことだよお前たちは。」
シゼルは前世で同じようないじめを嫌というほど受けていたのでこの手の対処はすでに熟知していると言っていいほどにまで知っている。
「それならお前のようなクズがどんな行動に出ればいいのか分かっているよな?」
「それなら決まっているさ。」
「それなら話は早い、さっさと地面にひ・・・」
「お前らを完膚なきまでに叩き潰してやるよ、腐ったゴミクズ野郎!」
「!」
ヘイルがシゼルたちに命乞いを所望しようとしたところでシゼルから人間が出すことができないほどの殺気が自分たちを襲い、それをまじかで受けたヘイルはただ怯えることしかできなかった。
それはヘイルについて来ていた四人にも襲いかかり、ヘイルと同じようにシゼルにシゼルを恐れることしかできなくなっていた。
(なんなのだこの殺気は!?こんな奴だとは知らないぞ!?)
ヘイルはシゼルたちが命乞いをしてもこの人数で一方的に痛めつけるつもりであり、自分に恥をかかせたシゼルに至っては殺すことまで考えており最初から勝てるつもりでいた。
しかし今の殺気をまじかで感じてしまい、ただ怯えることしかできなかった自分が勝てるのか疑問に思えてきたが、
(大丈夫だ。私にはあの方から頂いた物がある。それを使えばたとえあんな奴でも敵わないさ。)
ヘイルはそう思いながら自分の服に隠したものを握り締め攻撃をしようとするも、
「まあ、今戦うのは僕ではないがな。」
そう言ってシゼルは後ろに下がり代わりに
「俺たちが相手だぜ、貴族様。」
「そうね、ここで一発ぶちかましとかなきゃ気も晴れないし。」
ブライアとライラがシゼルと入れ替わるようにして前にでてヘイルに立ち塞がり、
「もちろん私も貴族として、そして彼らの一人の友としても、あなたを許せません。」
ヘイルの後ろからイリスが現れて後ろから魔術で狙う姿勢を示している。
「やはり来たか、貴族のくせに平民とじゃれ合っている愚か者が。」
「平民も貴族も関係ありません。私は自分で決めて彼らとともにいるだけです。平民か貴族かという事でしか人を見れないあなたのほうがよっぽど愚かです。」
ヘイルの言葉にイリスは真っ向からぶつかる。それだけイリスからしてみればヘイルの暴挙は目に余るという事だ。
「所詮平民は弱者なのだから貴族にひざまずいていればいいんだよ。」
「そ、そうよ、所詮どんなに頑張ったところで平民が貴族に勝てるわけないんだから!」
ヘイルがイリスと会話している間にようやく意識を回復した仲間の一人が会話に入り、ヘイルの意見を増長させる。
「たとえあなたたちがどれだけヘイルにたてつこうが、全員私たちに叩き潰されるのよ!土よ、岩となるように固まり、敵を撃て!【ロックブラスト】!」
ヘイルの仲間の一人がブライアに向けて土の中級魔術を放つも、
「だから言ってるだろ、お前らが叩き潰すんじゃなくて、こっちがお前らを完膚なきまでに叩き潰すって。」
シゼルかいとも簡単に【ロックブラスト】を粉々に粉砕する。
それを見た者は誰も言葉を発することができなかった。中級魔術を何の魔術を使わずに粉砕したことがあり得ないからだ。
「やっぱ、それはいつみても驚かされるぜ、シゼル。普通、中級魔術を素手で粉々にするか?」
「こんなことでいちいち魔術を使うのも面倒だし、魔力も無駄だろ。」
「やっぱりお前に追いつける気がしないぜ。」
一度中級魔術を素手で破るところを見ているブライアでさえシゼルのやったこと見驚いている始末である。
それを見たことがないイリスは驚き、ヘイルの仲間に至っては先程の勢いがすでに失われ、またもシゼルにおびえることしかできなくなってしまった。
「嘘・・・、私の魔術が素手で・・・ありえない!」
「シゼル君が強いのは分かってましたが、まさか中級魔術を素手で破ってしまうとは、いったいどれほどの修業をしたらそこまで強くなれるんですか?」
ヘイルの仲間はようやく言葉を話すことができるようになるも、怯えきってしまっているために覇気が全く感じられず、イリスはシゼルの強さに呆れると同時にそこまでの強さを得るのにどれだけ厳しかったのかを想像していた。
