姉妹と和解
猫耳。
ネコ耳。
NEKOMIMI!
それだけで最高に可愛い猫の可愛い成分を集約していると言っても過言ではない最高の萌え。
神の造形。
世界の奇跡!
猫耳こそ至高!!!
視線を感じているのか猫耳が可愛く動く。
その姿を見ているだけでも、叩かれた痛みなど消えてしまう気がしてくる。
二人でお見合いを続けていると部屋の外から、ドタドタと走ってくる足音が聞こえてきた。
「姉様!
何かあったの!!?」
部屋の入り口から少女が飛び出してきた。
青い髪をツインテールに結っている。
髪の色とお揃いの青色のワンピースを着ている。
手にはフライパンを持っていた。
姉様ということは、彼女の妹であろうか?
黒い瞳は心配そうに姉を見ている。
もちろん、彼女も猫耳である。
「クラリス、大丈夫よ。
耳を触られて驚いてしまっただけなのだから」
妹の名前はクラリスというのか。
そういえば俺は彼女の名前を知らないことを思い出した。
クラリスは驚いた顔をして、俺の前まで無言でやってきた。
そして、手に持ったフライパンを振りかぶると、
「女の子の耳に触るなんて、最低よ!」
と、俺を殴ったのであった。
ガツンといういい音がして、続いて激痛が走る。
そして、再度意識を手放すのだった。
時間にして数分ということだろう。
意識が回復すると、心配そうな彼女と目があった。
ずっと心配そうに見ていてくれたのだろうか?
周りを見てみると、俺を殴った少女クラリスが、床に正座をして頭を下げ床につけていた。
言うなればそれは正に土下座である。
「妹が大変なことをしていまいました。
お怪我はございませんか?」
叩かれた場所は多少の痛みがあるが特には傷などはないみたいだ。
触ってみても、特には問題がない。
「あそこでずっと反省させていますが、許していただけませんでしょうか?
妹も反省していますし....」
「傷もないし、もう痛くないから大丈夫だから。
妹さんも顔を上げてくれ」
その言葉を聞くと、彼女は安心したように息を吐いた。
クラリスは顔を上げると、
「姉様、わたし納得できないわ!」
と、姉に向かって言ったのであった。
「せっかくお許しがでたのに何を言うのクラリス!?」
「だって、姉様耳を触られたのよね?
結婚相手だって、夜の時しか触らせない大切な耳を!」
「だとしてもよ!
それに神様になら別にいいわ、さっきも突然でつい驚いてしまっただけだから!」
俺を置いて姉妹喧嘩を始める二人。
その中で、聞き捨てならない言葉を聞いてしまった。
耳を触るのは彼女たちの常識ではありえないことで、俺の世界では初対面の異性の性器にいたずらするレベルのことであったということだ。
そりゃ、ビンタどころじゃなく、フライパンでフルスイング食らうだろうさ。
盗賊の件もそうだが、知らなかったでは済まされないことが世の中にはあるのだから。
「二人ともちょっと待ってくれ!」
二人を止めるため、俺は叫ぶ。
「どうしました?」
「なによ!!!?」
姉妹は揃ってこっちを見た。
姉は心配を、妹は不信感をそれぞれ表情に出していた。
そして、俺はおもむろに正座をすると、それはそれは漢らしく土下座をしたのであった。
思いっきり床に頭を叩きつける。
「ごめん!
知らなかったとはいえ許されないことをしたのは俺だ。
殴られても文句は言えない!
煮るなり焼くなり好きにしてくれ!!」
シーンと静まり返る室内。
俺は全力で土下座中なので辺りの様子はわからない。
「神様!!!
おやめください!
神様は悪くないです!」
「知らなかったって??
どういうことなのよ?」
顔を上げると、困惑した二人の顔があった。
「実は俺、どうしてここにいるかもここがどこなのかもわからないんだ。
わかるのは自分の名前と年齢だけなんだ。
それに、俺は神様じゃないし、ただの人間なんだ。
俺の世界では君たちのように猫耳がある人はいなかったし、この世界の常識だって全然わからないんだ。
君の耳を触ったのだって、猫が好きで触って確かめたかっただけなんだ。
本当にごめん!」
再度頭をさげる。
さすがに土下座はしていないが、誠意が伝わるように心を込めて。
「わかったわよ!
胡散臭いけど、信用してあげる
色々姉様に聞くといいわ、物知りだからね」
意外だったがクラリスが返答してきた。
完全ではないが不信感が取れている気がする。
くるりと背を向けると、出口へ向かう
「あたしは行くけど、姉様に変なことをしたら次こそは許さないんだからね!」
クラリスは部屋を出て行く前に、こちらを向くとクギを刺すような視線を俺に向けて言ったのだった。
二人っきりになる俺と彼女。
「教えてくれないか? 色々」
やっと色々始まっていくそんな予感がしていた。
「はい、喜んで。
なんでもお聞きください」
俺はもっとも聞きたかったことを聞いた。
「君の名前はなんだい?」
彼女は驚くとクスリと笑って、
「わたしの名前はソフィ。
あなたのソフィです」
彼女、ソフィの最高の笑顔をみた俺は彼女に惹かれていくのを感じていたのだった。
暮らしている人間の常識って全然違う的なあれです