シゼルが自分よりも強いことは分かってはいたが、中級魔術を素手で破ってしまうほどの強さになっているとは思っていなかったからだ。
しかし今は、そんなことを考えている暇ではないことをイリスは気づく。
「どうして授業中止の合図が出ないのですか?」
「最初に使われた霧のせいでこっちがどんな様子になっているのか見えないからだよ。」
中級魔術を使ったはずなのに修行中止の合図が出ないことに疑問に思うイリスだが、シゼルがその疑問に答える。
シゼルが言った通り今の修練場は霧で包まれており周りが見えずらくなっているために先生たちも今の状況では生徒一人一人の使っている魔術を区別するのが難しくなっている状況にある。
「その通りさ!先生たちから見えなければなにをしようが規則違反にはならないのさ!」
「さすが腐った貴族だな。やることが姑息だな。」
「平民の模範となるべき貴族が何という事を・・・。絶対に許せません!」
ヘイルのしたことに呆れれることしかしないシゼルと、同じ六大貴族としてヘイルのやったことに感情を爆発させるイリス。同じ六大貴族としてヘイルのやっていることが許せないために怒り、今にも襲い掛かりそうな腱膜で睨むも、
「イリスがどれだけ怒っても意味ない。だからいきなり跳びかかるなよ。」
シゼルの言葉を聞き、自分たちの目的が何なのか思い出したイリスはなんとか堪える。
「さて、イリスも切れそうだし、そろそろ始めるか。」
そう言った瞬間にシゼルの姿が消え、ヘイルの仲間四人の所に突如として現れ、
「土よ、鎖となりて、わが敵を束縛せよ【サンドチェーン】」
土の初級魔術で四人を拘束して動きを封じる、
いきなり姿が消えたと思ったら自分たちの前に一瞬で移動し、魔術で拘束されたために何もできずにいる四人に
「この四人は僕が相手をしておくから心置きなくやれよ。」
【サンドチェーン】の鎖を持ったまま飛び上がりどこかに場所を移したシゼル。
【サンドチェーン】の鎖に拘束されている四人も無理やりにして連れていかれたために一人になるヘイル。
しかし、シゼルがいなくなったことで余裕を醸し出すヘイル。
「あのゴミがいなくなって良かったのか?お前らごとき俺の相手が務まると本気で思ってないだろうな?」
「これでいいんだよ。全部シゼルの作戦通りなんだからよ。」
ブライアが言ったようにヘイルの相手をシゼル以外がしている間にシゼルがヘイルが連れて来るであろうと予測していた数人を相手をするのがシゼルが立てた作戦だった。
「あんなゴミに舐められるとは、所詮は闇の魔力を持っている化け物だというのにな。」
「・・・それをどこで知ったんですか?」
ヘイルが言った言葉にイリスが先程の怒りとは違った雰囲気でヘイルを睨んでいる。
イリスはシゼルが闇の魔力を持っていることを隠しているのを知っているために自分からは誰にも教えていないからヘイルがそれを知っていることがあり得ないからだ。
この学園に来てからシゼルが闇の魔術を一度も使っていないためにどうしてそれをヘイルが知っているのか疑問に思うもそれを冷静に聞ける雰囲気ではないことをイリスは自覚していても聞かずにはいられなかった。
「聞きたければ教えてやろうではないか。俺にこの事を教えたのはフィーゼル・シャインゼルだよ。」
その名前を聞いた瞬間にイリスの中で何かが切れる音がしかけたが、
「てめぇ!シゼルを化け物扱いすんじゃねえよ!!」
「そうよ!シゼルはれっきとした人間よ!勝手に私たちの友達を化け物扱いしないでもらえる!!」
ブライアとライラがヘイルの言葉に切れて襲い掛かっていき、二対一の戦いが始まる。
そん様子をイリスは驚きつつも眺めていたが、
「有難う御座います。ブライア君、ライラさん。」
ブライアとライラがシゼルのために怒ってくれたことに感謝しながらイリスも二人の戦いに入っていく。
「私も忘れないでください。シゼル君が化け物扱いを受けることを私も許せませんから。」
こうして一対四とサン対一の戦いが同時に始まったのだ。
最初の戦闘は三対一の方からやっていきますのでお楽しみください。